紫色選書〜6月のAoyama Book Colors〜
Aoyama Book Colors、それは青山ブックコミュニティーによる色々選書。本屋さんで出会い大切に読んできた本を、毎月メンバーのコメントと共に紹介します。
6月はジメジメした日々に柔らかい光を放つ紫陽花のような装丁を集めてみました。紫色選書のはじまり、はじまり。
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1、服部みれい『SELF CLEANING BOOK 2 自由な自分になる本』(アスペクト)
服部みれいさんが「あたらしい自分になる旅」の中で出合ったたくさんのことが綴られています。からだから、こころから、たましいから自由になって「自分から自由になっていく旅」へ。
「あたらしい自分になって、たくさん着ていた服たち(そう、思い込みや罪悪感や恐怖心や虚栄心や見栄や強欲といった服たち! ああ、なんとたくさんの服を着ていることでしょうか!)を1枚1枚脱いでいったら、自分が前よりももっともっと自由になっていることがわかりました」。
服部みれいさんのお喋り口調が自然体で心地よく、“スピリチュアル”と一言でくくってしまうのはもったいない、ご自愛本です。
装丁:中島基文
イラスト:平松モモコ
印刷:中央精版印刷株式会社
選書:須藤妙子
2、鴻上尚史『ピルグリム クラシック版』(白水社)
戯曲本。〔共同体〕と〔ネットワーク〕をについて描かれた演劇作品。初演1989年とありますが、今演っても古びない普遍的な構造になっている、クラシック(決定)版。
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
選書:吉森雄作
3、滝口悠生『茄子の輝き』(新潮社)
『死んでいない者』の著者による短編集。「高田馬場の馬鹿」に出てくる言葉(ポジティブな諦念、親しげな頼もしさ、しゃべってるだけなのに歌ってるみたい、など)が妙に心地良い。
日記ベースの物語は橋から見下ろす神田川のように静かで、しかしまた滾るような烈しさもあって。(自ら綴ったはずの)記憶を実際の場所で辿ったとしても、完全に復元することはできない。歯痒いけれど、なんだか新鮮だ。
久しぶりに、あの街を歩きたくなった。
装画:松井一平
装幀:新潮社装幀室
選書:松下大樹
4、珈琲『ワンダンス(3)』(講談社)
ボルタリング漫画『のぼる小寺さん』の著者、珈琲さんの最新作。とにかくダンスの描写がカッコいいです。
ダンスは全然分からないけど、言葉で表現することが苦手な主人公がダンスで自信を表現していく様に引き込まれます。あと(今のところ)嫌なヤツがいないのもいいです。
選書:岸本晃輔
5、穂村弘『短歌ください』(角川文庫)
「ダ・ヴィンチ」のなかの読者投稿コーナーの連載記事をまとめた一冊(本書は文庫版)
恋愛から飲食のような日常、音や数といった概念や人名地名といった言葉など、さまざまなお題に沿って投稿された読者の渾身の一首を穂村さんがコメントする。
いわゆる一般の方からのたくさんの投稿が掲載されているゆえ、まさにいろんな人の感性の詰め合わせ。
三十一文字の自由のなかで繰り広げられる読者の世界とそれを鋭く、あたたかく詠みといていく穂村さんのキャッチボールは、短歌を深く知らなくても楽しめるはず。
ハッとしたりホロッとしたりハテナが浮かんだり、読みながら感性の土壌が耕される一冊。文庫版の俵万智さんの解説文もとてもおすすめ。
装画:陣崎草子
選書:Ayana Suzuki
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紫色の装丁はちょっと難しかったですかね……本棚にあったよ!という方はこっそり教えてください。来月は、やはりあの色ですかね。それでは、またお会いしましょう。