主婦の経験を生かして「整理収納ライター」に。藤野ことが伝える自分軸の見つけ方
※この記事のインタビューは2021年1月に実施しました。本記事中の肩書などは2021年1月当時のものです。
結婚や出産を機に、仕事を辞め、今後どうなるのか不安な人もいるのではないでしょうか。
日本国内の結婚、出産、子育ての課題を探るため5年に1度実施される出生動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)。その最新版・第15回調査(2015年)によると、結婚した女性の46.9%が1人目の子供を出産後に仕事を辞めています。また、15歳以下の子供がいる専業主婦の86%が働きたいと思っているそうです。
参考: 第15回出生動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
子育てがひと段落してから、また働きたい。とはいえ、何から手を付けたらいいのか分からず、自分に何ができるのか悩んでいる―。この記事がそんな風に悩む人のヒントになれば幸いです。
実は私も会社員と子育ての両立がうまくいかず、仕事を辞めた一人です。フリーライターとして活動するものの、「何を書きたいのか、何が書けるのか」ライターとしての方向性が定まらないのが目下の悩み。
そんな私がインタビューしてみたいと思ったのが、「整理収納ライター」として多くの記名記事を書き、フランス語の翻訳家としても活動する藤野ことさんです。
ことさんはライターだけではなく、今後はオンラインでの片付けサービス、片付け本の翻訳にもチャレンジしたいといいます。ことさんがライターを始めたのは子供が手を離れた40代後半になってからでした。
その時々の出会いを大切にし、これまでの経験を生かしながらチャレンジを重ねる。「無駄な経験なんてなかった」と話すことさんのお話は悩む私にとって示唆に富んだものでした。
藤野ことさんプロフィール
整理収納ライター、フランス語翻訳家。子供が手を離れ始めた40代後半からライターを始める。整理収納アドバイザー、住宅収納スペシャリストの知識を生かし「家事は楽に」をモットーに暮らしに役立つ情報を発信。「ヨムーノ」「hitotema」「サンキュ!STYLE」などで多数の記名記事も書いている。
藤野ことがライターになるまで
―ことさんがライターになるまでの経緯を聞かせてください。大学卒業後はフランスに留学されていたんですよね。
はい。帰国して、社会人のスタートは国際観光振興会(JNTO)の職員でした。フランス語が生かせるわけではなかったけど、団体職員として4年間、働いていたんです。働きながらフランス語の翻訳教室に通って、副業で翻訳の仕事もしていました。
そこで働いている時に結婚。夫は忙しくて家には寝に帰ってくるような生活だったので、共働きなのに家事はほぼ私がやっていました。仕事、翻訳、家事の生活を2年余り続けましたが、しんどくて。
―子供ができたらどうなるんだろうって思いますよね。
まだ子供がいなかったけど、生まれたらとてもやっていけないと思って。仕事と家事と翻訳、そのどれかを辞めるかと選択する時に、私は仕事を辞めちゃったんです。当時は子供ができたら女性は家庭に入るのが、わりと主流でもあったので、漠然とそんなものかと。
仕事を辞めた後は、副業でやっていた翻訳を本格的にやろうとしましたが、思うようにいかず。当時はクラウドソーシングもなかったし、コネがないと厳しくて。今、思えば営業が足りなかったのだけど。
知り合いのツテできた仕事を細々とやる専業主婦のような状態になってしまって。30代前半はこのままでいいのかと自分の軸が見つからずに悩んだ「超病み期」でした。
そうこうしているうちに、34歳で出産。20代でやりたいことはやったし、子供ができたら育児に専念すると決めていたので、そこからは子供が小学2、3年生になる頃までは、ひたすら子育てです。子育て以外、ほかのことを考える余裕もなく。
ただ、専業主婦時代もママ友と積極的に付き合ったり、PTA活動をしてみたりと人との関りは大切にしていました。
幼稚園時代のママ友は専業主婦が多かったのですが、すごいスキルを持っている人もいて。子供が幼稚園生になるくらいのタイミングで再び働き始める人もいました。それで、私も子供が小学2年生か3年生の頃に翻訳教室に行くことにしたんです。
―ママ友が働き始めるのを見て、影響を受けた?
