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空飛ぶストレート【ショートショートnote杯】

案内された席に腰を下ろす。気持ち良い天気だったのでたまにはオープンテラスで珈琲を飲みながら読書を楽しもうと思ったが、5分後にはいつものカウンターの隅にすれば良かったと後悔していた。

隣の席に一人の外国人男性客が座り、カフェの女性店員に向かって片言の日本語で興奮気味に喋ったのだ。

「空飛ぶストレート、最高ムービー! 最高サムライ!」

店員は静かな笑顔を残して仕事に戻った。

彼は映画に疎かったので「空飛ぶストレート」というのは時代映画なのだなと解釈した。

その外国人は明らかに話し相手を求めていた。彼は「ノー、トーク」オーラを出しながら読書に戻った。だが彼のオーラは居酒屋の暖簾みたいに扱われた。

「空飛ぶストレート、ユーウォッチ? 最高ムービー!」

思わず彼も「イッツクール!」と親指を立ててしまった。

そして帰りの電車で映画「修羅と武士と霊道」の中吊り広告を見た彼が「なんだこれか!」と気づく程度には楽しいカフェタイムだった。

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