11章 魔法の中の魔法
弾き間違い
海賊船と鉢合わせしてしまったエリカ達。
甲板の上は、騒然としていた。
船長や航海士達は忙しなく行き交いながら、
武器という武器をかき集め、
海軍は、マリアの指揮の元、銃撃、砲撃をしていた。
そして、エリカは、、、
エリカは、体制を低くし、
必死の形相で弾薬を詰めながら、心の声をもらしていた。
「何で貿易船にこんな立派な砲台なんかあるの、、、」
「同盟から1年近く経っていますので、
公国の債権で皇族為替を買い、それでこの砲台を買いました。」
そう言ったのは、フランチェスカだった。
余裕の笑みを浮かべて、望遠鏡を手に、海賊船を観察している。
「用意周到です。」
エリカは、そう言ったものの、惨状の嘆きが声色に出ていた。
事実、辺りは惨状と化している。
砲台の音と共に船は大きく揺れ、
相手側からの銃弾が船体を傷つけ、
甲板に飛んできた焼夷弾を拾い上げる航海士達は慌てふためいていた。
「本当に、、、海賊に勝てるのでしょうか。」
エリカが不安を吐露する。
その時、金属の打音が、いくつも細かく鳴り響いた。
弾丸が集中的に、エリカとフランチェスカ近辺を打ったのだ。
フランチェスカは、さっと伏せて、エリカと目線を合わせた。
砲台の下に隠れた2人。
「こちらには、プロがいるのですよ。
海軍と、、、それから水使いも。
今の私達を敵にしたら、
海上戦で勝ち目はありません。」
フランチェスカが言った。
「水使い?」
と口にしてみて、エリカは理解した。
レイナのことを言っているのだということに。
フランチェスカは、この戦いに、彼女を利用しようとしているのだ。
そこまで考えて、ふと気づいた。
そう言えば、レイナを見ていない。
辺りを見回す。
すると、1人だけ、何もせずにぼうっと立つ人間が目に入った。
レイナである。
緊張感もなくぽかんとしているその姿は、周囲からかなり浮いていた。
「レイナさん!」
フランチェスカが声をあげて、彼女を呼びつける。
レイナはその声に気づいて、こちらにやって来た。
彼女も、エリカとフランチェスカの目線に合わせて屈む。
フランチェスカは、弾薬をつめる手を休めずに言った。
「海賊との戦いで、
妖精の、、、あなたの力を貸してください。」
「妖精は、人間どうしの争いには介入出来ません。」
レイナが言った。
凛とした声である。
その声色から、芯のある言葉だということが伺える。
「なぜです?
なぜ、妖精は、いつも、そう言うのですか?」
フランチェスカがもどかしげに問うた。
レイナは、砲台を構える2人の背後で、話し始めた。
「妖精は、完全な善の偶像だからです。
つまり、完璧じゃなければならない。
だから、人間どうしの争いには介入しないのです。」
それから、くすりと笑ったレイナ。
彼女は、いつもの楽しげな口調で軽快に言った。
「ですが、私は完璧じゃありません。
だから、魔界から逃げ出したのです。」
レイナは言葉を続けた。
「あの世界は、善悪がきっちりと二分された息苦しい世界なんです。
でも、妖精のままでは、人間界の空気が合わない。
思い出しました。人間との契約を。
やはり、人間は私に、島を守らせる為に、死肉を被らせました。
そして、私も、この死肉に望んで入ったのです。」
フランチェスカは、手を止めてニヤリと笑った。
レイナに背を向けたまま言う。
「では、完璧じゃないあなたは、私達に協力してくれるというのですか?」
返ってきた答えは、、、
「協力しますよ!」
レイナはニコニコとしながら立ち上がった。
弾丸が飛び交う中で、弾は彼女を迂回して消え去っていく。。。
「但し、直接対決したりすることはお断りします。
弾薬をつめる前に、それを私に握らせてください。
魔力を込めます。」
レイナは、堂々とした口振りで言った。
数分後、、、
エリカとフランチェスカは、レイナの言う通りにしていた。
握られた弾薬は、見た目は特に見た目は変わらないが、効果は倍増する。
増大した威力は、海賊船を襲った。
魔力の参戦により、こちら側が優位に立つのには時間がかからなかった。
その圧倒的な魔物の力にエリカは圧倒されながらも、ふとある考えが浮かぶ。
「研究長」と呼びかけ、その考えを口にした。
「魔法遺伝子を組み込んだ、単細胞により魔法を扱うことは出来ないのでしょうか」
