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第三回アイドルプロデュース 愛をこめて♡グルメ・フォー・ユーを振り返る

のあさーん! 愛してるぞ~!

・はじめに

 そんなわけで、ちょっと前までデレステ内で開催されていた第三回アイドルプロデュース 愛をこめて♡グルメ・フォー・ユーについて振り返ってみます。今回のイベントで登場したのあさんも時子様も筆者の好きなアイドルなので、筆者としてはかなり楽しく走れたイベントでした。
 もしものあさんや時子様と夫婦になって暮らしたら……? という設定で組み立てられた今回のアイプロのシナリオ、そこから見えたものを筆者なりにまとめていきたいと思います。

・愛を取り戻せ!

 先に述べたように、第三回アイプロの概要はのあさんと時子様が奥さん、プロデューサー(デレステのプレイヤー)が夫となり、夫婦の共同生活を体験するというものでした。しかしイベント中でのあさんが繰り返し「ロールプレイ」という言葉を使っていたり、時子様が「こんなのはくだらない企画」と突っぱねたように、彼女たちとプロデューサーは夫婦という役割(ロール)を演じていただけですし、始まりと終わりがあるパッケージ化された企画にすぎません。
 それでもイベント中で描かれたのは妻と夫との間の愛という概念であり、のあさんと時子様の愛に対する考え方が垣間見える展開となりました。
 では、彼女たちなりの愛とはどんなものだったのでしょうか?
 それを考える道具として「スケール」というものを使ってみましょう。スケールとは対象の尺度のことです。例えば信号機のスケールを考えてみます。信号機は赤・青・黄(または赤・青)のランプで構成されていますが、ひとつひとつのランプ単体というスケール(尺度)で量ると「色の付いた照明」でしかありません。しかし、それらのランプが複数集まった信号機というスケールで量るとただの照明ではなく「交通を整理する機器」という全く違ったレベルの機能が発揮されます。このようにスケールが変化することで新たな機能が生まれることを「創発」と呼びます。
 もう少しスケールと創発の例を挙げると、人間の身体もそうです。人体は細胞が集まって臓器を構成し、臓器が組み合わさってヒトという生物の身体が作られています。細胞のスケールで見れば個々の細胞はそれぞれの役割を果たしているのにすぎませんが、複数の細胞が集まって作られた胃や心臓などの臓器のスケールでは食べ物を消化する、血液を循環させるという新たな機能が創発します。その臓器が集まった人体というスケールではさらに言葉を発したり、ものを掴んで投げたり、文章を書いたり、といった機能が創発します。
 スケールは物理的に存在しないものにも使えます。個人が集まって社会というスケールが構成され、新たな機能が創発するということも現実に起きています。説明が長くなりましたが、のあさんや時子様とプロデューサーが夫婦というスケールを組むことによってどんなものが創発されたのか? それを考えつつ、彼女らの愛の形を探ってみましょう。

・労いと感謝

 まずはのあさんから見ていきます。日頃から感情を表に出さず、機械のようにクールなのあさんですが、実はプロデューサーに対してかなり好意的なムーブをたびたびぶちかましてきます(本人に自覚はないようですが)。そんなのあさんはイベント中に労いも一種の愛、と言っています。

お寿司の材料を得るため海にやって来たのだ

 また、プロデューサーの日々の労働への感謝も彼女の中で重要なもののようです。

「お仕事、お疲れさま」は労いの言葉でもある

 毎日、自分のために仕事(プロデュース)をしてくれる相手への労いと感謝の気持ち、それが大事なんですね。

「感謝」と「労い」がキーワード

 パートナーが汗をかき、労働することに対して労いや感謝の気持ちを持つこと、それがのあさんなりの愛のようです。毎日、会社に行って必死に働いて理不尽な思いをして……というタスクを果たしたあとに奥さんが感謝をくっつけてくれるとなると、すごくうれしいと思います。モチベーションも上がっていくでしょう。仕事・労働(家事も含む)へのありがとうという声かけ、それを創発するスケールがのあさんとプロデューサーが描いた夫婦の関係……なのではないかと思います。

・躾と連帯

 一方、時子様はどうでしょうか。Pラブムーブをかますのあさんとは違い、常々プロデューサーを下僕扱いし豚呼ばわりする時子様が表現する愛とは? アイプロのシナリオを通して不機嫌そうな描写が多かった時子様ですが、その中で下僕と主人というスケールが示されていました。

下僕と主人の評価は連動している

 主人として下僕を一方的に支配しているように見える時子様ですが、下僕が失態を犯すと主人の評価も下がるという双方向の関係性があるようです。そして下僕側もなにも考えずに主人に奉仕していればいいというわけではありません。

押しつけがましい一方的な献身では意味がない

 時子様はよく「自分は一流の人間である」という主旨の発言をし、一流だからこそ他人を従える(下僕扱いする)資格があるという言動がちょくちょく見られます。しかし下僕もまた単なる奴隷ではなく自分で考えて行動する一流の下僕であれ、と時子様は要求するわけです。この辺の考え方はかつてサッカーの日本代表やジェフ千葉を率い、いまは他界してしまったイビチャ・オシム監督を連想させます。ピッチ全体のことを考えながら走り、ときには自分のポジションを離れるリスクを冒してまでチームを勝利に導くような、質の高い思考とアクションをその場で編み出して実行するプレーをオシム監督は唱えましたが、そんなふうに頭脳を駆使しつつ主人に奉仕する下僕こそ、良きパートナーなのでしょう。
 そのような一流の主人と下僕というスケールに愛が宿るような感じがしなくもないような気がしないでもないのです。

何があっても見捨てない!!!

 主人は下僕を厳しく躾けつつ、一方で下僕と連帯して一流たる活躍をします。それが時子様と一緒になったときに創発される機能なのではないでしょうか。

・まとめ

 以上、第三回アイドルプロデュース 愛をこめて♡グルメ・フォー・ユーのなにが「愛をこめて」だったんじゃい、ということを振り返ってみました。のあさんの愛は仕事に対する「ありがとう」という言葉に象徴されるような、労いや感謝の気持ちでした。社会の中での営みである労働への感謝を伝えるのが妻と夫の間での愛だったわけです。他方、時子様の場合は主人と下僕が連帯することが愛である、というように考えてみました。主人を満足させるような行動を取れるか否かが愛があるかないかを決定し、それを主人と下僕が分かち合う関係性が時子様なりの夫婦観や愛観と言えるのではないでしょうか。
 (新婚の)夫婦を演じ、奥さんの作った手料理を食べ、団地で生活する情景を描いた今回のアイプロにのあさんと時子様を主役として登場させたのはとても興味深いものだったと思います。こうしたちょっと変わった女性がドカドカ出てくるのがシンデレラガールズの美しいところなので、今後もちょっと変わった愛や夢、希望について考えさせてくれればいいなあと思うのです。

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