「型」と「インプロ」
AAPAのクラスでの参加者とのふりかえりの時間に話題にあがった、「型ワーク」の目的について書いてみたいと思います。
スタジオでもオンラインでも、私たちのクラスは「インプロビゼーション(即興)」のダンスにつなげていくことを目標にしています。
そのため、いま自分のからだと動きはどうなっていて、何を感じているのか「自分の内側から丁寧に観察する力」を大切にしています。
何を内側から感じるのか、というのは難しい意味ではなくて、
「動いたとき、あぁここが伸びるな」
「ここがなんだかうまく動かないな」
「気持ちいいな、痛みがあるな」
そういう感覚的なことです。
その自分のからだを観察する始まりとして、誰もが自分で繰り返し動くことができる、短くシンプルな動きのパターンを練習する「型ワーク」を行っています。
この型ワークの動きは、Cカーブやスパイラル、骨盤ゆらしなど、抽象的にならず、具体的に動き方を伝えられる動作のことです。
ここで心に留めておきたいのは、型ワークはあくまで自分の動きに気づくための道しるべのようなもので、その動きが「きれいにできるようになること」が目的ではないです。
型ワークをひとつの基準としてもつことで、自分の動きとの違いが見えて、自分はここが動いていないのかとか、こんなところも動くんだ、と気づくことができます。
そうした気づきのプロセスを通じて「からだへの意識を深めること」が、型ワークの目的です。
そして型ワークの動きの流れに馴染んできたら、今度はその道すじを基準に、自分で少しずつ変化を加えて、新たな枝葉をひろげる作業(インプロビゼーション)が始まります。
それまで取り組んできた型の流れをもとに、
頭の向きを変えてみたり、
腕の流れを変えてみたり、
骨盤の使い方を変えてみたり、
ほんの少しの変化を加えて、その変化によって、からだのどこがまた新たに動き出すのか、丁寧に観察していきます。
この「少しの変化」から始めることを、大事にしています。
まずはどんな変化が起きたのか、「自分で観察できる量と速さ」で動きをひろげることから、始めてほしいと思います。
そうした積み重ねが、インプロビゼーションで踊るダンスの時間に、必ず活きてきます。
このように「動いてみる⇔観察する」ことを繰り返して、自分のからだのなかの道や選択肢を増やしていくことが、型ワークの大切な目的です。
「型の動きができるようになること」を目的にしてしまうと、上手くできないと感じたときに「あせり」や「難しさ」につながったり、逆に、もうこれはできるようになったと思うことで、型ワークを繰り返すことが「退屈」に感じてしまうかもしれません。
型の動きは、正しくできるようになることが目的ではなく、それ以外の無数にある動きを見つけるための手段だということを、忘れずにいてほしいと思います。
何か聞きたいことや困ったことがあれば、またクラスの時間に直接聞いてもらえたら嬉しいです。
永井美里 / 上本竜平