「テクノロジーの社会実装」にピュアに向き合う集団ーーCOOが語るABEJAでの仕事とこれからの会社像
ヤフーやリクルートといった日本を代表するメガベンチャーを経て、2020年9月にABEJAに加わった小間。同年12月からCOOとしてABEJAの事業と組織の成長を牽引してきました。
データ戦略のプロフェッショナルとしてIT業界で腕を磨いてきた小間が、なぜ新たな挑戦の場所としてABEJAを選んだのか。入社から約2年半の間にどのような役割を担い、これからABEJAをどのような会社にしたいと考えているのか。小間の視点からABEJAについて語ってもらいました。
ABEJAを選んだ4つの理由
── 複数のメガベンチャーを経験されてきた小間さんですが、特にヤフーに在籍されていた期間が長いんですね。
エンジニアとして2002年に新卒で入社して、約16年間でたくさんの仕事を経験させていただきました。
入社時のヤフーはまだ300人くらいしかいない時期で、あの頃はまだ「データサイエンティスト」といった職種も浸透していなくて。フルスタックに何でもこなすエンジニアとして、さまざまな業務に携わっていました。
例えば検索エンジンの入力欄に「am」と入力すると、キーワードの候補として「amazon」などの検索ワードがリアルタイムに表示されますよね。あのリアルタイムの入力補助機能をはじめとして、データをもとにしたプロダクトの企画や開発をしていました。
それからプロダクトマネージャーとしてビジネスサイドから検索事業全体を俯瞰する立場になり、ここで事業の企画と戦略の立案・執行を学びました。その後、縁があってヤフーのビッグデータを扱う部門に移り、データ分析やデータの利活用に深く関わるようになっていったんです。
ビッグデータのブームが来て事業が急拡大していたこともあり、最初は60人程度でスタートした部署も、僕が離れる時には400人くらいの規模に拡大していました。
自分の人生を振り返った時に1番インパクトがあったのが「誰と働くか」ということ。現在東京都の副知事を担っている宮坂さん(元ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏)や『イシューからはじめよ』などを書かれた安宅さん(慶應義塾大学教授・Zホールディングス シニアストラテジストの安宅和人氏)は当時の上司でした。彼らの背中を追い、見て学んだことが、今の僕の仕事のスタイルに大きく影響しています。マネジメントの手法や考え方も大きく広がったと思っています。
また僕はヤフーで技術サイドと事業サイド、さらには組織マネジメントなど様々な業務を満遍なく経験させて頂きました。これは僕の実力には関係がなく、たまたま運よく与えられた経験、つまりギフトだと思っているからこそ、「与えられたギフトを返すつもりで国に貢献しないといけない」というモチベーションにもつながっています。
特に近年はIT領域が大きく成長して日本の成長を支えてきたので、テクノロジーを用いて日本の産業を盛り上げていきたいという正義感みたいなものがあって。今はそれが「DX」という単語にもなっていますが、この領域に対する思いは強いです。
── その後もリクルートなどで、データやAIなどの業務に携わって来られました。ABEJAとの出会いは何がきっかけだったのでしょう。
きっかけは人材エージェント経由で、ABEJAの旧取締役陣から僕にコンタクトがあったことです。
当時のABEJAは設立8年目。ディープラーニングを筆頭にAIの業界が急速に発展する中で、それらの技術を用いて企業の課題を解決していこうと事業に取り組んでいた。岡田さん(代表取締役CEO)や外木さん(現 執行役員CEO室長)からそのような話を聞いて、「戦っている領域とやっていることは正しい」と感じました。
なぜ僕が今ABEJAにいるのかというと、一言で言えば、「ひたすら熱心に求められた」からです。「今すぐ来てください!手伝ってください!一緒に働きたいんです!」と何度も何度も熱声をかけてくれたことをよく覚えています。彼らからは大きなパッションと真摯さを感じました。
── 小間さんの中で、何がABEJA入社の決め手になったのでしょうか。
大きく4つありました。1つ目は技術人材として「データやAIを始めとしたテクノロジーの活用」に長年携わってきたため、そのような環境に身を置きたいという気持ちが強かったこと。
2つ目はトップである岡田さんの自己開示っぷりです。彼は自分の生い立ちや悩み、ABEJAでの失敗などを開示した上で、自分ができていないことを正直に打ち明けてくれました。話をする中で、彼に対する信頼感が醸成された部分も大きかったです。
3つ目は「自分を求めてくれる環境で働きたい」と思ったこと。せっかく新しい挑戦をするのであれば、自分のことを必要としてくれる場所で仕事をしたいと考えていました。