フランチェスカはハッとしたように言った。
「、、、
その方法は思い浮かびませんでした。
しかし、如何にして只の単細胞生物に魔法を扱わせるのか、考えねばなりませんね。」
海におちた砲丸は飛沫をあげながら爆発し、穏やかな青い空の下で激しく闘う2機の船は、次第に距離を縮めていた。
海賊船はもちろん、この貿易船も積極的に近づいていたからだ。
不利にたちながらも怯まない海賊達。。。
そして遂に、お互いの顔が見えるほど接近した。
海賊の下品な声や汚ならしい身なりが見えてくると、エリカは、賊の者らしい無慈悲さを感じとり、弾薬をつめる手により力を入れた。
野蛮な男たちは、恐れを知ることなく、貿易船にかける梯子を用意しだした。
しかし突然、賊長が望遠鏡を片手に、命を下した。
「撤退だ!!」
彼の望遠鏡は、レイナが魔術を施す姿をとらえたのだ。
彼女を、帝国の皇族だと勘違いし、
長は取り乱したように言った。
「なぜ、貿易船に皇族がいるんだ!!」
突然、海賊船からの攻撃がやみ、貿易船側は唖然としていた。
海賊船がとまり、ゆっくりと遠ざかっていこうとしていたのだ。
「逃げていきますよ。
野蛮な海賊達が引くを知るだなんて、、、」
エリカが言うと、
フランチェスカが叫んだ。
「白旗をあげて!!!」
海賊船の者達は、その様子を見ていた。
引いていく海賊にわざわざ白旗を掲げるなど、何か魂胆があるに違いない。
そう誰もが思った。
賊長までもが、、、
「行けば確実に捕まり、死刑台送りだ。
しかし、行かねば今、攻撃を受ける」
究極の二択を強いられた賊長は、決意した。
その決断により、
2つの船は再び近づき、そして、梯子がかかる位置まできたとき、停滞した。
フランチェスカが叫んだ。
「わたくしは、フランチェスカ・フランソワー、メイデン側の人間です。」
敢えて、誤解を招くような物言いをするフランチェスカ。
レイナを皇族だと勘違いしていた賊長は、
フランチェスカが長であるような振る舞いをし、戸惑う。
フランチェスカは、言い逃れ出来る保険をかけつつ、脅しを利かせた上で、交渉を切り出した。
「貴方方を、海賊法の基連行し処罰するつもりは毛頭ありません。
要求はただ1つです。
魔界へ同伴すること。」
賊長は思わぬ言葉に驚きを見せ、
険しい顔で言った。
「白旗あげた側が要求だと、、、?
魔界などに行けと?」
「わたくしは、冒険と研究の為ならどのような手段も取ります故。」
フランチェスカが優雅に言ってマリアに合図を送った。
それを受理したマリアが、航海士に命を下すと、梯子が運ばれてきた。
貿易船から海賊船へと梯子がかけられるという、通常とは逆の現象が起こったのだ。
野蛮な男たちでさえ、その不可解な現象には動揺していた。
梯子がかかると、マリアはさっと登り、駆けてていく。
見た目は完全に非力な少女。
油断した賊達は、嘲笑していた。
しかし、彼女は素早い動きで、男たちの剣を交わし、賊長に刃を向けることに成功したのだ。
彼は、マリアの人間業ではない様子に腰を抜かしていた。
その彼女に、ひっそりと銃口を向けた者がいた。
エリカは、その姿を目にしてしまった。
それから、考える間もなく瞬時に釜を投げていた。
素人の発した釜は、運良くなのか、銃を持つ腕に命中し、血渋きをあげた。
ハッと我に帰り、自身の行いに青ざめたが、隣でフランチェスカが言った。
「お見事です。」
「、、、光栄です」
エリカは硬直したまま言った。
なぜかいつも、自分の突発的な動きはマリアの窮地を救う。
フランチェスカに言われた通り、案外、相性が良いのかもしれない、とエリカは思った。
賊長は、魔族に加え、少女までも(エリカも含め?)が、高い戦闘能力を発揮したことを見せつけられ、諦めたように言った。
「、、、、、、降参だ。
同伴しよう」
交渉は成立した。
~~~
海賊船の兵器、凶器のみならず、金品食べ物全て没収し、貿易船に従わせる手筈を整える為、物品の大移動が始まった。
その最中、厳重に施錠された木箱が出てきた。
マリアがそれを没収し、フランチェスカに手渡した。
フランチェスカが、賊長に尋ねる。
「これは、何でしょう?」
「知らん」
不貞腐れた顔で言った賊長に対し、
フランチェスカは顔を輝かせて言った。
「開けてみればいいじゃないですか。」
