【曲からチャレンジ】壊れかけのRadio
中学2年の時、塾で見かけるアイツはいつもぶっちょう面で、親に言われて嫌々塾に通っているのが丸わかりだった。遅刻しては怒られ、忘れ物をしては怒られ、宿題もやってこないし字も汚いと先生達に怒られてばかりいる。ある日なんて授業中に寝てたのを見つけた塾長がキレて「今すぐ帰れ!」と怒鳴っていたっけ。
そういう僕もタイプは違うけど、塾にとってのダメな生徒という意味では同じで遅刻、忘れ物は当たり前、宿題もやらなかったし授業なんて受けたくなかった。家でずっとゲームしていたいのに親に無理やり塾に行かされていたんだ。僕の両親は当時あの塾長の何倍も迫力の怖さだったし。
でもアイツはずっと反抗的な態度を貫いて(きっと学校でもそうだったと思う)注意されても全く反省していない様子で生返事を繰り返していた。
見た目も映画で観たリバー・フェニックスみたいでかっこよくて、そんな反抗的な態度が妙に似合っていたっけ。
僕はと言えば見た目も冴えないヲタクキャラ。朝方までゲームばかりしていて学校の授業でも寝て、塾でも寝ていて、禁止されてるスマホを持ちこんでラインをしたりした。先生達にほぼ呆れられていたけど、アイツと違ったのは、注意されると一応反省したふりだけはしていたので、その分対応が柔らかかったのかもしれない。
どっちにしても僕らはほとんどの大人達にとってはやっかいで手に余る、面倒な存在だった。エネルギーと時間を使って真正面から向き合ってくれる大人なんてリアルの世界ではいやしなかった。少なくとも僕の周りにはいなかった。あ、でもあの頃は熱い大人がいてもうっとうしかったかも。
一度だけアイツと話した事がある。
塾が終わって夜食を買うために寄ったコンビニでアイツと会った。「勉強なんてしたって意味がない」と言っていたかと思えば「消防士になりたい」と言ったり、悪い先輩とつるんでいて今度バイクに乗せて貰うんだと自慢したり、塾長の悪口を言って「ぶっとばす」とかなんとか言ったりしていた。
僕も勉強したって意味がないという意見に大賛成で、親がうるさいとか、ゲームが好きで解説をユーチューブで流しているとか、自作のカードを作って売っていることだとか、けっこう自慢で対抗した。
そしてアイツから両親の話を聞いたんだ。
アイツの母親は有名なスポーツ選手で、子供がいる事を公には隠し、同じアスリートの父親と二人でアメリカに住んでるって言っていた。だから今はめちゃくちゃ怖いおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしてるんだって。
それを聞いて僕は少し悲しくなったんだ。今思えば親が子供と離れて暮らす選択をすることに悲しさを覚えたのかもしれないけど、その時はなんとなく悲しくなっただけだった。
塾の先生達に言わせるとアイツはほら吹きらしいから、どこまで本当かわからないけど。
結局、おじいちゃんとおばあちゃんが熟年離婚をしたとかでアイツは卒業を待たずして塾には来なくなったんだ。
僕は相変わらず勉強は苦手だったけど、好きだった先生が急に病気で辞めちゃってから少しだけ真面目になってなんとか高校進学は出来て、今は好きな道を探しているところ。
たまに夜勤バイト上がりに人波と反対に駅に向かう時に、中学生の時に塾で会っただけのアイツの事を考える。
今頃アイツ、どうしているんだろう。
消防士になっただろうか。
しあわせに暮らしているかな。
「RADIO繋がりで壊れかけのRadioはどう?」という
しめじさんの提案に乗っかってみました。
もちろん好きな曲なんです^^
↓今回もピリカさんのこの企画に参加しました♪
読んで頂き、ありがとごじゃいます!