そして最後はヤフー時代に宮坂さんから教えていただいたことで、今の僕のモットーでもあるのですが、「迷ったらワイルドな方を選ぶ」と決めていたこと。実はABEJAへの入社を決めるにあたって、全く迷いがなかったわけではありませんでした。
それでも岡田さんや外木さんを中心にABEJAの経営陣と話をしていく中で、最終的にはこの会社で挑戦をしてみたいと考えるようになったんです。色々と課題や悩みがあるなら、自分も一緒に腕まくりをしていっちょ頑張ってみるか、と。
入社して感じた「内向き会話率」の少なさ
── 実際に入社してみてのABEJAの印象はどうでしたか。
入社前から感じていた通り、戦っている場所(事業領域)や戦略は正しいと思いました。またメンバーと1on1をしたり、社内の様子を見ていて印象的だったのが、「技術先行型」ではなかったことです。もちろん技術を大切にはするのですが、その先にあるお客様の成功や満足度を大切にする文化がありました。
企業理念にも「実装」という言葉が入っているように、技術のみをひたすら追求するのではなく、「それを活かしてどのような価値を実現できるのか」という考え方が、社内で浸透していました。
ABEJAのメンバーにとってはそれが当たり前のことなので、良い意味で空気のように馴染んでしまっているのですが、実は大切なことだと思うんですよね。
── 確かにABEJAの特徴の1つのように感じます。小間さんは何をきっかけに、そう感じるようになったのでしょうか。
僕はマネジメント業務をするようになってから20年近く経つのですが、自分の中に組織の状態をジャッジするためのバロメーターとして重視しているものがいくつかあるんです。
その1つが「内向き会話率」という考え方。簡単に言えば組織内で交わされている会話の話題が社内を向いているのか、社外を向いているのか。その大まかな割合を指します。
例えばオフィスで働いていると、メンバーのさまざまな会話が聞こえてくる。その際に「隣の部署の連中が無理な注文をしてきた」とか「稟議が遅くてなかなか進まない」といった会話が多い場合は、内向き会話率が高いということになります。
感覚的なものですが、大きな組織では内向き会話率が8割を超えるようなケースも珍しくありません。一方で、ABEJAの内向き会話率はゼロに近かった。みんながお客様の話をしていたり、新しいテクノロジーや他社の先進的な取り組みにまつわる議論が活発にされていたり。会話がものすごく外を向いていて、すごく良いなと思ったんです。
ただ内向き会話率がほぼゼロということは、裏を返せば会社としての制度や業務プロセスなどに対する関心度合いが(社外のことに比べると)低く、作り込まれていないという側面もあった。
でもその辺りは僕や英さん(取締役CFO)のように、ある程度大きな組織も経験してきたメンバーの知見を加えることで、適切なバランスを保ちながら成長していければ問題ないと考えていました。
「4つのCXOの仕事」を少しずつ担う
── 入社されてから、現在はCOOを任されています。ABEJAにおける小間さんの業務や役割について教えてください。
自分の中では「4つのCXOをちょっとずつやってきたような印象」を持っているんですね。1つずつ説明していくと、まずはCSOです。
1. CSO(Chief Strategy Officer)
特に重要だと考えているのが、CEOである岡田さんが構想する戦略を具体化していくことです。
例えばお客様のコア領域のDXに取り組んでいるという話や、デジタルプラットフォーム事業においてトランスフォーメーション領域とオペレーション領域を円環させて動かしていく話、この2つの領域をミルフィールのように重層的に繰り返していく構想などは、もともとホワイトボードレベルで岡田さんが示していたものです。
これらのトピックをお客様に説明したり社内に浸透させるためには、翻訳してスライドや絵に落とし込んでいくことが必要だと考えています。
そもそも岡田さんは学生時代からコンピュータのバックグラウンドがあって技術への理解が深い上に、ABEJAでの創業期からの経験を通じた事業知見も豊富です。この両方に精通していないと、彼の話を解像度高く理解することが難しい場面がある。また常に未来に意識をおいているので、しっかりと業界動向や先端テクノロジーの動向をキャッチアップしておかないと、やはり話についていけないんですよ。
幸いなことに、僕自身はこれまでのキャリアの中で技術サイドとビジネスサイドをどちらも経験してきています。岡田さんの構想を翻訳して社内外に伝えていくという仕事、具体の計画に落とし込んでいく仕事は自分の責務の1つであると考えています。
2. CTO(Chief Technical Officer)
2つ目が「CTO」のサポートのような仕事です。一例を挙げると、COOに就任した当時、ABEJA PlatformというのはMLOps中心の実装が行われていました。これを岡田さんが示す戦略に合わせて、より広範囲な統合プラットフォームに進化させるロードマップを描いていきました。