「こちとら鍵がないから困ってるんだ。」
そう言うと、長は何かを見て表情を固めた。
視線の先には、船長がいた。
「まさか生きていたとはな。」
賊長はそう言うと、
皮肉っぽくつけたした。
「名前はまだ思い出さないのかい。」
「思い出さないね。」
船長は、元主を見て言った。
「海賊だったのですか!?」
そう言ったのは、2人のやりとりをみていたエリカである。
彼女は、目を吊り上げて仁王立ちしている。
それから、つかつかと歩みより、船長を見上げて睨み付けた。
「確かに、只の航海士にしては妙に戦闘慣れしてると思いましたよ!」
「それも忘れたね」
彼はぶっきらぼうに言った。
その時、
フランチェスカの嬉久とした声がした。
「まぁ、一体これは何でしょうか。」
と、目を輝かせている。
彼女は、解錠された木箱から、とある羊皮紙を取り出した。
レイナに、魔法で解錠させてしてしまったのだ。
フランチェスカの声で、エリカと船長、賊長も、彼女の元に行った。
「何だか、意味深な雰囲気を醸し出していますね。」
マリアの隣に立っていたレイナが、興味深そうに言う。
賊長は、解錠された木箱を悲しげに見つめてから、レイナを睨み付け、震える声で言った。
「この、、、魔女!!」
続いて、フランチェスカに視線を移して、付け加えるように言った。
「と、何だか分からない女め!」
レイナは、コロコロと笑ってから言った。
「、、、魔女という言い方をされたのは始めてです」
それは当たり前だ。
彼女は妖精だが、賊長は完全に、思惑通り誤解していた。
フランチェスカは、厳しい顔になって言った。
「私が聞いているのは、この紙は何でしょうかということです。」
エリカ、マリア、船長、
それからレイナも、賊長を見つめ、答えを待った。
賊長は、観念したように言った。
「それは、魔界の地図とやらだ。
あちらの世界に行けば、浮かび上がるというね。
勿論行く気はなかったさ。
しかし、知る人ぞ知る代物なんで、手元に置いておいたんだ。」
フランチェスカが尋ねる。
「どこでこれを?」
賊長は、小さく答えた。
「どこかの島の民家を襲った時に見つけただけだ。」
「あら、もう一枚入っていますねぇ」
そう言ってフランチェスカが取り出したのは、
奇怪な模様が文字のように並ぶ羊皮紙だった。
賊長は言った。
「それは考古学者に海賊行為を働いた時手に入れたものだ。
奴が発掘した遺跡だ。
俺は、そんな文字は聞いたことも見たこともなく解読出来ないがな!」
それから、嘆かわしく言った。
「高値で買い取る人物を見つけるまでは秘めていたというのに、、、
持ってけ泥棒!」
フランチェスカは、その羊皮紙を見て言った。
「これは、皇族に代々伝わる、魔界の文字です。」
密かにエリカは眉を潜めた。
何故、皇族でもない彼女がそのことを知っているのか、甚だ疑問だったのだ。
しかし、ここで聞くわけにはいかない。
上手い具合に、賊長を騙せているのだから。
フランチェスカは朗読を始めた。
「かつて、魔法の蔓延が世を滅ぼしたと言われているが、
直接の原因を作ったのは、黄金のピアノ曲の誤り?」
「黄金のピアノ?」
朗読を遮り、船長が尋ねた。
フランチェスカは神妙な面持ちで言った。
「強力な魔物召還です。
魔族は魔法を行使する度、音楽の感性が薄れていきますが、魔物はもともとそれがありません。
しかし、唯一、人間と同じ感性で、旋律メロディとして認識できる曲があります。
それが、黄金のピアノ曲。
それを金のピアノで奏でると、魔物は音楽という不思議な感性に惹かれて、音源へとやって来るという習性があります。
しかし、一度でも引き間違うか、金のピアノ以外で奏でてしまった場合、
世界中に不協和音が響き渡り、人々の心臓を破裂させます。」
「つまり、誰かが魔物を召還しようとして、誤ったと?」
エリカが尋ねると、
フランチェスカは紙に一通り目を通してから言った。
「いいえ。
その曲を引いたことは事実ですが、故意に誤られました。
目的が魔物召還ではなかったからです。
目的は、、、
粒子爆弾を作ること。
不協和音により、強烈な不快感という精神エネルギーを生み出し、
それが人々の身体を蝕む前に回収・集約し、爆弾を製造したのです。
そしてそれを、遺伝子に組み込みました。」
秘少石の光
「爆弾を遺伝子に組み込む、、、?
