【SOL】stETHのdepeg問題がstSOLでも起きるのか考えてみた
stETHのdepeg問題
最近話題のstETHのdepeg問題。今回はLidoが提供するリキッドステーキングの仕組みやstETHとstSOLの違いを解説しながら、stSOLでもdepeg問題が発生し得るのか?をまとめました。
タイトルを含めて、すでに誤解を招く表現をしてしまっているため、先に結論を書きます。
stSOLはSOLと1:1でペッグするトークンでないので常にdepegしている
stETHとstSOLは環境が大きく異なるため、現時点でstSOLの取り付け騒ぎが起こる可能性は限りなく低い
今回の記事は、どちらかというと、
stSOLを持っているけど仕組みがよく分かっていない
stETHとの違いが分かっていない
といった方に向けて、stETHとstSOLの違いを解説する記事になります。興味がある方はぜひ最後まで読んでみてください。
リキッドステーキング
まずはじめにステーキングの報酬とは何なのか。ここでいうステークとはブロックチェーン上のバリデーターになって報酬を受け取るためにステーキングするという意味です。
Ethereum 2.0はPoS(Proof of Stake)、SolanaはPoH(Proof of History)によるバリデーションの仕組みを持ちます。どちらも、ステーキングしている人の中からバリデーターを選び、バリデートしてくれた人に対して報酬を払うという仕組みです。
どちらもバリデーターになるためにはある程度の条件が存在しておりEthereum 2.0の場合は最低32ETH保有している必要があります。Solanaの場合は結構なハイスペックマシンが必要になります。
また、Ethereum 2.0へのステーキングの場合は、2.0が完成するまで預けたETHを引き出す(償還する)ことができません。
リキッドステーキングとは、そういった資格を持っていない人でも、みんなでコインを出し合って報酬を分割するサービスです。ユーザーは少ない出資でバリデーター報酬が得られます。
なぜ「リキッド」かというと、後述する債権トークンが売買可能なため、「バリデーターになるためにステーキングする行為」自体がトークンとして流動的/リキッド(≒交換可能)になったからです。
stETHの仕組み
リキッドステーキングの理解ができたところで、続いてstETHの仕組みを解説したいと思います。
1ETH = 1stETH
stETHとはLidoが提供するリキッドステーキングサービスの債権トークンです。ETHをLidoに預ける代わりに1:1でstETHを受け取ることができます。
そして、stETHを持っている間はバリデーター報酬をstETHとして毎日受け取ることができます。
報酬は債券トークンの「量」
stETHのバリデーター報酬は「債権トークンの量」が増えていくことで受けとっています。大事なのでもう一度いいます。stETHのバリデーター報酬は「債権トークンの量」が増えていくことで受けとっています。「量」です。
この報酬はstETHを所持しているウォレットに支払われます。プロトコルにstETHを預けた場合はプロトコルが受け取ります。AAVEやCurve.fiなどのLidoと連携したプロトコルでstETHを使う場合は、彼らがあなたの代わりにstETHの報酬を受け取って、ローン返済に当ててくれたりAPYに反映してくれたりしています。
Lidoと適切に連携していないプロトコルの場合は、stETHの報酬は闇に消えていますので注意してください笑。 stETHと連携しているプロトコルは下記から確認できます。
ETH2.0完了まで償還できないが、市場取引は可能
そして、2.0が完成するまでバリデーターとして預けたETHは引き出せないと話しましたが、Lidoでもそれは同じです。LidoでもステーキングしたETHは償還できません。代わりに、債権トークンであるstETHは市場でETHと取引できます。故に、実質的にETHに交換できるという状況になっています。
色々話しましたが、まとめると、
stETHとETHは1:1でペッグしている
バリデーター報酬はstETHの量で支払われる
ステーキングしたETHは2.0が完成するまで償還できない
stETHをETHと市場で取引することはできる
となります。
なぜ乖離が起きているのか?