「長い目で見て、年を取った時に自分にもできることがないか」と思って。前にお世話になっていた先生のところで、翻訳を勉強し直しました。週に1回、半日くらい、夫にも協力してもらって教室に通いました。
その時にライティングを勉強させてもらった感じです。それがライターになってから役に立っています。翻訳って語学力より文章力、リサーチ力が重要なんですよ。
そこから翻訳の仕事を再開したんですが、翻訳の仕事が来るのは数カ月に1回程度。子供が中学生になってゆとりができた時、コンスタントにできる仕事はないかなって思ったんですね。
自分が持っているもので何かできることはないかと思った時に、見つけたのがライターでした。文章を書くことは好きだし、何か書けるんじゃないかと。クラウドソーシングに登録したのがライター生活の始まりです。
「家が片付けばいい」と取った資格が強みに
―最初に整理収納アドバイザーの資格を取った時、それで稼ごうとは思わなかった?
全く思わなかったです。子供が小学校6年生の頃、中学受験の塾で出された大量のプリントを整理したいと思い、自転車で行ける距離で講座が受けられたので、思い切って「収納整理アドバイザー2級」を取ったんです。片付け方を勉強して、家が片付けばいいと。その頃はライターになるなんて考えてもいなかったです。
整理収納の分野でライターの需要があると気がついたのはクラウドソーシングに登録してからです。
―クラウドソーシングに登録して、試行錯誤する中で気がついたという感じですか?
登録してから1年くらいは試行錯誤して。整理収納以外にもいろいろ書きました。手当たり次第に応募するのではなく、なるべく自分の経験とかけ合わせられるようなものを選んでいました。
これまでやってきた家事のことや体験談、子育て。あとは持っていた資格といえば「整理収納アドバイザー」で。その辺のことなら書けるんじゃないかなと思って。するとわりと採用されるんですよ。その頃は今よりも書いています。月に40本、書いた時もありました。
―「整理収納で行こう」と決めたきっかけってありますか?
特にはありませんが、書いていて一番、楽しかった。整理収納なら資格も持っているし、単価も上げていける。それで自分に付加価値をつけようと、ライターになってから「整理収納アドバイザー1級」を取りました。
1級を取ってからは整理収納に関してはほぼ記名で書かせてもらっているので、それで営業もできて次の仕事につながる感じで。
今は整理収納だけじゃなくて、稼げるジャンルとして書ける範囲で不動産や住宅関連の記事も書いています。あとはフランス語のメディアで語学の勉強についても書いています。フランス語を忘れないために。フランス語をあきらめたわけじゃないんですよ。
フットワークは軽く。先を考えて、行動する
―フランス語をあきらめたわけじゃないというのは分かる気がします。オンラインで片付けサービスをやりたい、フランス語の片付け本を翻訳したいとご自身のブログにも書いていましたね。
ライター1本ではなく、仕事ができる軸は複数、持っていたいと思っています。「こちらがダメならこちら」とリスク分散ができるように。
オンラインの片付けサービスをするのは直接、反応を知りたい、オーダーメイドで片付け方の提案をしたいから。あとは相談の中で他人の悩みを知ることで、ライターとしても書ける幅を広げられるというのもあります。
片付け本の翻訳の方もフランス語で面白い本はないか、リサーチはしています。「整理収納アドバイザーが翻訳した片付け本」は珍しいと思うので。
あと、整理収納とライターのスキルをいかして、SNSで知り合った方の事業をお手伝いする予定です。
そうなると時間が必要になる。今は将来に向けて挑戦する余力を残しつつ、ライターの仕事をやっていこうと思っています。
―ことさんはフットワークが軽いな。先も見ているし。ご一緒しているライター組合の講座も受講後、すぐやっちゃいますよね。
すぐやりたくなっちゃうから、すぐやっちゃう。先延ばしにすると、忘れてしまうから。それで原稿が遅くなって、自分の首を絞めちゃうこともあるのですが。
