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ありえない奴隷志願者と会った話

先日、TinderをしていたところTinderにしては珍しくSM志願者がいた。

完全にMで、相手から虐められたいというような内容だった。

私もそのような相手が欲しかったので、ライクすると即座にマッチングした。


LINEの会話は弾んだ。

どのようなプレイをしたいか、どんな道具を持っているのか話すと楽しくて、やりたいことは大体一致するようだった。

ビンタや鞭は当然されたいらしいし、飲尿もしたいと言っていた。

何より、無理やりされたい、相手の好きなようにされたい、なんでもできる、従いたいと言っていた。

やがて実際に会う段取りがついたので、会ってみることにした。

SMは繊細なので、はじめは会って話すだけの方がいいかと思って聞いたが、相手は初めからホテルとのことだった。

会って話してみると思いの外常識人で、普通に話は楽しかった。

ホテルに着いて、はじめは手を触ったり、頬を撫でたりして、そのうち膝枕をさせた。

彼の口に指を入れた。感じているのか、目が震えて、下が膨らみ出した。

口枷と首輪は事前に持っているのをしっていたので、持って来させた。

嵌めてみる?と聞くとそうしたいと言ったので、どちらも装着した。

なんでもビンタをされたいとLINEでしきりに話していたので、何発かビンタをしてみた。

これがなかなか力加減が難しくて、思ったより力が入らない。

と段々、相手の表情が曇っていくのが目に見えて分かった。

やりすぎたかと思って、口枷を外し、大丈夫?と聞いた。

相手は思考停止しているようで、何も話さなかった。

今日は嫌だったらやめてもいいよというと、今日はもう帰りましょうとのことだった。

なぜか、ものすごくショックだった。

自分自身を否定されたような気がしたからだ。
 

今まで散々SM話をして、あれをして欲しいこれをして欲しいといろんな要望を聞いたうえ、わざわざ時間とお金をかけて会いに来たのだ。

それなのに、ものの1時間足らずで解散になった。

でもSMは繊細だから、相性が合わなかったのは仕方がないと思った。

また別の人を探さないといけないと思うと途方もない道のりのように感じた。

だが、ありえなかったのはその後だった。

ショックで、商業施設の階段に座り込んでいた私に一通のラインが来た。


以下全文コピー

「今日はごめんなさい。
人して好きって思えないと
したいって思えなかったです...。

具体的には
・洗っていない指を口に入れる
・プレイ前にシャワーしない
・人前でタバコを吸う
がとても嫌でした...。

最低限の配慮がなってないなって思いました。信頼できません。

次の相手を探すときは
気をつけてくださいね。」

??????

ん?待って、何で私がケチつけられなくちゃいけないの?

私は途端に怒りを通り越して呆れた。
そして何かが莫迦らしくなって頭がすっとなった。立ち上がって歩き出した。

無理やりされるのが好き、相手のすることならなんでも従う、好きなようにして欲しいと言ったのはどこのどいつだっただろうか?

何が好きで、何が嫌なのかは分からないから、事前に話し合うつもりでいたのに、ホテルでいいと言ったのはどこのどいつだっただろうか。

仮にそういうのが嫌なら、事前に指摘すれば良かったのでは?

それとも細かいことまでは言わなくても分かってもらえると思ったのだろうか。

私はお前のお母さんではない。

無理やりされるのは好きです。でも洗ってない指を舐めさせられるのは嫌いです。

好きなようにしてください。でも事前にシャワーを浴びるのは当然です。

こういうことだろうか?全くもって自己中心的すぎる。

主従を履き違えている。


特にタバコに関しては人前で了承を取らず吸うことはない。この時もきちんと聞いた。
相手が嫌ならもちろん吸わない。

なのにこの有様。奴隷志願のくせに、ケチの付け具合は一丁前だ。


プレイの前提として嫌なことは嫌で話し合うこともできたはずだ。

その時は何も言わず、別れた後にケチをつけるのはどういうことか?

たしかに私は初心者だったかもしれない。
だが相手も主従は初めてなのだ。

相手は、したいことを理想のまましてくれる主人でないと受け入れられないのだろう。

だが、初めのプレイから理想のままなんて言うのは至極稀だ。

色々様子を見ながら、良かった事と嫌だったことを振り返って関係を作っていくのがSMのやり方なのではないのだろうか?

私が間違っていたら誰か教えてほしい。

口先では散々ご立派なことを言っておきながら、飛んだ我儘を言う迷惑男だったのだ。


ありえない思いだ。時間を無駄にした。

しばらくSM界隈からは手を引くかもしれない。

だがいい勉強かもしれない。こんなこともあるのだとまだ若いうちに学べたのだから。

私がしていたのは主従ではなかった。

ただ1人の我儘に付き合わされただけだったのだ。

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