第3回 アートライティングテキスト 前田梨那《stampman》 手紙 by Y.M
君が興味を持つであろう作品を観たので筆を執った。
きみもお馴染みの、あのギャラリーに展示される その作品は、たて2m×よこ1mくらいほどの大きさだ。平面作品といっていいだろうが、カーテンのようだといえばわかりやすいだろう。展示方法もカーテンを思わせるものだ。
全体に無彩色、白と黒だ。黒は強くなく、ベタ塗りがないのはもちろん、霧吹きで吹いたように柔らかく、薄い。これが背景で、太いボーリングのピンの輪郭線のような形状が、大小さまざまに数限りなく描かれている。最も大きなものは、最も小さなものの100倍くらいの大きさがあるだろう。輪郭線は2種類ある。黒い線と、白・黒・白で構成される線だ。
太いボーリングのピンと私は書いたが、これは人間だと思う。白い煙の中に人型(ひとがた)が無数に描かれている。そんな印象だ。そして、足がたくさんあるヒトデのようなものが3つほど見える。
ここまで書いたところで、この世のものではない様子が書かれているように思うかもしれない。だが、禍々しさは感じないんだ。人型の形状が穏やかに感じられる。黒が柔らかなことも、そう思わせるのかもしれない。
私は、これは作者の意識の中を表したのではないかと考えた。大きな思い、細かな思い、横に並ぶものもあれば大きな思いに内包される思いもある。足がたくさんあるヒトデのようなものは、太陽=喜びだろうか。中央の縦ラインに大きな人型が並ぶように見えるのは、作者のまっすぐ通った意思、全体的に霧がかかっているようなのは、これらの思いをつなぎ止めているもの。そんな風に思った。
さて、この作品、君ならどのようにみるだろう。