化け猫【1分マガジン】

 百年生きた猫は念願叶ってやっと人間に化ける事が出来るようになったので、早速色男に化けて、お目当ての家の一人娘に近づきました。そうなのです、この化け猫の本当の目的は娘ではなく、娘の家に代々伝わる「ある楽器」なのです。

 あの手この手で娘を口説こうとしましたが、全く相手にされませんでした。そのうちにとうとうその娘は他の男と結婚してしまいました。化け猫の計画はおじゃんになりました。

 化け猫は作戦を変更します。手に入れたい楽器の腕前を上げる事にしました。数十年修行してとうとうこの国で一番の楽器奏者となった化け猫は「あなた方の家に代々伝わる三味線を私に演奏させて欲しいのです」と娘夫婦に申し出ました。すると「うちにあっては宝の持ち腐れ、そちらに差し上げましょう」という嬉しい返事。人間に化けた猫は大いに喜び、深く感謝して持ち帰りました。

 昔々、米問屋に多くの鼠が出て困っていた時に易者が「お宅で飼っているつがいの猫の皮で三味線を作りなさい」と占ったとか。

 その三味線は化け猫の両親だったのです。

「やっと家族が揃ったね」

 化け猫は三味線を抱えて涙を流しました。


<おしまい>


※「猫の忠信ただのぶ」(「猫忠ねこただ」)という落語に出てくる化け猫をモチーフに書いてみました。

 一人2記事までOKになったので、ちゃっかりまたまた参加させていただきました!

 小牧さん、ありがとごじゃいます!



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