【曲からチャレンジ】夢中人
地下鉄なんてどこも一緒だなって旺角駅を出るとそこは憧れの香港だった。
建物も人も密集していて、あまり歩道が舗装されていなくて歩きづらい。
頭上では、まるでバーゲンセールの客のように競り合いながら横に張り出した看板の群れが空を塞いでいる。
肌にべったり張り付く湿気を感じながら裏通りに行けばもわっとした熱気と異臭が立ち込めている。
これだよこれ。この混沌とした雰囲気。香港に来ているという実感。
ボロボロのジーンズにTシャツ。サングラスをかけて、香港の古惑仔を気取って道路の真ん中で両手を広げて天を仰ぐ。
ほら今、どこかでクリストファー・ドイルがキャメラを回している。
日本語はもちろん英語も、下手すると北京語も通じない区域の店で片言以下の広東語で焼きそばを頼んで食べる。
最高だ。
焼きそばを頬張りながらすべてを手に入れた気分になれる。
それが香港だ。
クリストファー・ドイルが引きから寄りでキャメラを回す。
尖沙咀の重慶マンションではすっかりウォン・カーウァイ映画の主人公気分だ。治安が悪いという触れ込み通り、そこにいる人々がみんな胡散臭い。そう見えるだけか。とにかくワクワクする。
ちょっとミーハーにジャッキー・チェンの手形に自分の手を合わせてみたりした後はクールにそれほどキレイでもない海を眺める。向こう側は香港島だ。香港島には用はない。
香港と言えば九龍島だ。
夜になったら廟街夜市を流して歩くぞ。
ん? あの店の店員はフェイ・ウォンに似たキュートな女の子。
あれ? 今すれ違ったのはブリジット・リン似の美女。
今から何かが始まる予感がする。
ここは香港だ。何かが起こるに決まってる。
よし。まずは行動…。
いやいや待て待て。そう焦ってはいけない。
まずはホテルに「地球の歩き方」を置いて出直そう。
なんと言っても香港の旅はまだ始まったばかりなのだから。
あ、クリストファー・ドイルさん、ここは撮らなくていいからキャメラをいったん止めて。
夢中人/フェイ・オン
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今日も遅い時間の投稿になりましたが!
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