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多様性と共存の光景:ベルギーとカメラの世界

My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第七話

ベルギーには、北部のフラマン語圏と南部のフランス語圏の間に長年の対立があると聞いている。 過去にはテロの問題が報じられることもあったが、実際に訪れたブリュッセルでは、そうした危険や治安の悪さを感じることはほとんどなかった。むしろ、異なる文化や言語が交錯し混ざり合う多様性に心を動かされたのを覚えている。それぞれの文化を尊重し、共存することで、相乗効果が発揮される――その可能性を感じさせる街だった。

この「対立と共存」の構図を考えていると、自然と今夢中になっているフィルムカメラとデジタルカメラの関係性に思いを巡らせていた。デジタルカメラの利便性や高い描写力が称賛される一方で、フィルムカメラを「過去の遺物」と揶揄する声も少なくない。しかし、私はフィルムとデジタルを単なる対立の関係として捉えたことはない。むしろ、それぞれが補完し合う存在であり、お互いの特性が際立つからこそ、写真の世界はより深みを増しているのではないだろうか。

昼の大聖堂

フィルムカメラには、限られた枚数の中で慎重にシャッターを切る「待つ楽しみ」があり、現像を終えるまで仕上がりがわからない「偶然性の魅力」もある。一方、デジタルカメラは即時性や編集の自由度を持ち、何度でも撮り直しが可能だ。それぞれが異なる特性を持ちながら、写真としての価値を共有している。それは優劣をつけるべきものではなく、時代や撮影者の目的に応じて使い分けるべきものなのだと感じる。

芸術的なアーケード

この考え方は、カメラの選択にとどまらない。 どちらか一方を否定するのではなく、互いの価値を認め合い、共存すること。ベルギーの北部と南部が持つ文化的多様性も、フィルムとデジタルの共存とどこか通じる部分がある。それぞれの違いを受け入れ、尊重し合うことで、世界はより広がり、深みを増していくのだ。

阿吽もしくは狛犬的なライオン?

私自身、これからもフィルムとデジタル、それぞれのカメラを使い分けながら、多様な価値観を取り込み、自分の中に「許容の幅」を広げていきたいと思う。表現へのこだわりを持ちながらも、それぞれの影響をしっかり受け止める姿勢を忘れないようにしたい。物事の違いを恐れるのではなく、むしろ楽しむこと――それが新たな発見や成長につながるのだと、私は信じている。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.

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abeken/アベラボ
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