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住宅の断熱性能で守れる命:ヒートショックを防ぐために


はじめに

冬場、暖かいリビングから寒い浴室やトイレへ移動するたびに感じる体への負担。その「寒暖差」が、私たちの健康にどれほど影響を与えているかご存じですか?
特に高齢者を中心に、冬場の温度変化が原因で発生する「ヒートショック」は命を脅かす大きなリスクとなっています。この記事では、ヒートショックとは何か、そしてこれを防ぐために私たちができることについて詳しく解説します。


ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす現象です。
特に冬場、暖房の効いたリビングから冷えた浴室や脱衣所に移動すると、血管が急激に収縮し、体への負担が増大します。
ヒートショックは誰にでも起こり得る現象ですが、特に高齢者や持病のある方にとっては致命的なリスクとなることが多いのです。


冬場は特に気を付けたいヒートショック

※出典:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所(東京都老人総合研究所)資料(2011)

月別の入浴中の心肺機能停止者数を示すデータでは、12月から2月にかけて急激に増加することが分かっています。
実際に、冬場のヒートショックによる死亡者数は交通事故による死亡者数を大きく上回ることが報告されています。
ヒートショックのリスクを減らすには、まずこの現状を正しく理解し、適切な対策を講じることが必要です。


室内が寒すぎる日本

WHO(世界保健機関)は、住宅内の居間の温度を18度以上に保つことを推奨しています。しかし、日本の多くの家庭では、冬場の室温がこれを大きく下回ることが一般的です。

※出典 国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進事業調査
結果 


「冬の平均リビング室温(在宅中)」のデータを見ると、意外にも北海道や新潟県などの寒冷地は室内が暖かく、多くの都府県で18度を下回っており、これがヒートショックを引き起こす一因と考えられています。


じゃあどうしたらいいの?

急激な温度変化を避けることが、ヒートショックのリスクを軽減する第一歩です。今すぐできる対策としては脱衣所と浴室を小型の暖房器具で温める、お風呂の温度を40度以下にするなどがあります。
これらに加えて、根本的な解決策として有効なのが、住宅の断熱性能を高めることです。

※出典(冬季死亡増加率) 厚生労働省「人口動態 統計2014年」都道府県 別・月別から地図化        ※出典(高断熱住宅普及率) 総務省 都道府県別でみる住宅状況 ~住宅及び世帯に関する基本集計(確報値) を地図化


「冬季死亡増加率」と「高断熱住宅普及率」のデータを見ると、寒冷地で高断熱住宅が普及している地域では、冬季の死亡リスクが低い傾向が見られます。一方、温暖な地域で高断熱住宅の普及率が低い場合、死亡リスクが高いことが分かります。


終わりに

ヒートショックのリスクを減らすためには、温度差を減らし、家全体を暖かく保つことが重要です。そのためには、高性能な断熱材の使用や窓の断熱性能向上など、住宅の断熱性能を改善することが有効です。

では、具体的にどのように断熱性能を高めれば良いのでしょうか?次回の記事では、住宅の断熱改修の具体的な方法や、国や自治体の補助金制度について詳しく解説します。これを機に、自宅の断熱性能を見直し、安心・安全な冬を過ごすための第一歩を踏み出しましょう。

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