当時はABEJAの創業から9年ほど経っていたので、すでに社内に「宝物のような資産」がいっぱい転がっていたんです。ただ、その価値が社内ではあまり認識されていなかった。僕からすると「これを整理整頓すると他社に対する圧倒的なアドバンテージになる」という感覚があったんです。
さらにこれを重層的なレイヤー構造にすることで、データの利活用やAIの利活用に関わるプロジェクトであれば、幅広く価値をお届けできるプラットフォームの構図を具体化した。これをやった結果として、現在ABEJAが掲げている「AIシステム工場」を実装できたと思っています。
SaaSのように特定のニーズを満たすアプローチだと、そのニーズを外すと全く対応できなかったり、カスタマイズ性が欠けてしまう。一方で完全に毎回フルスクラッチでつくるとなると、コスト面の負担が大きく時間も掛かるというデメリットがあります。
でも、ある程度できあがったパーツを取り揃えておいて、その都度工場のようにカスタマイズをして提供するかたちであれば、スピードや価格の面でも競争優位性の高いものを作ることができる。これをなぜ実現できるかというと、やっぱり10年以上にわたる成功と失敗の蓄積が効いていると思うんです。
こういった一連の技術的構想を仕立てていくのはCTOの仕事ですが、その入り口の部分を担っているようなイメージです。
3. CHRO(Chief Human Resource Officer)
三つ目はCHROです。前提として初期のスタートアップにおいては、細かい人事制度などが作られていないケースも多いと思います。ただ、僕はABEJAを小さく終わらせるつもりはなくて、これから300人、1000人、さらにはそれ以上の方に加わっていただいて、もっと大きな貢献ができる組織にしていきたいので、このタイミングで制度を整えておくことが必須だと考えました。
それまでのABEJAは、フラットな組織体制やメンバーの自律性に任せる風土という観点では良い状態が作れていたのですが、改善点もありました。例えば「みんながめちゃくちゃ頑張って仕事をしているものの、少数の人の努力だけが業績に直接貢献していて、残りの人の努力が事業を伸ばすところにつながっていない」「上長に何を期待されているかわからない人がいる」といった状態が一部で発生していたんです。
これを回避するためにも最低限の制度は必要だということで、様々な事例や文献を調べつつ、他社の先輩にもアドバイスを頂きつつ、等級制度や評価制度などの人事制度を社内にインストールしていきました。
もちろん、大企業から来た人間がいきなりガチガチに管理をやり始めたとなると逆効果なので、そこは本当に最低限必要なものだけ。とはいえ、努力をして会社の業績に貢献してくれた人にしっかりと報いることができる仕組みとして、制度を整えていきました。
4. COO(Chief Operating Officer)
最後がCOO的な仕事で、これも事業と組織に関わるものです。例えば「ヨミ表マネジメント」と呼ばれるマネジメント手法も新たに導入した取り組みの1つです。リクルートの営業部門で古くから活用されていたシステムをABEJA流にカスタマイズして組み込みました。
それ以前のABEJAは1ヶ月2ヶ月先の売り上げを見通すことはできたのですが、それ以降の状況が不透明でした。そこにヨミ表マネジメントを取り入れて管理をすることで、現在は「半年先までの売り上げを見通す」ことができています。
他にも、極めて基本的な営みなのですが、執行役員会議やマネージャ会議といった定例会議を設計し、運用し、改善する。必要な組織を組成するといった仕事もCOO的な仕事としてカウントできると思います。
ものすごく特別なことをやっているわけではないのですが、組織を頑強化していく上ではこうした一つひとつの取り組みが重要になってくる。管理手法自体はいろいろなものがあるのですが、ABEJAのフェーズやみんなの仕事のやり方などをよく観察した上でベストなものを選び改善し続けるということも、自分の経験が活かせるところかなと思っています。
チームが機能するために重要な「解像度を高める」仕事
── この2年半については、これらの4つの役割を状況に応じながらこなされてきたわけですね。
そうですね。でも実は1番大切な5つ目の仕事というのがあって。それが「リーダーの仕事」、ふわりとした概念なんですが「チームをチームとして機能させる力」のようなものだと思っています。
入社後に感じたことの話に少し戻るのですが、先ほどもお話ししたように、戦っている領域や会社の戦略はすごく正しいと思いました。ただ、改善の必要性を1つ挙げるとしたら、それは「解像度が低い」ということでした。
事業の解像度や組織の解像度、マネジメントの解像度など「解像度」と言ってもいろいろありますが、当時のABEJAは全体的に粗い部分が多かったように思います。
