的場梨沙ちゃんが見る世界

 的場梨沙ちゃんの特徴を挙げるとすると、『パパのことが大好き』であることが真っ先に思い浮かびます。梨沙のこの特徴について少し見ていこうと思います。

 梨沙にとってパパは世界中の誰よりも愛しい人間です。パパ以外のオトナには興味が無いと言っていますし、パパから褒められるまたはパパと遊びに行くことをとても楽しみにしています。梨沙にとって、パパと親しく付き合うのは自身が幸せになる最高の手段であり、欠かせない元気の素なのでしょう。

 逆に言えば梨沙はパパとの付き合いからしか幸せを取り出せない不器用な女の子だったとも言えます。すべての喜びの発生源がパパなので、パパ以外のものごとからは幸せをつかみ取れないのです。

 梨沙はそれで別に困ってはいませんでした。近くにパパがいるだけで梨沙はオーケーなのです。梨沙が観測している世界には①自分②パパ③それ以外の人間の三種しかいなかったのかもしれません。梨沙はその世界の住み心地に満足していました。そんな狭い世界に引きこもり、外側に出ることを嫌っていたとも考えられます。

 また、梨沙は『将来の夢はもちろん、パパのお嫁さん♪ジョーダンなんかじゃないわよ、本気なんだから!』と述べていますが、娘が父親と結婚するなんてファンタジーな出来事です。しかし梨沙はそれを本気で求めていました。リアルより狭くてファンタジーな世界にいるほうが、梨沙にとっては生きやすく、楽しかったのです。

 しかしアイドルである梨沙はリアルな世界=社会で仕事をしています。周りから評価されなくなってしまえばアイドル活動は続けられません。だから梨沙はレッスンに励み、ステージに立ちます。そのアクションには無数の人間が関わっています。梨沙のお客さん、レッスンを課するトレーナー、ライブを運営するスタッフ等の仕事の関係者、梨沙と一緒にがんばっている仲間たち、そして梨沙のプロデューサー……パパ以外の人間が梨沙の周りにたくさんいます。梨沙は自分とパパとそれ以外ぐらいしかいなかった小さな世界から社会という巨大で複雑な世界に入り、その中で生きることを強いられました。それは梨沙にとってとても面倒くさいことです。パパさえいればよかったのに他の人間とも親しくなる必要が出てきますし、社会的評価を得るために多種多様な仕事をミスなくこなさなければなりません。

 しかしその広い世界の中にはパパと同じくらい好感を持てる人間もいるでしょうし、経験したことのない出来事を体験して成長することもできます。    

 梨沙はこんなことを言っています。

『現場の雰囲気は、楽しいほうがいいでしょ? スタッフさんに好きになってもらえれば、現場のモチベもあがるし次のお仕事のチャンスだって、あるかもしれないし。なにより……アタシ自身のモチベも違うもん! 作品や現場を好きになれたら、頑張ろうって気になるでしょ! そういうの、バカにできないと思う。だって……。アタシが頑張るのは、いつだってアタシの「好き」のためだから! パパのためだし、仲間のためだし、アタシ自身のため! それから……ちょっとだけ、アンタのためでもあるかも、ね』
(「アンタ」というのは梨沙のプロデューサーのことです)

 この言葉の中にある「好き」というフレーズにはいろいろな意味が込められていると思いますが、友好的な意味合いが込められているのは確かでしょう。多くの人に梨沙は自発的に好意を持つようになっていきました。自分がいまいる巨大な世界の中にはたくさんの良いことや興味深いことがあることに気づいたのでしょう。

 梨沙の人生もアイドル活動もまだまだずっと続きます。けれども梨沙は自分の力でリアルな世界を生きていく方法を手にしつつあります。いつかパパを慕う気持ちから卒業する日が来るのでしょうが、それは悲しいことではないでしょう。的場梨沙がこの先どんな活躍を見せるのか、よく見ていきたいです。

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