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黒埼ちとせさんに関するまとめ
・はじめに
黒埼ちとせというキャラクターについてつらつら考えてみます。なぜそんなことをするのかというと、ちょっと前のデレステ内イベント『Fin[e]~美しき終焉~』のコミュを読み、そこから「ちとせってどんな女の子なんなのかしらん」と思ったので各種コミュを参照しつつ、それらをまとめたいと思ったからです。ではさっそくいってみましょう。
・基本的に他人を気にする
ちとせは高貴な育ちだし、白雪千夜というしもべを従えているから他人を見下している感じ、自己中心的な感じがする……というイメージがあるかもしれませんが、実は他人を気遣うタイプの女の子として描かれます。
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ちとせには孤独でいるよりかは誰かに好かれたいし、誰かを好きでいたい、という気持ちがあるようです。ちとせの宣材写真を撮ったカメラマンも彼女を見てこんなことを言っています。
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「不快にさせる」というのは言い過ぎなんじゃないですか~!? とも思いますが、ちとせは優しい心を他人に見せている、というのがうっすらとわかる場面です。
この他者への気遣いが色濃く描かれるのがストーリーコミュ65話でした。このお話はちとせを主人公に据えたコミュで、ライブを翌日に控えたちとせがリハーサル中に体調を崩して倒れ、ライブそのものは神崎蘭子を代役に立てることで実行できたものの、自分の仕事をまっとうできなかったちとせは悲しむ……といった筋書きで始まり、お話の序盤はちとせが倒れた件について周囲に謝罪する場面が連続します。例えば以下のように、周りに迷惑をかけたことを謝り、落ちこむシーンがかなり多いです。
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他人に迷惑をかけたくない、つらい思いをさせたくない、失望されたくない……そんなふうに、ちとせは己が他人の負担になることを恐れます。それだけ献身的な性格だとも言えます。しもべであり親友である千夜の幸せを第一に考えているところにもその性格があらわれています。生まれつき身体が弱く、自分の人生はそう長くないのではないか、と思っているちとせは自分がこの世を去る前に千夜を幸せにしたいと望んでいるのですが、千夜の幸福を決定するのは千夜自身です。ちとせからの思いやりの気持ちが千夜にとって大切なものであるのは確かですが、千夜本人が「私の幸せはこういうものだ」と自分でジャッジできないのはそれはそれで不健全です。
このように他人を気にするちとせですが、その気持ちを抜きにしたらなにが残るのでしょうか。
・苦しんで生きること
まずちとせは自分のことを「弱い人間である」と思っています。
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周りの人間ができていること(リハーサル中に倒れずちゃんとライブをやる、ようなこと)が身体が脆弱な自分にはできないためにちとせは自信を持てずにいました。
しかしちとせは徐々に変わっていきます。
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身体が弱いことは変わらない一方で、心が動いたとちとせは言います。肉体的には弱いままですが、精神的にはアイドルをやることで変化が起こっていました。周りに迷惑をかけずに自分の手でアイドルの仕事をやりきりたいと思うこと自体、ちとせが前を向いている証拠です。
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アイドルはなにかを出力する職業です。歌を聴いてもらう、ダンスを披露する、役を演じるなどなど自分の外側の世界に働きかける仕事です。ちとせの同僚たち(その中にはちとせと同じように病弱であった北条加蓮のような女の子もいます)ががんばって仕事をしているのを見ながら、ちとせもなにかを出力し、出力したなにかを世界に残すということにチャレンジしていきます。それは楽なものではなく、苦労も伴った挑戦です。肉体の弱さは少しも治っておらず、また仕事で他者に迷惑をかける可能性は残っています。それでもちとせはアイドルを続けます。
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ちとせは弱さを抱えつつ、それを受け入れて生きることを選びました。これがちとせの成長の過程……とも言えますが、苦痛や悩みのない人生などあるのでしょうか。誰だって毎日痛みを感じて、嫌なことを考えて生活しているのではないでしょうか。そういう意味ではちとせの痛みと共に生きる、という姿勢は非常にノーマルなものだとも言えます。周りに迷惑をかけたくない、というのも大多数の人がそうでしょうし、嫌われるよりかは好かれたいのが普通です。
少し話がそれますが、ちとせは超自然的なもの、スーパーパワー的なものに憧れていたような描写があります。幼少期は黒魔術を信仰する人と付き合いがあった、というエピソードがありますし、蘭子の中二的ファンタジー世界観に理解を示したり、自分は吸血鬼の末裔だと語ったりするあたり、空想の中で自分の弱さを克服したかったのかもしれません。そんな妄想だって誰もがやることです。
傷ついて苦労した末に見つけたちとせ個人の望みとはノーマルに生きる、そしてなにかを残す、ということでした。
・死に関する考え方
ちとせは生まれつき身体が弱い、というのはここまででも触れてきましたが、それがかなりへビィなレベルらしく、『Fin[e]~美しき終焉~』のコミュ冒頭では検査入院する場面まであります。ちとせは自身の身体の不調を死の接近と感じているようです。
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ちとせは大多数の人と同じく死を恐れています。ちとせにとって(ノーマルな人にとって)死は怖い物で、遠ざけたいものです。こんなに自分の身体が弱く、苦しい思いをするのならいっそ死んでしまいたい、とは思わないのです。
ゆえにちとせは死を肯定しません。それがハッキリ示されるのが以下の場面です。
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とても大雑把に言うとこのシーンは自殺を試みる一ノ瀬志希にちとせが声をかける場面なのですが、死は救いでなく、ただ苦しい終わりとちとせはきっぱり否定します。
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死の接近を感じつつ生きるちとせだからこそ言える言葉なのかもしれません。がんばって生きようよ、という次元ではなく、死んでも意味なんてないから生きなければ、という厳しくも力強い考え方です。死に関してはちとせは確固たる信条を持っています。
ちなみにこのシーンのあと、なおも自殺を図ろうとする志希に付き合う形でちとせも命を落としかけます。死を否定するちとせがなぜ志希と一緒に死のうとするかは解釈が分かれる点ですが、ちとせの生きる目的が「なにかを残す」であるなら志希に対して死の無意味さを理解させる、という教えを残した時点でちとせの目的は達成されています。そのあとでなら、ちとせはもう死んでしまってもいいのかもしれません。ちとせの死生観は非常に独特です。
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・まとめ
まとめると、黒埼ちとせは他人を気遣う女の子であり、ノーマルな生き方を志向し、死を断固否定する女の子です。普通の女の子らしい面と、生にこだわる特殊な面があります。そしてちとせ個人の目的は生きてなにかを残すことでした。
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ちとせの生き方を見ているシンデレラガールズのユーザーからすれば、ちとせの振る舞いひとつひとつが彼女の生きてきた証です。これからのちとせはいったいどんなものをどこに残していくのでしょうか。ちとせの長寿と幸福を願いつつ、この記事を締めたいと思います。