これもスタートアップあるあるだと思うんですよね。一方で僕は複数のメガベンチャーで、その成長過程や成功と失敗を見てきました。何をすると成功して、何をすると失敗するのか。その裏側でどのように人や感情が動いていくのか。様々な経験をさせてもらった。
そもそも長い期間社会人をしていることもあって、解像度の高さという観点では自分が力を発揮できる領域だと思ったんです。
やっていること自体はもう本当に小さいことなんですよ。例えばIT業界にいると「ユーザーファースト」という言葉をよく聞きませんか。
── 確かにいろいろな企業が「ユーザーファースト」や「●●ファースト」という表現を使われている印象があります。
では具体的に何をすればユーザーファーストだと言えるのか。いきなりそう聞かれると、答えに迷いませんか? おそらく人によっても考えが異なるのではないでしょうか。
僕だったら、ユーザーファーストという単語に赤線を引いて、一旦これを忘れようと伝えます。その代わりに、たとえば会社帰りに電車を待つ駅のホームで、5分間だけでも良いから集中して自分たちのサービスを使ってみようと。
それだったら今日からでも実行できる気がしませんか。新卒や入社したばかりのメンバーでもできそうですよね。
「チームメンバーとの関係構築」みたいなことでも同じです。チームメンバーとより良く協働するために良い関係性を築こう!と言われても、具体的に何をすれば良いのかがわからない。それよりは、週に1回チームで食事を一緒にとろうという方が明確に伝わります。
要は「誰もが行動可能なところまで落とし込む」ことが大切で、これが僕の言うところの解像度の話なんです。
ABEJAのCOOに選任いただいた時にまずやったのが、経営メンバーがお互いに背中を預けられるような関係性を作ること。つまり現在の経営チームの「一枚岩化」でした。
一枚岩化と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、やったことはシンプルです。最初の1週間は渋谷の会議室を借り切って、全員で毎日3時間喧々諤々の議論をしました。あとは毎日の朝会で10分でも良いから顔を見せ合いましょうとか、Slackで誰かが発言したらスタンプで反応をするようにしましょうとか、そういったことの積み重ねです。
「ものすごく小さなことを徹底することによって、みんなで大きな志を遂げていく」ことは、チームとして機能する上でもすごく重要だと思っています。その状態を作るためにも、一つひとつの解像度を高めていくことは不可欠であり、それも自分の役割だと考えています。
ABEJAが取り組むマネジメント層が育つ場づくり
── 先ほど4つのCXO的な仕事をされているというお話がありました。こうした役割については、より得意な人が現れたらその人に任せたいという思いもあったりするのでしょうか。
そうですね。特に4つのCXOの役割でお話ししたことって、いずれも僕以上にできる人が、当然のようにいます。
今のやり方ではいずれ通用しなくなる時が来るとも考えているので、自分よりうまくできる人を育成するか採用するかしてバトンタッチすることも想定しています。リーダーポジションにいるすべての人が意識すべき目標かと思いますが、僕も「自分の存在を消すこと」が究極的な目標なんだろうなと思っています。
だから「次の経営陣をプロデュースする」ということはCOOに就任したDay1から考えていますし、もともとABEJAに入社する以前から「自分が部長になったその日から次の部長候補を探し始める」「常に卒業する日のことを考える」という思想を持っていました。
個々の制度や仕組み自体は地道なことの連続だったりはするのですが「マネジメント層が育つ場づくり」にはABEJAでも力を入れています。これから数百人、数千人の組織にしていこうと思うなら、リーダー層がしっかりと育つ場が必須だと思います。
── 例えばどのような取り組みをされているのでしょうか。
定期的にやっている取り組みの1つとして、マネージャ職以上のメンバーを対象に隔週で3時間ほど「マネジメントワークショップ」を実施しています。現在は20人ほどのメンバーがいるのですが、「ABEJAのマネジメントはこうありたいよね」という基本的なことを伝える、語り合う場です。
面接の過程でどのような部分を重点的にチェックするべきか、チームのメンバーに対してフィードバックをする際にどんなことを注意しながら行うべきか。僕がスライドを用意してプレゼンすることもありますし、実際に相互ワークに取り組むこともあります。
研修ではなく、ワークショップという名称を使っているのは、ロールプレイを繰り返す中で少しずつでも良いのでレベルアップしてもらいたいという思いからです。
