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記事一覧
【SS】あの痕が消えるまで(5901文字)
「首、赤いよ」
Nintendo Switchの画面から目を離さずにショータローが言った。
「え、かぶれたのかな。最近おかしいくらいあっちーし、あせもだったりして。やだなー」
あたし、キミコは内心ちょっと焦ってる。後ろめたいことがある人間は口数が多くなるというのは本当みたいだ。あたしとショータローは普段同じ部屋にいても無言でおのおの気ままに過ごしていることが多い。だから今日はあたしの口数の多さ
瀬戸内旅⌇3日目⌇倉敷
やっとこさ
瀬戸内旅、最終日
3月22日 マイバースデーを、しっかり友人にお祝いしてもらいました。
誕生日旅行したいっ という我儘をきいてくれて、どうもありがとう。
プレゼントは期待しまくりでした。なぜなら超絶センスの持ち主なので、彼女の選ぶものならなんでも、さいこうと言いきれる。私のドンピシャ。
感性が割と近くて(と私は思っている)、持ち物、言葉選び、考え方、行動、すべて心地よいです、参考
【SS】鏡の国の亜里沙(840文字)
物心がついたときから、私は鏡の国の住人だった。
私は亜里沙の写し鏡。
現実世界の亜里沙が笑えばそれに合わせて笑い、怒っていれば顔を顰めてみせた。彼女の姿を映すこと。これが私の生まれた意味だ。
幼い時から彼女を見守ってきたからか、私は彼女が愛おしくて仕方がない。笑顔が可愛い亜里沙。彼女が笑えば私も嬉しい。
でも、中学校に入った頃から亜里沙はあまり笑わなくなった。朝学校に行く前に、亜里沙は鏡の
コンプレックスを拗らせた俺は旧友から逃げ出した
俺は恥辱に耐えかねて、友人を無視して逃げ出した。
本稿で述べるのはnoteを始めたきっかけ──“もう一つの自己紹介”とも言えるエピソードだ。投稿を始めて二週間ほど経つので、そろそろ詳述しておきたい。
夜の散歩をすることが習慣化している。春先に経験した失恋から現実逃避するためだ。
五月末のある日、俺は母校の幼稚園の側を歩いていた。何気なくその建物を眺めながら歩いていると、勝手口に鍵をかけ
【SS】明日世界が終わるなら(1494文字)
「明日、巨大隕石が落下し、地球は滅びます」というニュースが流れたとき、英雄は怒りを覚えた。帰宅ラッシュで込み合う車内でスマホに目を落とす人々のどよめきは英雄をさらに苛立たせた。
(馬鹿馬鹿しい。NHKも地に落ちたな。こいつらもこんなフェイクニュースをなんで信じられるんだ? 明日は大事な会議があるし、さっさと帰って寝たいってのに)
英雄が帰宅したとき、明かりが灯っているはずのリビングは真っ暗だっ
ダーティーワーカー胸を張る。
「カネは命より重い」という言葉がある。
この言葉を言い放ったのは”カイジ”の悪役である利根川幸雄だが、カイジを読んだ事が無くてもこの言葉を聞いた事があるという人は多いのではないか。残酷ながらも簡潔に真理を衝いた、漫画史上に残る名台詞だと言っていい。
だがそれはそれとして、俺個人の考えは利根川のそれとは少し違う。
カネと命、どちらが重いという話ではない。カネは命の別名だ。己の命が有形化/化体
【SS】1キロ圏内のあなたへ。(1055文字)
会える子には会える。
会えない子には会えない。
彼女は会えるひとだった。
5秒で右スワイプして10分で約束して15分後に会うことになった。
ひとつ年上の彼女(Aと名のっていた)は顔写真の代わりに、海を見つめて立つ後ろ姿の写真を載せていた。
「姿勢良く立つ姿と文学好きなところに惹かれた」というのは彼女に送った一通目のメッセージの内容だけど、実際はそのスタイルの良さに惹かれただけだ。
(これな
【SS】noteと恋愛(3475文字)
俺は今、20歳にもなって初めて本気の恋をしている。
それも、noteというプラットフォーム上の、顔も分からない女性に対して。
彼女の名前は「空蝉」。
もちろん本名じゃないだろうけど。
プロフィール画像は暗がりで撮られた後ろ姿の写真で、分かるのは髪の長い女性(おそらく)だということだけ。
外見なんてどうでもいいのだ。
プロフィール欄には一言「自分のための物語です。」と書いてある。
性別も、年
イヴに独りで鯛を喰う。
※今回出てくるお店は、以前の記事でも取り上げたお店です。
12月24日、終業後の19時過ぎ。
オフィスを脱け出た俺は電飾の煌めく街を彷徨い歩いていた。
ここ最近、仕事の調子が芳しくない。本来の実力の半分も出し切れていない。窮屈な箱に押し込められ手足を満足に伸ばしきれない、そんな閉塞感にずっと付きまとわれている。
上手くやれているところも多いが、上手くやれないところも多い。上手くやれたと