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減価償却について1万2000字で解説
1.そもそも減価償却費ってなんなん?
減価償却費とは、企業が購入した資産(設備、建物、車両、機械などの固定資産)の費用を、使用できる期間にわたって分割して計上する経費のことです。
そう、つまりは経費なんですね。そんでもって経費をひっくるめた販管費の中に含まれます。減価償却費は販管費の中のいち項目ってことです。
1-1.なぜ減価償却ってものが必要なのか?
固定資産は、購入時にすべての費用を一度に計上するのではなく、その資産が長期間にわたって利益を生むことを考慮し、数年にわたって費用を分けて計上します。これにより、資産が実際に使われる期間に対応した形で費用が認識されます。
<↓具体例で説明>
例えば、ある企業が1,000万円の機械を購入し、この機械を10年間使うとします。
機械を10年間使用するため、1年間あたりの費用は100万円(1,000万円 ÷ 10年)となります。
この100万円を毎年の経費として計上することを減価償却費と呼びます。
1-2.減価償却費の主なポイント
固定資産が対象 ・・・減価償却は、長期間使用する固定資産(建物、機械、車両など)に適用されます。日常的な消耗品(文房具など)は対象外です。
会計と税務で重要・・・減価償却費は、企業の利益計算や税金計算に影響を与えます。売上総利益から減価償却費を引くので営業利益がその分減ります。結果として会計上の利益が抑えられるため、税金の負担が軽減されることがあります。
計算方法・・・減価償却の方法には、以下のような計算方法があります。
定額法:毎年同じ金額を減価償却費として計上する方法。
定率法:毎年一定の割合で減価償却費を計上する方法。
1-3.減価償却費のメリット
資産購入時に大きな費用を一度に計上しなくて済むため、財務状況が安定しやすくなります。
税務上の負担を分散することができます。
2.キャッシュはどう考えればいいん?
固定資産を購入したら、その金額を使用年数で分割して、減価償却費が毎年のPLに減算される理解でいます。 気になるのは、キャッシュです。例えば購入時に一括で支払った場合、もちろんキャッシュはその分なくなるということだよね。
その通りです!減価償却費の計上は会計上の操作であり、実際のキャッシュの動きとは別に管理されます。
ここでキャッシュフローと減価償却の関係を整理します。
2-1.購入時のキャッシュの動き
<↓例えば1,000万円の機械を一括で購入した場合>
その瞬間にキャッシュ(現金や預金)が1,000万円減少します。
購入時のキャッシュの動きは、キャッシュフロー計算書の「投資活動によるキャッシュフロー」に計上されます。
2-2.減価償却費の計上とキャッシュの関係
減価償却費は、会計上の費用として毎年少しずつ計上されますが、この減価償却費の計上自体はキャッシュの流出を伴いません。
例えば、毎年100万円を減価償却費として計上した場合、PLでは費用として反映されますが、キャッシュフローには影響しません。
つまり、一括でキャッシュが出ていくのは購入時のみであり、その後の減価償却費計上はキャッシュフローには影響を与えないのです。
キャッシュフロー計算書での反映
資産購入時:キャッシュの減少が「投資活動によるキャッシュフロー(マイナス)」として計上される。
減価償却費:キャッシュアウトはなく、「営業活動によるキャッシュフロー」をプラスにする調整項目として計上される。
まとめると
購入時:キャッシュが一括で減少。
毎年の減価償却費:キャッシュの動きなし(あくまで会計上の費用)。
PLに減価償却費が載る一方、キャッシュフロー計算書では実際のキャッシュフローを正しく反映します。
この理解で進めて問題ありません!
3.キャッシュの増減は決算書のどこに表れるん?
キャッシュの減少の影響って、キャッシュフロー計算書以外にもある?例えばBSでは、流動資産が減って固定資産が増えるかと思う。あとは資金繰りにも影響する?