自分自身、ヤフーが300人から8000人規模まで成長する過程を経験しましたし、リクルートが数万人のメンバーの力を結集して成功し続ける状態もみてきました。それらを踏まえて「このノウハウは有効活用できる」とか「このやり方はABEJAにはそのままは使えないからカスタマイズしよう」など、取捨選択をしながら良いものを取り入れるようにしています。
ABEJAでの約2年半は「ホワイトキャンバスに絵を書いているようだった」
── 組織や次のマネージャ層のプロデュースの話も出ました。小間さんとしては今後ABEJAをどのような会社にしていきたいと考えていますか。
ものすごく抽象的な表現になってしまいますが、自分自身も含めて「社員みんなのハピネスが最大化される」。そんな会社を作りたいと思っています。
でもこれって、因数分解して構造的に考えてみるとすごく難しい話なんですよ。
仕事において金銭的な報酬を1番重要視しているメンバーがいれば、肩書きを大切にしたいというメンバーもいる。ワークライフバランスが何よりも大事だというメンバーもいるかもしれない。みんなの考えるハピネスはものすごくカラフルで多様性があるからこそ、その多様性を呑み込みながらハピネスを最大化していくことは、ものすごくチャレンジングだと思います。
ただ、会社としてはその多様性に応えられるような度量を持ちたいですよね。
ABEJAでは、メンバーに求める大切な資質として「テクノプレナーシップ」を挙げているのですが、これが会社に興味を持ってくれている方々に誤った伝わり方をしていることがあるんです。
僕たちは決して「すべてのビジネスメンバーにPythonを書いて欲しい」「すべてのビジネスメンバーにSQLを書いて欲しい」と求めているわけではありません。同様に「すべてのデータサイエンティストやエンジニアにお客様との打ち合わせに同席して欲しい」とも求めません。ABEJAには、営業のプロフェッショナルとしてひたすらにお客様に伴走する方がいます。その方に技術知見がなくとも、仲間がサポートします。ひたすら論文を読んでコードを書いている方もいます。それもOKです。お客様への価値提供や貢献に目が向いているのであれば大丈夫。
そういった個性や働き方の多様性を認められる会社でありたい。もちろん、経営効率の面で苦労するシーンもあります。それでもしっかりとバリューが出せるように、一緒に考えましょうと言ってあげられるような度量を持ちたいと思っていますし、みんなが様々な考えを持っているけれど、最終的に会社全体としては利益が出せるように経営レイヤーが工夫をしていく。そんな会社になりたいと思っています。
── 最後に小間さんの視点で「こんな人はABEJAに向いている」「こんな人に仲間になって欲しい」といった人物像があれば教えてください。
個人としては「世の中のいろいろな負を解消したい」「エンパワーメントしたい」という思いを持っていて、テクノロジーを用いることで、それが実現できると考えているんです。これが僕のWillです。
個人と同じように会社にも理念やビジョンがあります。ABEJAとしては「ゆたかな世界を、実装する」という経営理念を掲げていますが、この経営理念が僕個人のWillと一致しているからこそ、僕は「ABEJAにフィットしている」と感じているんです。
もちろんABEJAで働くメンバーそれぞれにWillがあり、人によっては15度くらいズレているかもしれない。でも大きく見てベクトルが揃っていれば、それで良いんじゃないかなと思っています。
だからABEJAに興味を持ってくださった方とのカルチャーフィットを確かめる時には、ABEJAメンバーの一人ひとりの想いやWillをお見せした上で、どんな人と働きたいのか、どういった仕事の仕方を選びたいのかを一緒に考えていただくようにしています。
15度くらいのズレであればお互い問題なかったとしても、120度違っているのであれば別の会社を選んだほうが幸せになれるかもしれない。それを確認していく工程が、カルチャーフィットを確かめる上で重要なのではないかなと思います。
ABEJAメンバーのWillという話に戻すと、やっぱり「テクノロジーを使うことでどんなことができるか」「それを使ってどのように社会を変革していくか」ということに対して、ピュアでひたむきに考えている人が多い。だから「テクノロジーを社会に実装していく」ことに関心がある人にとっては、良い環境だと思っています。
僕はよく、ABEJAに入ってからの約2年半を「ホワイトキャンバスに絵を書いているようだ」と表現するんです。
内向き会話率の話もしましたが、良いものを良いと受け止められるメンバー、アンラーニングができるメンバーがそろっている。後から入ってきた若いメンバーの提案でも、みんなが納得すれば次の日からチーム内で新しいやり方が取り入れられていたりします。
意思のある人であれば、本当にホワイトキャンバスに絵を書いているような感覚で、会社作りに参加している体験を味わっていただけるんじゃないかと思います。