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#015 「芸祭をいっしょにまわったよ」の回【月刊aaploit】

月刊aaploitの#015は芸祭をまわったときの話、見てきたその日の夜に収録を行った。後から聞き返してみると、斉藤はかなり疲れていた様子だった。そんな疲れた様子が気になったものの、作品に関する説明が少なかったという反省が去来する。従ってnoteで補足しておこうと思った。

ヘッダーイメージにあるのは、鈴木萌絵さんの作品、だるまにペイントをしている。実際には存在しない風景を描いている。小さなだるまと少し大きめのだるまにペイントを行っており、これは実験段階であるという。

©鈴木萌絵
©鈴木萌絵

描かれる風景は鈴木さんが実際に訪れたことがある場所が重ねあわされている。日本とカナダの風景のようだけど、実際には無い場所。だるまを中心にくるくる周りを回っていると、自分がどこに居るのか、一瞬眩暈がする。夢想の世界に引き込まれるような感じ。

鈴木さんのだるまのアナウンス

清水アンナさんは6人で展示をしていた。「蝉が鳴ったら花火しよう。」

鳴いたらではないところに人工的な表現を感じる。あるいはヴァーチャルでの余韻だろうか。新型コロナのロックダウン中は、外出が憚られ、蝉の声を聴くことがなかったような気がする。同じ部屋、同じ景色で、そういえば蝉の声を聴いていないな、なんてテレビを見ながら思ったことがあった。文の接続、鳴ったら花火をする。鳴らなかったら花火ができない。もしくは花火の準備は整っていて、今か今かと点火を待っているのだろうか。ここでひとつ疑問が起こる。花火は通常は夜にやる。ただし、蝉は夜は鳴かないだろう。昼間なのか、時間の経過を見越しているのか。

清水さんは中型から大型の作品を数点、展示していた。

©清水アンナ

中でもキャンバスを切った作品は新しい領域、意欲的な作品だと感じる。

©清水アンナ

清水さんの作品は色使いが興味深いと捉えていたが、切られたキャンバスが、画面の内側から外側へと思考を接続させる。

そして、フィリップ・パレーノ風だと言っていた作品は、こまつあすかさんの作品

木の台にゴザを敷いて、座布団と碁盤をおいてある。碁笥には紙粘土で作ったと言う碁石が入っている。碁石だけでなく碁盤、碁笥も造作したものだろう。パソコンが置いてあるが碁盤の方に傾いていて、作品の一部ではあるが、どのような意図なのかは不明である。テープで囲まれたエリアに銀色の棒と針金でくくられたペンがある。その周りに画用紙が重ねておかれていて、銀の棒にはケーブルが繋がっている。
碁石を置くと、銀の棒が回転し、それによって針金の先につけられたペンが動いて画用紙にドローイングをする。碁盤の上に銀色のラインが入っており、電極だろうかと思い、いろいろと試してみるが制御できるようではない。実際は傾けられたPCのカメラが画像認識をしている。カメラが距離を測っており、それによってペンが動く仕組みらしい。写真は無いが指先につける心拍センサーがスイッチになっている作品も提示されていた。

©こまつあすか

センサーを使って動作する。鑑賞者を含めた環境からのフィードバックによるドローイング、物質の作用によって共鳴する仕組み。

ただ、ポッドキャストでも話をしていたように、仕上がりが雑であり、美的に回収していない点が、とても面白い。第一、囲碁である必要はない。

フィリップ・パレーノは、人の存在をも含めて環境について考えさせた。そしてモノ同士のコミュニケーションを見せた。

こまつさんの視点と見せている世界は、とても独創的であり、思考の飛躍がある。今後も作品を見続けていきたいと思えた。

畠山蘭さんの作品はバクだった。この写真の他にもう一点、大型の作品が提示されていた。

©畠山蘭

今年の初めだったと思うけど、最初に見た畠山さんの作品は背中にスクラッチを描いた作品だった。その後、トルソーにホースを通した作品を(写真のみだけど)見た。背中は自分の体でありながら、自分の目で直接見ることができない。他者によって背中を見られる。あるいは合わせ鏡だろうか。いずれにしても人物の背中、それも引っ掻き傷がある。それを見せられた時に、自他を強烈に意識させられた。
今回もその流れかと思っていたら、バクの絵とドライブ中の魚の絵であり、少し意表をつかれた。バクの背中の丸みが気になった。

©畠山蘭

渡部真衣さんの作品、日本画なのだけどインスタレーションとして作品を提示している。現在4年生で次の卒業制作展で展示する。

©渡部真衣

ポートレートに興味があるということ。ビーズのカーテンの作品の両隣の作品も渡部さんの作品である。証明写真をもらって、インタビューした後にドローイングを施しているという。

インスタレーションは、一坪くらいの広さの空間を立方体で区切っていて、ビーズのカーテンがかけられている。ビーズのカーテンには顔が描かれており、その奥にも顔がある。ビーズのカーテンを揺らすと、顔は揺れて、表情が現れるようである。

この作品は夏季コンクール作品選抜展にも出されていた。その際と今回とで、ステートメントがアップデートされたという。

そして、卒業制作に向けて作品も更にアップデートされるという。

そろそろ卒業制作のシーズン、新しい才能に出会えるのがとても楽しみ。



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