雲出ずる国への道 その弐
前回【その壱】を書いてから
すでに9か月が過ぎてしまいました。
しかし、皆さんご承知の通り、
それはコロナさんの「前」であり、
今になると何だか懐かしさすら感じる
あれこれを振り返ることにもなりました。
期せずして。怠惰もたまにはいいことあるな。
〜旅行会社にGO。そこにいるのに離れてる〜
さて、我々二人は旅行会社に乗り込むのです。
鼻息も荒く。順番待ちの番号を「ちーーーー」と
自分で発券して深めの黒い革張りのソファに
すっぽりとはまって待ちます。腰が痛い。
制服のお姉さんが芸術的な角度で近くに
しゃがんで話を聞いて下さる。
お願いだから、同じ高さの机と椅子で
向かい合って喋らせてください。
どうかしゃがまないで。
元々、旅行の予約はオンラインですませることが
殆どだったので対面でやり取り、というのが
反対に何だかドキドキするぅ……。
そこで働いている方々と直接やり取りするのと、
オンラインでのやり取りの両方があり、
どちらかを選べという。
「オンラインですと
お待たせせずにご案内できますが」と
囁くように付け足されたので、
元々オンラインで何の問題もないわたくし、
更にはちょっと大人になったから
・人員削減で少ない人数で業務を行っていて
大変なんだろうな
・対面は、かしずかれたい人
(言葉は悪いが割とご高齢の)優先なんだろうな
・オンラインてどうなってるの気になる気になる
(家からできるなら家でやればよかったな)
という気持ちが瞬時に沸き起こり
(3つ目は全然大人らしくない)
なんの異議も唱えずオンラインで
自ら操作するブースについていきました。
パソコン、とも違って何やら小さめの
テレビみたいなモニターがあって
そこを立ち上げると、マイク付きの
ヘッドフォンをつけた男性が映った。おお。
その方は、少ない人員をカバーする目的で、
ご自宅からサポートに入っていらっしゃるの?
育休中とかなのかなぁ?などなど
色々なことが頭の中をよぎったが、
次の一言で我に返った。
「こんにちは、担当の◯◯と申します。
今、お客様がいらっしゃる△△店と
同じエリアにある□□支店にいるのですが
そこからご案内させていただきます」
「え?」
驚いたことに、その方は
普通に出勤しているのだった。
しかも我々がいる場所から
数百メートルくらいしか離れていない支店に。
オンラインて何?
しかし、飛行機も寝台列車も
両方乗りたいんです、という
我々の希望を伝えると
軽妙なお話しぶりと的確なサポートで
どんどん話が進んでいく。
てきぱきしている方、大好き。
もう少し早い時間に現地に着くようにした方が
1日目を存分に楽しめるのでは?
この時間だと、大社などももう閉まって
しまいますよと提案されるも、
「いや、のんびりしに行く旅なので
あんまり早くなくていいんです。
1日目は着いたらホテルの周りを
ぷらぷらするくらいで」と
旅行を楽しみにしてるんだか、
やる気がないんだかわからないと
誤解されそうな返事をする我々。
たったの2泊3日しかないのに。
寝台列車は、希望している2名一緒の客室だと
競争率が高いので、ということで
「取れる確率を上げるために」
1人1室に変えてもらう。
おそらく、帰りが平日なので大丈夫だとは
思うのですが、と。
2人一緒ということよりも、
乗ってみたい欲が優先。
「えー、絶対に一緒じゃないとやだ!」とか
言いだす友でなくて本当によかった。
優先順位を見誤らない友よ素敵だ。
担当の◯◯さんは、
添乗員としても経験豊富な方らしく、
最後にぽそっと付け足した。
「念のためにお伺いしますが、
寝台列車で東京に着く日は、
お仕事ですか?」
そんなことする訳がない。
帰るまでが旅なのだ。
担当さんはしみじみほっとした表情で言った。
「それならよかったです。
私は何度かそうなったことがあるのですが、
・・・ 死にますよ。」
雲出ずる国に行って、
雲の上に召されてはたまらない。
なぞの多い「オンライン」システムだったし、
その担当の方との通話を終えて
事務的な手続きに移った後に
担当してくれた男性に「え?」と
なったこともあったのですが、
まあそれはよい。
なぜなら我々は飛行機と寝台列車どっちにも
乗れることになったのですもの。うふふ。
ということで、次回、
雲出ずる国にいよいよ上陸します。
〜雲出ずる国への道 その参 に続く〜