責任の所在

9月だな〜


4月からずっと気になっていることがある



4月のある日に出来心でUber Eatsを利用した。外に出るのが面倒くさかったとか多分そんな理由で。


アプリで注文して、住所等を入力して、注文を完了。しばらくすると「○○さんが向かっています。あと20分くらいです」的な画面に切り替わった。
至極順調に思われた。
20分後、なんか知らん番号から電話がかかってきて、怖々出てみたらドライバーの人で、何やらうちの詳細な位置が分からんのだと言う。完全に分からんというよりは、近場までは来てるのだが正確な位置がつかめないらしかった。
「クリーニング屋さんのところの、白い壁の建物ですか?」彼は言った。たしかに家の隣にはクリーニング屋があるし、アパートの壁は白いので、そうですと伝え、互いにスッキリして通話は終わった。
しばらくしてアプリは「配達完了しました」に切り替わった。
私のねぎ玉牛丼はついぞ届かなかった。


その時は、まあ向こうだって配達のプロじゃなし、こんなこともあるだろうと思って返金処理をお願いして終わった。

それから数ヶ月後のある日、また出来心でUber Eatsに手を出した。やっぱり外に出るのはいつだって面倒くさい。

前と同じように注文処理を進めて、今度は備考欄に建物の特徴を書いてみることにした。
「クリーニング屋の隣の、白い壁のアパートです」くらいのことを書いたように思う。処理を完了してしばらく待っていると、またも知らん番号から電話がかかってきた。嫌な予感がした。


もしもしと出ると、配達の兄ちゃんがやはり、すみません近くまで来たんですけど建物が分からなくて……とお伺いを立ててきた。備考の但書は分かりにくかったかと反省しつつ、若干の苛立ちも覚えつつ、今どちらにおられますか?と訊いてみた。
クリーニング屋のところですと言う。近くには間違いなく在る。そしたら兄ちゃんは、


「クリーニング屋の隣の階段を上がったんですけど、人気(ひとけ)が感じられなくて……」と続けてきた。

完全に失念していた。私のアパートは白いが、クリーニング屋を挟んで反対側にもアパートのような建物があって、そこもまた確かに白っぽい壁だった。そして兄ちゃんの言う通り、日頃からそこには人の住んでいる気配がまるで感じられなかった。具体的には階段が錆びついていたり、白い壁も汚れていたりして、まるで吹きさらしの状態だったのだ。そんなとこ上がるなとは言いたい

多分、反対側の建物に行っちゃってると思いますねえ。と伝えると、兄ちゃんはそうでしたか、すみません、と言ったあとボソッと

「なんかここ、松屋のウーバーイーツのやつがずっと置いてあって…………」


みたいなことを呟いた。

あまりに恐ろしかったのでその場はスルーしたように覚えている。そうですか!あっじゃあ建物は反対側ですんで!よろしくお願いします!ハァーイ、ガチャンと電話を切って、すぐに注文したものはちゃんと届いたし、ちゃんと食べた。できるだけ「そのこと」は考えないようにした。


考えないようにしただけで、忘れられたわけではなかった。
今でもその建物の階段の前はどうしても通るし、階段を登った先のことを想像してしまう。


私の予想では、反対側のアパート(?)には誰も住んでいない。多分


あのねぎ玉牛丼を、迎えに行くべきなのか?


迎えに行くべきは、私なのか?



生活に足させていただきます