
憧れのアーティストに会えた話 〜X編④完〜
20年前に観ることができなかったTAIJIのいるX
2年前にはXを観れたがTAIJIもhideもいなかったX
コンサートタイトルといい、メディアでの情報といいどうやら本当にTAIJIが参加するようだ。
まさかこんな奇跡のような機会が訪れるとは思っていなかったので、急遽ヤフオクでチケットを取った。
どんな席でもいい、とにかくXで演奏するTAIJIが観れるかもしれない
そしてYOSHIKIの口からTAIJIがゲスト参加すると正式にアナウンスがあった
2度目となるXのコンサート当日は夏らしい暑さだった。
前回サポートしていたSUGIZOさんが正式メンバーとなり、海外で本格的に再始動しているX JAPAN
席は後ろのほうだったがほぼ正面
やがてコンサートがはじまり、新曲を織り交ぜた本編はどこかうわの空で
なによりもTAIJIが出てくる瞬間への期待が大きかった。
そしてアンコール、画面の中では聴き慣れていたあのTOSHIのコールでTAIJIが呼ばれた。
それはもう言葉にできない感動だった。
病におかされ歩くこともままならない身体で、ラストナンバー「X」を弾いてくれた。
「TAIJIさん、Xで弾くあなたに憧れて、俺はいま東京でバンドを頑張ってますよ。ありがとう。」
そう、感謝しながら奇跡の夜を目撃した。
二度と観れないと思っていたXのTAIJIを俺は観ることができた。
時間にして10分〜15分、たった1曲だが、それで充分だった。
そして、その奇跡は
まるで重みが違うこととなる。
翌2011年の7月、TAIJI死去
まさかの訃報に全身から力が抜けた。
奇跡的にXでのTAIJIを観れたことにより、「いつかミュージシャンとして直接会いに行くんだ必ず」と、あらためて思っていたが、その夢は叶わぬこととなった。
その日は夜勤のバイト中だったが、報せを聞いてもhideのときのように涙が出ることはなかった。
悲劇に慣れてしまったのか、奇跡的にコンサートを観ることができたからか、どこか冷静に事実を受け止めていたと思う。
ただ、「あぁ、俺をロックへ導いてくれた人とはもう二度と会えることはないんだな」とぼんやり思いながらヘッドフォンで爆音の「BLUE BLOOD」をリピートして聴いていた。
バイトを終え、俺の日常はいつも通り進んでいく。
晴れた午前中の西新宿
俺は帰宅するべく自転車で甲州街道を走る。
15メートルほど先を散歩中の犬が、飼い主のひっぱるリードを無視してこっちへ振り向く
犬は人の感情に敏感なのだ。
そう、気づけば俺は泣いていた。