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旅の始まり、好きになる瞬間
My Film Journey -あの旅を綴る- 1st roll. 第二話
初めての海外、そして初めての一人旅。
私の中での一人旅といえば、仙台からJR仙石線に乗り、祖父母のいる石巻への約1時間の電車旅だった。中学生以降になると仙台から東京の従兄弟に会いに行ったり、大学受験のために受験地に向かったりした程度だろうか。いや、小学校5年生の夏休みに、長野に転校した親友を1人で訪ねたこともあった。どの旅にも目的地には誰かが迎えてくれる安心感があり、私は幼い頃から「人に会いに行く旅」が好きだったように思う。しかし、今回は違う。最初から最後まで、一人きりの旅だ。
ホテルに無事到着し、ようやく安堵感に包まれたあと、いよいよフランクフルトの街へ繰り出すことにした。夕日が差し込む窓から見える異国の風景に胸が高鳴る一方、不安が胸の片隅にじんわりと広がる。初めて目にする街並みは想像以上に美しく、どの建物も歴史の重みを感じさせた。手にはコンパクトフィルムカメラと少しのお金だけを握りしめ、夕飯をどうしようか考えながら、特に目的もなく歩き始める。
3月のドイツはまだ冷たい空気が残り、指先がかじかむ中でシャッターを切る。有限なフィルムの枚数を意識しながら、無駄な写真は避け、ここぞという瞬間だけを撮影していたようだ。そんな慎重な姿勢が、今手元に残る写真の構成にも表れている。
レーマー広場にたどり着くと、中世の面影を色濃く残す建物群に圧倒された。
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その壮観さに息を飲む一方、人通りの少ない広場には静寂が漂い、少しの寂しさも感じた。写真の中には、たまに誰かに撮ってもらったらしい自分の姿も混じっている。その顔には、不安げな表情と頼りなさがにじみ出ていて、今見ると少し微笑ましい。
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言葉の通じない異国の地での経験は、緊張と挑戦の連続だった。大学の授業で覚えたカタコトのドイツ語を試したり、身振り手振りでなんとか意思疎通を図ったり。それでも、まだ未熟で頼りない自分を思い知らされる瞬間が多かった。しかし、優しいドイツ人たちは、そんな私に笑顔で応じてくれた。そのおかげで、ドイツへの第一印象は素晴らしく、日に日にこの国が好きになっていった。
もちろん、今でもドイツは大好きだ。振り返ると、この旅の始まりこそが、私が「旅」や「世界」を嫌いにならなかったどころか、むしろ好きになる原点だったのだと思う。そして、一人旅の醍醐味の一つ、現地の人々との交流の楽しさを少しだけ理解できた気がした。日本ではあまりしたことのなかったことだが、知らない人に挨拶をしてみたり、現地の言葉で話しかけてみたり。そんな些細な試みが、自分の中に旅の高揚感を生み出し、まだ見ぬ世界への期待感を膨らませてくれたのだ。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.
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