憧れのアーティストに会えた話 〜X編①〜
89年、中学2年、人生を決定づける運命的な出会いをした。
X JAPANことXのデビューシングル「紅」だ。
それまで音楽に関しては人並み以下、はっきり言ってTVで流れてくる歌謡曲を知ってるぐらいでまるで興味がなかった。
CDというメディアの存在すら知らず、それこそ友人がデパートで買っていた工藤静香の8cmシングルを見て、卓上カレンダーだと思っていたぐらいだ。
やがて父親が買ったAIWAのCDコンポで我が家でもCDが聴けるようになり、友人にCDを借りていく中でXの紅を聴くことになる。
それまでロックというものに触れてこなかったピュア中学生の耳に衝撃が走った。静かなオープニングから一転、激しく早いテンポで織り成されるバンドサウンド、そしてメロディアスな歌
とにかく一発でノックアウトされ虜になった。
それからジャパニーズロックへとのめり込むようになる。
時代はイカ天ブーム
音楽雑誌ではブルーハーツにジュンスカ、プリプリや米米クラブ
そんな90年代初頭に俺はロックと出会った。
ギターってなに?ベース?
Xやロックについては彼に聞くといいよと紹介された彼は「べんべ」と呼ばれていた。
クラスが同じこともあり、俺はべんべから様々な情報を得ていく。
彼とは中学〜高校と一番の親友であり、共にバンドを組むことになる
ある日、音楽の授業でアコギのテストがあった。
そこでまた運命を左右する出来事があったのだ。
べんべがそのアコギのテストで紅のオープニングのアルペジオを披露したのである。
「あのXの紅の音を目の前で友達が弾いている」
その衝撃たるや、音楽も楽器も知識のなかった自分からすると理解を超えており、べんべを尊敬するとともに、教えを乞うことになる。
べんべは典型的なロックキッズで、親の影響もあり家には洋楽のレコードだけでなく、エレキギターも持っていたのだ。
初めてべんべの家でエレキギターの音を聞いたときはまさに未知との遭遇であり、なんかわからないけど凄ぇ!と思った。
エレキギターをCDサイズほどの家庭用小型アンプにつなぎ、得意げにオーバードライブのスイッチをオンにしかき鳴らされたとき、歪みという概念を持っていなかった俺には音がどう変わったのかも理解できず、ただ音楽室にあったアコギとは違う電子的な音が出ていることだけが理解できた。
それからは、少しずつ紅のイントロを覚えていく日々の中で、またまた道を左右する出会いがあった。
べんべにXのVHSビデオを借りたのである。
それが「爆発寸前GIG」、Xの渋谷公会堂でのライブを記録したものであり、ロックコンサートがどういうものなのか初めて知ることになる。
そしてある日、紅を貸してくれた友人とそのビデオについて語り合っていたとき彼から発せられたひと言が突き刺さる
「Xみたいな形のベースもカッコいいよね」
何故だかわからない
だが俺少年の心を突然ときめかせたのだ。
それまではXでも人気メンバーのHIDEやYOSHIKIに目を奪われていたのだが、一転TAIJIのファンになってしまった。
ベースってなに?どの音がベース?
まったく知識のなかった俺はロックを、音楽を、楽器を、ひとつひとつゆっくりと深く知っていくことになる。
今では厨二病と例えられることの多い思春期真っ只中、その中2に俺の人生は決定づけられたのである。
つづく