1965年に締結された日韓請求協定によってそれ以前の請求権は全て清算されたが、いまだに「完全かつ最終的に解決したのは国家間の請求権だから、日本は原告に補償すべきである」という声が根強い。今回は「個人請求は残っているのか、残っていればそれはどのような権利なのか」をテーマに解説いたします。
「個人請求権」とは
韓国側の主張で「日本は国会で『個人請求は残っている』繰り返し答弁してきたではないか」というのをよく耳にします。根拠にしているのが以下の国会答弁です。
条約により「外交保護権」は放棄したが、「個人請求」は消滅させていないという説明です。じゃあ「個人請求権には何が含まれるの?」「個人請求権ってなに?」ってなりますよね。韓国側は個人が無条件に補償を受けられる権利と理解しているようですが、果たして本当にそのようなものなのでしょうか。言葉の定義をしっかり確認しましょう。柳井局長は別の答弁で「個人請求権」をこのように説明しております。
つまり「個人請求権」とは日本の裁判所に訴えを起こすことであり、決して無条件で支払いを認めるという権利ではないということです。少し考えたら当たり前ですよね。裁判を起こせば必ず原告が勝つ権利なんてこの世にはありません。日本の最高裁も個人請求権について以下ような判断を示しております。
ちょっとややこしいですが、「請求権の放棄」とは個人の権利を消滅させるという意味ではなく、日本に対して裁判を起こし「その訴えを認める」という権利を消滅させることであると最高裁は説明しています。つまり92年の行政と同じ説明を司法が繰り返しているのです。
実は韓国も個人請求権を理解していた
1962年に韓国から「対日請求要綱」というものが日本に提出されました。簡単に言うと請求書をベースに離婚の財産分与が話し合われたというイメージです。この対日請求要綱には下記のような項目があります。
この請求項目について会談で以下のようなやり取りがありました。
韓国は「日本の裁判所で審議することを認めてほしい。徴用工問題は韓国で処理するから個人が主張すること自体出来なくなる」と説明しておりました。
請求権協定は人権に基づく解決方法
さらに韓国側は以下を援用して「日本の言い訳は国際人権規約、国際法違反である」と反論しています。
この規定により韓国側は「日本に強制労働させられたのだから、日本が賠償責任を負わなければならない」と主張しています。しかし人権規約にはこのような規定があります。
この条項は「締約国は、国内の個人の人権を尊重しなければならない」と説明しています。つまり韓国国民は、韓国政府が補償しなければならないという事です。日韓請求権協定は個人補償以上の経済援助を提供し、国民の問題はそれぞれの国で解決しましょうと合意した条約です。人権規約が人権のルールブックなら、請求権協定は人権を重視した解決方法であると言えます。
まとめ
・「個人請求権」とは裁判を起こす権利
・「個人請求権」とは訴えを認める権利ではない
・個人が補償を受ける権利は消滅していないが、日本が補償する義務は消滅している
・韓国は個人請求権を理解していた
・日本は国際法を遵守している
・請求権協定は人権に配慮した解決方法