売れない小説みたいに、仰々しい設定だな!」
と言う船長の言葉に、
フランチェスカはやんわりと言い返した。
「、、、出来ます。
幻の数を扱った、非常に難解な縮小魔法を用いることによって。」
幻の数、、、
ギャラクシアにいた頃、授業で聞いた単語である。
「何だよ、また大層な単語が出てきたな
金だの幻だの。」
船長がうんざりしたように言った。
「一応、ざっくり説明しておきますと、こういうことです。
とある難解なグラフの中に、数学の概念を打ち砕く数字が隠れています。
それというのは、0以上の足し算なのにも関わらず、その解が0になってしまう値のことです。
現にいくつか見つかっていますが、まだまだ氷山の一角。
それを全て探し出しましょう、という宝さがしみたいな試みがあります。
それに成功することが出来たなら、人間が認識出来ないはずの数字を扱うことが出来るかもしれない。
それが幻の数と言われています。」
「人間が認識出来ない数字、、、?」
そう呟いたのは何と、海賊長だった。
彼は、いつの間やら誰よりも興味をひかれている様子だった。
「数字というのは、宇宙の言語から、小さな小さな人間が認識出来る最小単位の言語。
つまり、数字を取り巻く、もっと高次元の何かがあるということです。
複素数もその1つかもしれませんね。」
「複素数?」
レイナが小首を傾げる。
「人間が、計算が楽になるように作りあげたはずの数です。」
フランチェスカが言った。
「確かにそんな大層な数が扱えたなら、夢みたいなことでも叶ってしまいそうですね。」
エリカが不思議そうに言った。
「はい。
それは、数学の物理的パラドックスを解決するとも言われています。
例えば、物質の縮小。
数字上はいくらでも小さくなれるけれども、実際は原子の大きさが決まっていて小さくなれない。
しかし、現に縮小魔法は存在します。
非常に難解な4次元計算を行えば、出来ないことはないのです。
しかし、その計算の仕組みは一切不明。
幻の数を扱えば、解明されるとも言われています。
縮小に限らず、全ての魔法はまだまだ仕組みが解明されていません。
その最たるものが、縮小魔法なのです。」
「秘少石はまさか、幻の数を扱うブラックボックスなんじゃ、、、」
エリカがハッとして呟いた。
ギャラクシアにいた頃の実験のことを思い出していた。
「、、、よく覚えていましたね、その石の話を、、、
その石は居場所不明ですが、
瞬間移動なのか知りませんが、
魔法を行使する際に、なぜか光だけが出現して、何らかの働きをするのです。
術者の細胞内に出現するので、生体実験でしか分からないことでした。」
「幻の数最強じゃないですか!何でも出来ます!」
レイナが目を輝かせた。
「そうですね。
しかし、私たちはまだ、その数を扱うことが出来ません。
魔法をもってしても、今だかつて出来ないことがあります。
それは、空間と時間の超越です。」
爆弾を秘めた人間
「それで、何で幻の数の話になっていたのでしたっけ?」
フランチェスカが目をしばたかせ、まったりと言った。
「研究長。
今の話は、幻の数を見つけることが出来たなら、縮小魔法の原理が分かるかもしれないという話でした。
そして、その縮小魔法を扱うことにより、粒子爆弾を遺伝子に組み込むという話の途中でした。」
マリアが、事務的な口調で主を補佐した。
「まぁ、そうでしたね。
それで、、、
それにより爆弾を抱えた人間が数多く誕生しました。
彼らは、爆弾のエネルギーを凝縮し、粒子を作り、無から物質を精製する魔法を行使出来るようになりました。」
「無から爆弾を精製するなんて、魔法でも出来ないことですよ!
