あれはナンパだったと思いたい。

私は今までナンパをされたことがない。

と思っていたが、よく考えたら20年くらい前にそれっぽいのがあったなぁと思ったので

今回は自分の名誉の為にも、ナンパされたことがあると言いたいがためのお話。

それはひどく雪が降った元旦の夜の出来事。

友人らとの年越し飲み会の帰り道、ひとりでボーっと信号を待っていると
男がいきなり声をかけてきた。

「寒いですね~」

キャッチの声には振り向きもしない私だが、ご近所付き合いなどでよく交わされるこの言葉に私は返事をしてしまった。

「そうですね。」

するとその男はこう言った。

「肉まん半分たべます?」

男は手に持っていた肉まんをおもむろに半分に割って渡そうとしてきた。

(なんだこの男は。いきなりフレンドリーだぞ!)

動揺する私を気にもせず男は話を続けた。

男「一緒に話をしてるのに、僕だけ食べてるのも悪いな~と思って。」

一緒に話?会話という会話もしてないぞと思ったが私は丁寧に断った。

私「お腹いっぱいだから大丈夫ですよ。」

信号も青に変わり、私は会釈して立ち去ろうと歩きだした。
しかし、なぜか肉まん男も並んで歩きだし話しかけてくる

男「今日は飲み会だったんですか?」

なんであんたにいわなきゃいけないのよと心で叫んだがグッとこらえて答えた。

私「ええ、まあ。」

すると男は聞いてもいないのに自分の話をしだした。

その話の内容は
彼は26歳で俳優を目指していること、

昨日は一人で大晦日どらえもんスペシャルを見て感動して泣いたこと、

これから友人の家でお雑煮を食べること、

無職で生活していることを知った。

私は無職と知り、非常に気になった。

私「どうやって生活しているんですか?」

つい質問をしてしまった。

男「いや~、サバイバルな生活をしていますよ。今日ここに来るのも、警察にお金を借りて来たんですよ。まあ、そのお金で肉まんを買っちゃったんですけど、半分食べます?」

またしつこく進められた。

(何をやってるんだ。この男は・・・。)

私が引いていることなど気づくわけもなく、彼は続けてこう言った。

男「実はね、こうやって普通に話をしてますけど僕、逆方向なんですよ。」

私「え!!!それじゃあ私はこれで!」

私は会釈して足早に歩きだした。足早というより、もう走っていた。

するとうしろの方から、肉まん男が大声で叫ぶ声が聞こえてきた。

男「ちょっとーー!今新年会でたくさん飲み会があるから、そのとき誘いますよーーー!ねっ!!友達いないんでしょー?一緒に飲みに行きましょうよーー!友達いた方が楽しいですってーー!!!」

なんで友達がいないことになってんだよ。

あ、ナンパってこういうやりとりで合ってますよね?

それにしても、警察にお金を借りてる男に可哀想に思われるとは。。。

あれから20年以上経っているが、彼はまだ俳優を続けているのだろうか。
今となっては何もわからないが、警察にお金を借りてそのお金で肉まんを買って食べている生活ではないことを祈りたい。

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