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句集『まつすぐ』感想!

僕は新刊が出たら即買う作家が3人いる。

村上春樹、森見登美彦、伊坂幸太郎。

例え期待を外れる本があろうとも、この人たちの新刊はハードカバーで買っている。それくらい読者として信頼を抱いている。

同じように。

いつき組で「この人が句集を出したら、ノールックで買おう」と思っている方が3人いる。これは、俳壇での活躍ぶりや世間的評価はさて置き、僕がどれだけ句柄に惚れているかどうかの問題である。その3人とは、

山本先生
多喰身・デラックスさん
凪太さん

である。このお三方の句の面白さには、やられっぱなしである。

そしてその中の1人、凪太さんが句集を発行した。

ミニ句集だろうが関係ない。
こりゃあ買うっきゃねえやとポチった。
そうして読んだ句集。2句だけ紹介させて頂きます。


らしさなんていらない蕗はまつすぐだ

なんと冒頭一句目から、句集タイトル「まつすぐ」が出てきた。
どんだけまつすぐなのか。
まつすぐすぎて面白い。

カレーとインド映画を永久機関のように推し続けている凪太さんのキャラクターと相まって、僕の中では『RRR』の主人公ビームが、これを言ってるとしか思えなかった。ビームに蕗を持たせて言わせたい。

以前見たプロ野球のYouTubeで、「ど真ん中に魂こもったストレートを投げ込めるピッチャーが強い」的な話があったが、まさにその趣だ。一句目から差し込んでくる凪太節である。

幸せかと訊かれ春めいたと応う

「幸せか」なんて訊いたことあります?
今度誰かに訊いてみたい渋さである。
そんな演歌調の出だしから一転、肩をすかしたような応え。

これは一般社会からの問いへの、詩人としてのアンサーだと思う。

ある本で、「雪が溶けたら何になりますか? 水ですよね。でも我々は、雪が溶けたら春になると言う。これが詩心です」みたいな言葉があった。

世間一般的には幸せには見えないのかもしれない。でも詩人としては手応えは得てるんだぜ、という気持ちを詠った句として読んだ。

俳人成人としての格好良い一句である。


そんな感じで、あっという間に読めてしまうミニ句集!

上では触れなかったが、カレーを詠んだ句も満載である。これらのカレー句は「カレー」の部分を「あなた」とか「君」とか、自分の大切なものに置き換えて詠んでも味わい深い。

凪太さん、俳人生活20年おめでとうございました!
次の句集も即買います。

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