ではなぜ、今1:1だった状態から乖離が起きているのでしょうか。色々な要因がありますが、現在の状況は、市場価格においてETHとstETHが乖離しているというのが正確な状況です。
市場価格は需給で決定します。実際にETHとstETHが1:1で設計されているかどうかは関係がありません。
何が起きているのか、Twitterや各ニュースメディアの情報をまとめると、
The Merge(Ethereum 2.0)の完了見込みが22年8月に延期
大口ウォレットが2022/6/9に5万stETHをCurve上で売却
Curve上でstETHとETHの均衡が崩れ、stETHの市場価格とETHが乖離
というのがざっくりとした時系列のようです。
ここに更に、Celsiusの取り付け騒ぎ&出庫停止&GOXというトリプルパンチwが乗っかってきますが、全体的にはstETHの需要が落ちたという状況です。
ただし、もう一度お伝えしますが、2.0完了後はstETHとETHは1:1で償還できます。市場価格として割安評価を受けているだけに過ぎません。
Lido自体がハックされたり何か障害が発生したりして、1:1で償還できる仕組みが提供できなくなる可能性もゼロではありませんが、元のEthereum2.0の仕組み上では、ステーキングされているETHはいずれ1:1でバックできることが約束されています。
BinanceのBETHと比較すると
Binanceも独自の債権トークンBETHを、LidoのstETHと同じ1:1でETHとペッグする仕組みで提供しています。
stETHの今回の騒動以前から、BETHは市場価格と乖離しつつもサービス提供を続けていました。BETHとBinanceを信頼するかは人それぞれですが、市場価格とペッグ設計がズレることは特別ではありません。
2.0が完了するまでステーキングしたETHをビーコンチェーン取り出せないからこそ、流動性に偏りが生まれ市場価格との乖離が生まれています。(目先でETHに交換したい人の需要)
ですが、そもそも2.0が完了したら、眠っていたETHが取り出せるようになるので、stETHやBETHは1ETHと等しく交換できるようになります。
本題:stSOLでも起きるの?
さて、ようやく本題のstSOLに移ります。
stSOLは、同じくLidoが提供するSolanaチェーン上のリキッドステーキング用の債権トークンですが、設計が大きく異なります。
1SOL ≠ 1stSOL
stSOLはバリデーター報酬をstSOLの価値に毎日反映しています。どういうことかというと、SOLをLidoに預ける代わりにstSOLを受け取りまが、このとき、1SOLが1stSOLになるのではなく、ちょっと少ない量のstSOLを受け取ることになります。
ということです。
報酬は債券トークンの「質」
上記の通り、stETHがトークンの「量」によって報酬を受け取っていたのに対し、stSOLはトークンの「質」によって報酬を受け取ります。
つまり、Lidoのページを見ると、stETHは1ETH = 1stETHと記されているのに対し、stSOLは1stSOL = ~ 1.0431SOLというように1SOL高いレートで交換されます。
これは市場価格を反映しているのではなく、バリデーター報酬を織り込んだ価値を表しています。どんどんその差は広がっていきます。
つまり、stSOLは常にSOLに対しdepegしています。バリデーター報酬が積み重なるにつれて、そのdepeg具合は大きくなっていきます。
すぐに償還可能、市場取引も可能
そして、stETHと異なる点がもう一つ。それはステーキングしたSOLは市場取引せず償還できるということです。申請すると2,3日掛かりますが、バリデーター報酬込みの価値でSOLを受け取ることができます。
もちろんJupiterなどを介して市場価格で取引も可能です。
まとめると、
stSOLとSOLは1:1でペッグされていない(stSOL = SOL+報酬)
バリデーター報酬はstSOLの質で支払われる
ステーキングしたSOLはいつでも償還可能
stSOLはSOLと市場で取引できる
となります。特に最初の3つはstETHと状況が全く異なりますね。
mSOLのダッシュボードを見てみる
ここで、stSOLと同じ仕組み(=報酬を「質」で支払う仕組み)で作られているリキッドステーキングMarinadeが提供しているmSOLを見てみましょう。
彼らが提供しているダッシュボードがかなり分かりやすいです。
このように、ずっと右肩上がりでSOLに対して差が開き続けています。これはバリデーター報酬がmSOLの価格に反映され続けているからです。
stSOLとSOLの関係性がひと目で分かるグラフを探したのですが見つからず、、しかしながら、mSOLと同じように報酬が価値に還元されている仕組みは一緒です。
まとめ
stSOLでもstETHのようにdepeg問題は起きるの?
さてここまで来ると、上記の質問のナンセンスさはご理解いただけたかなと思います。
stSOLとstETHは似て非なるものであり、depegすることが仕組みに内包されています。そしてすぐに償還可能なことから、市場取引で本来の価値以下の値段で取引されるということも少ないです。
ただし、ハッキング等によってLido自体への信頼が崩れたり、全く異なる理由によってstSOLの価値が大きく損なわれるリスクというものは、クリプトである以上残ります。これはまぁ全通貨共通で言える話なのでアレですが。
こんな極寒の不況の中でも安定してETHやSOLを増やし続けるステーキングは魅力的だと思います。市場で割安になっているタイミングこそ逆に狙い目という考え方もあります。
そのあたりは、ご自身の判断で!
stETHのドキュメント
stSOLのドキュメント