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クリスマスの夜に #写真から創る

 
 自分がバカだと知った時にはすでに遅かった。

 典型的なギャンブル依存症。借金で借金の返済をしてどんどん借金が膨らみ、とうとう闇金にまで手を出した。最初は借りた金で大当たりしてすぐに返済できた。ちょろいと思った。人生は楽勝すぎる。そう思った三日後には地獄に落ちていた。

 指示されるがままに指示された住所を尋ねて、孫の事を心底心配している高齢者から金を受け取った。そんな事を何十回とやらされたが、借金はほとんど返済出来なかった。嫌になって断ると恫喝された。土下座をさせられて罵倒され、極限まで自尊心を削ぎ落とされた。

 もうダメだと思った。もうどうでもいいと思った。全身から力が抜けて思考も停止していった……。


「お兄ちゃんはやっぱり強いね」

 妹の声がした。

「またお兄ちゃんの勝ちか」

 両親の声がした。

 クリスマスに家族でトランプをした時の記憶だ。炬燵にみかんがあった。みんな笑っていた。オレは牛乳を飲んでいた。みんな笑っていた。オレも笑っていた。

 力が漲ってきた。そしてその後の記憶が消えた。

 目の前には頭から血を流して横たわっている男。さっきまで人間を人間とも思わない様子で大声を出していた男が息をせずに目を見開いて静かに寝ていた。

 男の事務所からすぐに逃げなければ。そう思った矢先、目の端に金庫が見えた。札束も見えた。それを自分の鞄に二十も詰めただろうか…。

 外に出ると雪が降っていた。

 そう言えば、今日はクリスマスじゃないか。

 涙で都会の白が滲んで足がおぼつかない。

 ごめん。ごめんなさい。家族に謝罪しながらザクザクと雪を踏みしめる。

 そうだ。あれをやろう。

 クリスマスの夜、騙されて利用されたベン・アフレックが大逆転をする映画のように、この金を見知らぬ家のポストに配って歩くのだ。




 これはただただしめじさんを楽しませようと思って書いた物語ですが、しめじさん、いかがでしょうか。