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土星の襲来


藤原氏との決別を経て、私はフィンランドの北部にあるオウルという都市を訪れた。私がフィンランドを訪れるのは5回目だったが、最近は首都のヘルシンキだけでなく、いつも違う都市に行ってみたいと考えている。昨年の夏にはトゥルクという西部の都市を訪れた。そこで今回は、北部でも比較的大きな都市であるオウルに滞在することにしたのだ。

オウルは大きな都市といっても、ヘルシンキに比べればとても小さく、1日半もあれば、主な名所は回りきってしまう。私は、この静かな街でフィンランドの暗さと静寂に包まれて、1人神聖な気持ちで年越しをしようと決めた。そして、とても神聖な気持ちでホテルのベッドですやすや寝ながら新年を迎えたのであった。(ちょっと寝ようと思って、起きたら午前2時だった。)

カフェと見間違えたオウル城

私は旅行前に、ちゃっかりしっかり藤原氏以外のフィンガイとのデートの約束も取り付けていた。ここで基本的なことを話しておきたいが、私がフィンガイと知り合う手段はマチアプのみである。そんなわけで彼(以降鍋ちゃんという)とも当然のようにマチアプでマッチしたことがきっかけでメッセージのやりとりを始めた。とは言え私は藤原氏にfocus onしていたので、頻繁にメッセージのやりとりをしたわけではないが、なんせイケメンだったし、メッセージの感じからしていい人そうだったので会うことを決めた。

そして、約束の2日前には、鍋ちゃんからメッセージが来て、君を家に招待してフィンランドの伝統的な鍋料理を振る舞うつもりだと伝えられた。え、いきなり家に行くの?とちょっと尻込みしたが、とにかく最近の私は何でもやってみるをモットーにしているので、鍋ちゃんの提案を受け入れることにした。

だが、鍋ちゃんから体調不良のお知らせが届いたのは次の日のことである。熱が下がればコーヒーは飲みに行けるかもしれないと言う鍋ちゃんに対し、いやいや安静にしていておくれと伝え、お家デートの話は立ち消えてしまった。鍋ちゃんが本当に体調不良だったかどうか真偽のほどは未だに不明である。

これで藤原氏、鍋ちゃんと立て続けにデートの約束がなくなり、私はしょんぼりしてしまった。そして、薄暗いオウルの街を一人彷徨いながら神に祈った。どうか素敵なフィンガイを私に届けてはくれませんでしょうか。

薄暗いオウルの街を彷徨う。

神が願いを叶えてくれることを信じて、私はマチアプを開いた。私が使っているマチアプは女性が完全優位で、男性がマッチングできる事はとても少ないと聞いている。そのためか、数百人ものフィンガイからいいねやメッセージは届いていたのだが、いまいちピンとくる人はいなかった。ちょっと何様かと言う感じではあるが、私は半分やけくそになって、別にタイプでもないある1人の男性にメッセージを返してみた。その男性こそがそう、土星(仮称)である。

つづく


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