「できる・できない」は別にして、先のことは常に考えています。
今は将来に向けて土台をつくり、選択肢を増やす時期だと思っているので、何もしないでいるのはもったいないと思っていて。
私は直感やひらめきを大切にしているので、「これはいける」と思ったことにはすぐ食いつく感じです。
客観は大事。「自分の得意・強みは自分で悩んで見つけるものじゃない」
―自分の強みや軸が見つからなくて、悩んでいる人へアドバイスするとしたら、何をアドバイスしますか。
まずは行動する。やってみないと自分に向いているかどうかも分からないです。やれるだけやってみて、自分に合うと思ったものだけを残し、合わないものは捨てる。
勉強するにしても、インプットに偏りがちだと思うのですが、インプットばかりしていても先につながらないので、アウトプットする。
講座を受けたならブログやnoteに書いてみる、本を読んだらTwitterで感想を書くでもいいと思います。勉強した時が一番身に付きやすい。すぐにできないなら、自分で締め切りを設けて、できるだけアウトプットする。これはライターになる前から心掛けていました。
身構えちゃうとできないので、とにかく書いて公開しちゃう。ブログやnoteなら後からいくらでも修正できます。
あと、私は悩んだら人に相談します。まず人に聞いてみて、その意見を参考にどうするのかを決めることが最近は多いです。
―相談は誰にしますか?
相談の内容にもよりますが、主に仕事仲間。あとは昔からの友人、ママ友ですね。自分のライフステージの中で「広く浅く」ではなく、いつでも連絡して会える友人がいるので、「話を聞いてくれる?」って相談しちゃいます。
―確かに、相談することで客観的になれますからね。
そう。客観するのを大切にしています。調べられることは調べて、勉強しますが、調べても分からないことは一人で悩むと堂々巡りになってしまう。それは時間のムダです。
人脈も大事にしています。50年近く生きているといろんな人に出会っています。大学で同じことを勉強していても進んでいる道は違うし、留学時代の友人も面白いことをやっている人が多くて。ママ友とのランチも楽しいだけではなく、得るものがあります。
いろいろな人と付き合うと、自分とは違う考え方、ものの見方があって勉強になる。出会いは大切です。
あとね、自分の強みは自分で悩んで見つけるものじゃないです。
―そうですか。自分で悩んで見つけるものじゃない?
Twitterで「こんなことを考えている」「こんなことをやりたい」とつぶやいた時の反応、リプライを見て、「私、こんなことができるんだ」って自分にできることに気づく時があります。情報発信をしてみるのも大事だと思いますね。
経験を生かし、持っているものを掛け合わせる。「無駄な経験なんてなかった」
―悩んでいる人へのアドバイスは「行動する」「学んだらアウトプットする」「人との関りを大切にする」「情報発信する」ーですかね。
そうですね。あとはこれまでの経験、自分の持っているものを掛け合わせて今後に生かそうと考えています。
20、30代なら試行錯誤してもいいと思いますが、私はアラフィフなので、この歳になると突拍子もなく全く新しいことを始めようとしても難しいので。
専業主婦時代はネガティブ思考だったところもありますが、時間があったからできたこともあったし、いろんなことをやってきて、よかったなと思うんです。悩んだことも無駄じゃない。本当に無駄な経験なんてなかったです。
編集後記
人との縁を大切に、今できることを精一杯やる。軽やかで行動力のあることさんにインスパイアされたインタビューでした。
整理収納だけではなく、おいしそうなお取り寄せ、おやつの紹介が楽しいことさんのTwitter、インスタグラムも要チェックです。
・ことさんのホームページは こちら
・ことさんのX(旧Twitter)は こちら
・ことさんのインスタグラムは こちら
・ことさんのブログ:こと流エクリチュール
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