魔物ならいざ知らず、人間には出来るはずのない魔法だったはず!」
エリカが驚きを隠せない様子で言った。
「出来ます、、、いえ、出来ました。
現存する最難関は縮小魔法ですが、
かつては、その精製魔法が最も難関とされていたのです。」
フランチェスカがそう言うと、
レイナが不思議そうに問うた。
「エネルギーを凝縮すると、なんで、粒子になるんですか?」
フランチェスカは話し始めた。
「粒子は、物質の最小単位だと言いましたよね。
それよりは小さくならない、、、。
粒子を壊して小さくしようとしても、出来ないのです。
もし壊してしまったら、物質ではなくなってしまいます。
物質ではないものであり、物理世界に確実に存在するもの、それはエネルギーです。
粒子を壊してしまったら、エネルギーとなって消えてしまい、何もない、完全な無になってしまうのです。
つまり、その逆を返せば、粒子はエネルギーの凝縮体だと、言えるわけです。」
(※実在する物理のお話しです。)
「物質は、物質じゃないものから出来ていたということですか。」
レイナは、圧倒されたように言った。
「そうです。
更に考えていけば、エネルギーも、何かの凝縮体なのかもしれません。」
フランチェスカがそう言うと、エリカは思わず口にしていた。
「その何かが、、、魔力、、、」
皆の視線がエリカに向く。。。
ハッとさせられたように、フランチェスカは目を見開いていた。
エリカは、自分の言葉が予想外に注目を浴びていることに焦り、
「かもしれませんね。」と付け加えて笑った。
「エネルギーと粒子は、魔法と物理の橋渡しになるということでしょうか。」
レイナがぽつりと呟く。
「そうかもしれません。」とフランチェスカは言って、ぱぁっと顔を輝かせた。
「粒子はエネルギーの凝縮体で、
更にはエネルギーは魔力の凝縮体で、
魔力とは精神力!!
繋がりました!!!
やはり、粒子に意識があると考えた科学者は正しかったのです!!」
話していくうちに熱量をあげていくフランチェスカ。
暫くそのまま、悦に浸る。
皆、彼女を見つめて、黙りこくった。
フランチェスカが、科学者としての好奇心を爆発させる姿は、少し一種独特で、共感しにくい。
1人で自分の世界に入り、陶酔していたが、次第に我を取り戻して言った。
「それで、私はなぜ、粒子の話をしていたのでしょうか。」
「研究長、エネルギーを凝縮して粒子を作り出す魔法についての話の途中でした。」
マリアが補佐する。
「まぁ、そうでしたね。」と、フランスは続きを話した。
「その魔法は、
粒子爆弾を組み込まれた人間にしか出来ない、魔族にさえも出来ない、魔法の中の魔法です。
粒子爆弾の力は、宿主の身体を蝕み、最期には肉体もろとも完全に燃焼しきりました。
それを得てしても余ったエネルギーは、大規模な爆発を起こすが故に、爆弾を秘めた人間達は全員追及され、宇宙空間に投げ出され、ブラックホールに放棄されました。
御愁傷様ですね。」
フランチェスカは言い終えると、
皆の顔を見て首を傾げた。
マリアを除き、その話の恐ろしさに唖然としていたのである。
「か、可哀想すぎです。」
エリカがぽつりと言った。
「それが、悪魔ではなく、科学と契約したが故の代償ですから、仕方ありません。」
フランチェスカはそう言うと、
紙を再び見て顔つきを変えた。
「唯一、、、放棄されなかった人間がいるようです。
その先祖が生きていれば、無事に体を蝕まれずに、血を繋いでいれば、、、。
今も爆弾を秘めた人間がどこかにいるかもしれません。」
「爆弾を秘める、、、」
船長はそう呟き、何かを思い起こすように眉を潜めた。
かつてゴルテスに雇われた航海士である彼は、雇用主の吐いた台詞を思い出したのだ。
「確かゴルテスは、爆弾を抱えた奴を探しだすよう命をくだしていたな。
当時それは、敵を揶揄して言ってると思っていたが、
実際は本当に爆弾を、しかも粒子爆弾とかいうやつを抱えたとんでもないヤローだったのかもしれない。」
フランチェスカは、不適な笑みを浮かべて言った。
「なるほど、、、。
もし、その人間が存在するとしたら、
現存する最難関の魔法は、縮小魔法ではなく、精製魔法だということですか。
わたくしが粒子爆弾を発明するまでもなかったようですね。
実のところこれを作ったのは、粒子爆弾を爆破させた者は、魔界へ誘われると、ギャラクシアの書物で読んだからです。
理由は分かりませんが、、、。
ゴルテスもそのことに気づいたのかもしれませんね。」
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