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ギャラリーaaploit―岡田佳祐個展「地球の音と色の距離」作品について by S

2024年1月28日まで開催されている岡田佳祐「地球の音と色の距離」個展を観る。
ギャラリーaaploit の壁面の全てを使って大小20数点の作品が展示されていた。どの作品も色鮮やかで、ギャラリーに足を一歩踏み入れた瞬間、賑やかに溢れる色の洪水に圧倒されていたところ、背後から「これらは、道端で拾った石をすりつぶした顔料で描かれています。」と静かで穏やかに話かけられた。作家岡田氏だった。

使用している顔料について話を聞くことができた。自ら作る顔料の発色をより鮮やかにさせるために、すりつぶす石の粒子の大きさや、混色など研究を重ねたという。粒子の大きさによって我々に見えてくる色が異なってしまうそうだ。また、自身で顔料を作るがゆえに、より美しい色の状態の顔料をそのままキャンバスにのせていると語る。そして、顔料を作る際、石に含まれるガラス質など様々な成分は、はるか昔の生物の一部かもしれないと思い、その時代の生物を調べ描くようになったそうだ。
個展作品の数ある中で最も大きな(1303×1940)作品《地球の波動ノ曲》にもいくつもの古代の生物が描かれている。生物以外にも植物のような造形のもの、水やマグマを思わせる色面や大地のような面、さまざまなものが渾然一体となってキャンパスに溢れている。全てがつながり関係しあっているように見える。
生命が誕生した数十億年前の地球ならば当然、主体も客体もない、言葉が生まれる前の地球である。天と地、植物と動物、水中と大地、など言葉がない時代はその区別なく、ただそこにある一つなのだ。
作家は顔料制作において石の粒子が持っている記憶の情報を読み取り、色と形でその時代の在りようを可視化してくれている。いや、石の粒子だけではない。我々が今ここに生きて存在しているということは、人類誕生の20万年前の情報が体のどこかDNA の中に記憶されている訳で、それも無意識となって作家の筆を動かしているのかもしれない。
また、右下に描かれている生物は、黄色、白、紫、赤、黒などの顔料で細い数ミリの線が幾重にも重ね書かれている。その重ねられた線の数は、数億年という遡る年数をカウントしているかのように多く緻密に書かれている。しかし、単色でなく重ねられた何色もの顔料はそれぞれに色の波動を持ち、そこに描かれているものたちと共鳴し壮大なシンフォニーを奏でているようだ。
ギャラリーに入った瞬間、賑やかに感じたのはこのシンフォニーが鳴り響いていたからに違いない、それは音のない、視覚と肌で感じとるシンフォニーだ。作品タイトル《地球の波動ノ曲》を目にしたとき確信した。作家は壮大なシンフォニーを演奏している指揮者であると。

石から生まれた色は波動を持ち、その色で描かれた生き物や植物など作品の表象の各部が放つ波動とが共鳴し「生命のシンフォニー」「エネルギーのシンフォニー」というようなダイナミック音楽を作り上げている。
また音のないシンフォニーは作家と作品と鑑賞者と全てを一つにし、さらに共鳴しナラティブに多くの楽章を生み繋げ奏でられてゆく。しかし考えて見れば、原初の地球も今の地球も同じなのだ、太古の生物は石に変わったように地球は変化こそしてきたが地球からは何も失われてはいない。今も「生命のシンフォニー」は地球上に鳴り響いている。全ては遠い記憶ではなく、道端の石の中に我々の体の中にある波動を共鳴させることでそのシンフォニーが現在でも聞こえてくるのではないかと思えた。そんなことを考えさせられた岡田作品であった。

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