フィンランド学校視察記 2Hyva! オーロラより遭遇できないスクールナースの謎
フィンランドに行った目的の一つに、スクールナースと話すというものがあった。
養護教諭は日本独特の職業であり、海外は非常勤のスクールナースの制度をとっている。
常勤でなくて、体調が悪い子が出たらどうするのか、はたまた心停止など緊急事態が学校で起きたらどうするのか疑問でならなかった。
スクールナースに聞きたいことをまとめていた。
ーが。スクールナースには会えなかった。
養護教諭がいることが当たり前な日本だが、スクールナースがいなくて学校は大丈夫なのか?
そんなスクールナースの謎に迫る。
①オーロラより遭遇率の低いスクールナースの謎
視察する学校は週に2回、スクールナースが勤務していた。
視察の学校に着いて、さっそくスクールナースの部屋に行く。
しかし、いない。
面談か巡視しているのかと思い、1時間後に再び来室するが、まだいない。
タイミングが合わなかったのかと思い、その1時間後に再び来室する。
やはりまだいない。
日をあけて諦めずに来室したが、会うことはできず、スクールナースの部屋は開かずの扉となっていた。
見学校に勤務する日本人教師にスクールナースについて尋ねたところ、こう言った。
「ここに勤めて6か月たつが見たことがない。半年いてオーロラはやっと二日前に見ることができたが、スクールナースは見たことがない。」
オーロラを見ることはなかなか出来ないと有名であるが、スクールナースはそれより遭遇できないのだと驚いた。
そのような形でスクールナースがいる意味はあるのだろうかと疑問が浮かんだ。
スクールナースは何をしているのかさらに活動が謎に深まった。
②体調が悪くなったときどうするの?
次に、その学校に通う高校2年生に話を聞いてみた。
え「スクールナースに会ったことあるの?」
生徒「健康診断のときは会うよ。ほかには関わらないよ。」
え「では、体調悪いときどうするの?」
生徒「スクールナースがいるときはスクールナースに許可をとって帰る。いなかったら病院にいく。」
え「今まで1時間おきにスクールナースの部屋にいっても会えないんだ。もしちょっと頭が痛いなという病院に行くほどじゃないときはどうしているの?」
生徒「ちょっと休んだりするよ。学校を休んでも誰も咎めないし。」
「皆勤賞とかそういう休みにくい環境を学校がつくるのはよくないね。」
フィンランドの子どもはスクールナースがほぼいない状態でも健康管理が育まれていた。
保健室で1時間休んでまた授業に戻るというのは、フィンランドではない。
体調が悪いときは病院に行く。そして休む。
それに限る。そりゃそうだ。
③けがをしたときどうするの?
いやいや、でも子どもは遊んでいればケガがつきものだろう。
工作の授業中にケガをしたとき、どうするのかフィンランドの先生に尋ねてみた。
先生「ケガはあるよ。でも切り傷くらい。けがしたらあれで処置するよ。」
え「骨折したらどうするの?」
先生「指を一本骨折したのは、6年間勤めていて1回くらいだった。」
6年間に1回くらいの骨折の遭遇率は、日本に比べ断然少ない。
「どうしてそんなケガをしないのか」
あほみたいだが、真面目に疑問で聞いた。
先生「作業が始まる前にちゃんとレクチャーしているからね。『ここをこうしたら危ない』と機材の説明もする。」
「日本でも同じことをしているはずなんだが・・・・」
これに関しては疑問が深まってしまった。
推測するに、フィンランドは1クラス20人以下だが、教員が2人おり、子ども対大人の割合が充実していた。
大人の目が行き届いているからか。
そんなこんなで、私がスクールナースに聞きたかった質問はお蔵入りしてしまった。
「感染症の対策はどのように行っているのか」
「急な心停止が起きたときなど緊急時の対応はどうしているのか」
「スクールナースが毎日いるとしたらどのような活動をしたいと思うか」
という質問であった。
振り返ってみればどれも方法しか聞こうと思っていなかった。
私もいかに方法にとらわれて考えているのか気づかされた。
大切なのは子ども達が幸せに生きるという目的である。
フィンランドの子たちはスクールナースがいなくても健康を自分で守り、幸せそうに見えた。
しかし、日本においても海外と同じように養護教諭を週1に出勤にし、出勤しても保健室にいない状態にしたら、学校保健は機能しないだろう。
日本の特徴にあっていないからだ。
我慢して、頑張りすぎてしまう、集団を重視する、十分に保健教育を行えない家庭もある。
そういった日本の特徴から考えれば、養護教諭の存在は必要である。
日本は養護教諭といつでも会えるというのが、海外の学校保健から考える最大の強みである。
保健のこと、医療のことで困ったら養護教諭に聞くことができる。
日本の保健室は開かずの扉ではなく、いつも開いている。
海外のスクールナース制度も素敵だが、日本独自の養護教諭も素敵であった。