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Ecology: Dialogue on Circulations Dialogue 1 [La Vita Nuova]崔在銀 展@GINZA MAISON HERMÈS

 11月某日、銀座。

 GINZA MAISON HERMÈSで開催の展覧会へ。

エルメス財団は、アートにおけるエコロジーの実践を問う「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」展を開催します。
地球規模の気候変動への取り組みなど、私たちが直面するエコロジーの喫緊の課題は、生態系、経済、社会、政治などの様々な要求の均衡について問いかけます。現在、あるいは将来、私たちはどのようにアートを通じてこれらの問題を考察してゆくことができるでしょうか。銀座メゾンエルメスフォーラムでは、エコロジーの概念を広義の「循環するエネルギーの有り様」として捉え、地球環境におけるつかの間の漂いである人間の生やモノについて、自然との関わりからアプローチするアーティストたちを、個展とグループ展の2つのダイアローグの形で紹介いたします。

同上

 インスタレーション作品を中心に、紹介していきたい。


ダイアローグ1「新たな生」崔在銀
2023年10月14日(土)~2024年1月28日(日)

「La Vita Nuova(新たな生)」は、環境や自然との対話を継続してきた一人の作家、崔在銀(1953年韓国・ソウル生まれ)の40年に亘る実践を個展形式で振り返るものです。崔は1976年の来日を機に生け花と出会い、草月流三代目家元、勅使河原宏への師事を経た後、1980年以降、アート作品の制作に取り組んでいます。

同上

大地からの返信

 コンセプトありきの作品なので、説明文を先に。

 埋め続けることによって生まれる「対話」。


White Death

 次の展示室に入れば、

 展示室に敷き詰められた、今は生命を失った珊瑚。

 文脈は全く異なるのだけど、この展示は、森美術館で開催中の展覧会にある、帆立貝が一面に敷き詰められた空間を思い起こさせる。(本作品と直接のつながりはないようだが、本展のダイアローグ2は、森美術館と連動して開催される)

 ああ、きっと意味が全然異なるのだ、ということは、この山の中でキラキラ光る、砕かれた鏡の残骸から、伝わってくる。


詩人のアトリエ

 さらに奥の展示室に入れば、

 壁一面に展示されているのは、植物標本。

 本物の草花の、押し花だ。

 隣の壁には植物名も筆記されていて……。しかし白い壁にただ記されたその名前の群は、墓碑銘を連想させる。

 もちろん、直前に珊瑚の死を鑑賞したことからの誘導もありそうだ。

 その背後には、こんなインスタレーション。


2つのプロジェクト

 階段を上がり、順路に沿って上階へ。

本展は、生存に関わる自然生態系の事実を直視しながら、自然との理想的な共存関係を再構築するプロセスとして続けている崔の現行のプロジェクトと新作を織り交ぜて紹介いたします。世界7カ国に和紙を埋めたのち時を経て掘り起こした「World Underground Project(ワールド・アンダーグラウンド・プロジェクト)」、韓半島を南北に隔てる非武装地帯(DMZ)で自然が自己組織を通じて実現している生態系を未来のヴィジョンとし、森の復元を試みる「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」などのプロジェクトのほか、白いサンゴを用いた新作《White Death(白い死)》、我々の日常の中に存在しながら、名前すら知らぬまま消えゆく植物への眼差しを瞑想的に綴る「詩人のアトリエ」を通じて、切迫した環境危機の様相に静かに迫ります。緊急事態の警告と静かな詩情、生に潜在する暴力と美の振れ幅の中で、自然との共存可能性をさぐり、希望を探求します。

Ecology: Dialogue on Circulations

エコロジー:循環をめぐるダイアローグ

ダイアローグ1 「新たな生」崔在銀展
 より抜粋

 展示はかなり充実していた。読み込んでいたら時間がすぐ経ちそうだ。

 プロジェクトの中には、こんなユーモアも。種を埋め込んだ土で爆弾を作り、ドローンで撒こうというもの。

 上下の階の展示をあわせると、ひとつの大きなメッセージとなる。自分としては、壮大なインスタレーションの中に身を置いたあとに鑑賞した、2つの具体的なプロジェクトの衝撃が新鮮だった。

 そして、そうだ、作家はこうした現実の中に居る人なのだ、と。



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