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断熱等性能等級とHEAT20の違い

はじめに

「住宅の断熱性能を高めるといいらしい」と耳にしたこと、ありますよね。省エネや快適性の向上、さらには健康面へのメリットまで、断熱性能についての話題は盛りだくさんです。でも、その評価基準となると急に難しそうに感じませんか?「断熱等性能等級」とか「HEAT20」とか、聞いたことがあっても「どれが自分にとって大事なの?」と悩んでしまうことも多いでしょう。

この記事では、そんな疑問をスッキリさせるために、住宅の断熱性能を測る主要な指標、「断熱等性能等級」と「HEAT20」について解説していきます。それぞれが何を目指しているのか、どう違うのかを整理しながらお伝えします。これを読むことで、断熱性能についての理解が深まり、四季を通じて快適で省エネな暮らしを手に入れるための第一歩を踏み出せるはずです。


断熱等性能等級:主にUA値を基準とした評価

断熱等性能等級は、日本国内で広く活用されている断熱性能の評価基準です。この等級の基本となるのが、外皮平均熱貫流率(UA値)。これは、住宅が外気温からどれだけ影響を受けにくいかを数値化したものです。

UA値とは?

UA値は、住宅全体の断熱性能を示す指標で、値が小さいほど熱が外に逃げにくく、断熱性能が優れていることを意味します。例えば、UA値が低い家は夏涼しく冬暖かい環境を維持しやすく、省エネ効果も高まります。

断熱等性能等級の基準

  • 等級4:現行の省エネ基準。この等級を満たすことが、現在の住宅設計における最低ラインとされています。

  • 等級5~7:次世代基準。等級が上がるほど、厳しいUA値が設定され、省エネ性能をさらに高めた設計が求められます。

このように、断熱等性能等級は住宅の省エネ性能を評価する際に非常に有用な指標といえます。しかし、一方で「実際の住み心地」や「快適性」といった側面を十分に反映できない場合があります。省エネ基準としての優位性を理解しつつ、他の視点も併せて検討することが重要です。


HEAT20:住宅シナリオを重視

一方、HEAT20が提案する住宅外皮水準(G1~G3)は、UA値の達成を目安として扱いつつも、それが最終目的ではありません。HEAT20が目指すのは、以下の4つの住宅シナリオを実現することです:

  1. 健康的な室温の維持

    • 地域ごとに設定された冬季の最低室温基準を守ることで、健康リスクを軽減します。たとえば、寒冷地では最低15℃以上、その他の地域では13℃以上の室温を保つことが目標です。これにより、低温がもたらす健康被害を未然に防ぎます。

  2. 快適性の向上

    • 室内の温度ムラを減らし、どの部屋でも均一な快適さを実現します。特に、暖房効率の良い設計によって、家全体の住み心地を向上させます。

  3. 省エネルギー性能の向上

    • 冷暖房に必要なエネルギー消費を削減し、エネルギー効率を最大限に引き上げます。これにより、家庭のエネルギーコスト削減と環境保護の両立を目指します。

  4. 環境負荷の軽減

    • 高性能な断熱材の活用に加え、再生可能エネルギーの導入を推奨することで、住宅から排出される温室効果ガスを抑制します。これにより、持続可能な未来に貢献します。


断熱等級とHEAT20の違い


断熱等性能等級がUA値を中心に評価を行うのは、住宅の省エネ性能を明確に示し、設計者が基準に沿った取り組みを行いやすくするためです。しかし、実際の住み心地や健康への影響は、単なる数値では十分に評価できない面もあります。たとえば、UA値の基準をクリアしていても、窓やドアなどの開口部の断熱性能が不十分な場合、結露や室温のムラが生じて快適性が損なわれることがあります。
これに対して、HEAT20はUA値を目安として扱いつつ、それだけにとらわれないアプローチを採用しています。具体的には、室温やエネルギー効率といった実際の生活シナリオに基づいて評価を行い、住環境全体の質を向上させることを目指しています。この視点は、住む人にとってより実用的で効果的な評価方法といえます。


まとめ

住宅の断熱性能を評価する方法として、断熱等性能等級とHEAT20はそれぞれ異なる視点を持っています。

  • 断熱等性能等級: 主にUA値に基づき、省エネ性能の基準を示すシンプルな指標。

  • HEAT20: 健康的で快適な住環境を実現するため、具体的なシナリオを重視した包括的な指標。

どちらも住宅性能を向上させる上で欠かせない基準ですが、それぞれの特性や目的を正しく理解した上で活用することが、理想の住まいを実現する鍵となります。UA値だけに依存せず、住み心地や健康面も考慮したバランスの取れた視点が大切です。

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