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ベネチアの運河に刻まれた時間
My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第二十四話
一人でベネチアの運河沿いを歩き、夕方には駅前で船の往来を眺めながら黄昏れていた。ゴンドラ、ボート、そしてヴァポレット――さまざまな船が行き交い、運河の水面に描く軌跡が印象的だった。その景色を眺めながら、ふと思った。この運河の風景は、一体いつからここにあるのだろうか。遥か昔から続く時間の流れが今に繋がり、そして未来へと受け継がれていく。時を超えたかけがえのない瞬間を、私はそこに感じていた。
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ベネチアの街並みは、世界でも類を見ない独特の美しさを持っている。湿地帯を干拓し、建物を築き、運河を整備する――そうした営みによってこの街は形作られた。海に寄り添う歴史的建造物の数々。そして、観光客と地元の人々が交錯する日常の風景。私が訪れた3月、気温は上昇し始め、春の訪れを感じる穏やかな空気が街を包んでいた。運河沿いを吹き抜ける心地よい風に、ベネチアの悠久の歴史を想った。
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運河を跨ぐ橋もまた、歴史の象徴だった。すべてが石造りで、日本の木造建築とは対照的だ。石の街並みには重厚感と時を超えた安心感があり、それがこの都市全体に普遍的な美しさを与えている。橋の上から運河を見下ろしながら、日本の木の文化とはまた異なる魅力に触れた気がした。水没の危機に晒されながらも、この街はきっとこれからも変わらず人々を迎え続けるのではないか。そんな確信すら湧いてくる。
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その日、私は歩ける限り歩き続け、ベネチアの突端まで辿り着いた。目の前には広大な海が広がり、その向こうには島影が浮かぶ。いつか渡ってみたい――そう思いながらも、今回はここまでと決めた。未来の旅の楽しみとして、その願いを心に残しつつ、海風を浴びながら静かに街を後にした。またこの場所に戻ってこられる日が来ることを、心のどこかで確信しながら。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.
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