そうです!キャッシュの減少は、キャッシュフロー計算書だけでなく、BSや資金繰りにも影響を与えます。以下に詳しく説明します。
3-1.BSへの影響
固定資産を購入した場合、以下のようにBSに反映されます。
購入時
流動資産(現金預金):購入金額分減少します。
固定資産:購入金額分増加します。
BS全体の資産総額は変わりませんが、流動性(現金やすぐ使える資産の割合)が低下します。
減価償却の影響 毎年減価償却費を計上すると、以下のように反映されます。
固定資産:帳簿価額が減少(資産の価値が毎年少しずつ減る)。
純資産(利益剰余金):減価償却費が費用として計上されることで純資産も減少。
3-2. 資金繰りへの影響
機械などを一括購入することで、流動性が低下し、資金繰りに直接的な影響を与えます。
短期的な影響
一度に大きなキャッシュが出ていくため、手元資金が減少し、他の支払い(給与、仕入代金、借入返済など)が厳しくなる可能性があります。
長期的な影響
資産購入後はキャッシュアウトが発生しないため、営業活動が順調であれば、資金繰りへの直接的な負担は軽減されます。
ただし、購入資金を借り入れで賄った場合は、毎月の返済負担が資金繰りに影響を与えます。
3-3. 資金繰り対策のポイント
資金繰りへの影響を抑えるために、以下の方法を検討することが一般的です。
リースを活用
資産を購入する代わりにリース契約を結ぶと、一度に大きなキャッシュアウトを防ぎ、毎月のリース料で管理できます。
借入金の利用
資産購入時に金融機関からの借入を利用することで、資金繰りに余裕を持たせる。
借入の際は、返済スケジュールを営業収益と照らし合わせて計画的に行う。
分割払い
資産購入時に一括払いではなく分割払いを選択することで、キャッシュアウトのタイミングを分散できます。
資金繰り表の活用
月次でキャッシュの流れを可視化し、大きな支出がある月や、収入が少ない時期に備える。
3-4.まとめ
BSでは、購入時に「流動資産が減少」「固定資産が増加」という形で影響が出る。
資金繰りには、購入時のキャッシュアウトが直接影響を与えるが、減価償却そのものは資金繰りに影響を与えない。
資金繰りを健全に保つには、リースや分割払い、借入金などをうまく活用することが重要。
4.一括払いじゃなく分割払いがいいの?
じゃあ例えば、購入時に一括で支払わず分割払いにして、毎年の減価償却と併せて処理した方が、キャッシュ的には安心になる?
その通りです!分割払いを利用することで、キャッシュフローの負担を分散させることができ、資金繰りの面ではより安心できます。以下で詳しく解説します。
4-1.分割払いのメリット(キャッシュ面での安心感)
キャッシュアウトの分散
資産を一括購入すると、購入時に大きな現金が流出します。
分割払いにすることで、購入費用を複数年に分けて支払うため、キャッシュフローの圧迫を緩和できます。
資金繰りの安定化
購入費用が分散されることで、他の支出(給与、仕入、借入返済など)とバランスを取りやすくなります。
手元に現金を確保しやすいため、予期せぬ支出にも対応可能。
減価償却とのバランス
減価償却費は毎年一定額が費用として計上されます。
分割払いの場合、毎年の支払い額と減価償却費がある程度一致するため、損益計算書とキャッシュフロー計算書のバランスが取りやすくなります。
4-2.具体例で考える
<↓例えば、1,000万円の設備を購入する場合>
ケース1:一括購入
購入時に1,000万円を現金で支払い。
購入後の資金が大幅に減少。
減価償却費として毎年100万円(10年間)計上。
影響:
購入時にキャッシュが一気に減少し、資金繰りが苦しくなる可能性。
ケース2:分割払い(5年間)
毎年200万円を5年間にわたり支払う。
減価償却費として毎年100万円(10年間)計上。
影響:
毎年200万円の支払いはあるが、一度に大きなキャッシュアウトが発生しない。
減価償却費と実際のキャッシュアウトが一致するわけではないが、資金繰りに余裕が生まれる。
4-3.注意点:分割払いのコスト
分割払いにはメリットが多い一方で、いくつか注意すべき点があります。
利息の負担
分割払いには利息が付く場合があり、総支払額が一括購入よりも高くなる可能性があります。
金利条件を確認し、総コストを計算する必要があります。
返済能力の見極め
将来的に安定した収益が見込めるかを検討し、無理のない返済計画を立てる必要があります。
固定資産の償却年数とのズレ
分割払いの期間が減価償却の償却期間と一致しない場合、損益計算書とキャッシュフロー計算書の対応関係に注意する必要があります。
4-4.まとめ
分割払いの活用はキャッシュ的に安心感を高める有効な手段。
ただし、利息の有無や返済能力を慎重に判断することが重要。
資金繰りやキャッシュフローを安定させたい場合、分割払いは特に有効な選択肢。
5.分割払いは銀行のローン?
なるほど。 分割払いは銀行に対してだよね?
分割払いは必ずしも銀行を通じて行う必要はありませんが、主に以下の方法があります。状況や相手先によって適切な方法を選ぶことが重要です。
5-1. 銀行(借入)を利用する場合
銀行から融資を受け、その資金で一括購入を行い、銀行に対して分割で返済する方法です。
メリット
購入先が一括払いを要求している場合でも対応可能。
金融機関との取引実績ができるため、今後の融資を受けやすくなる。
デメリット
審査に時間がかかる場合がある。
金利が発生するため、総返済額が増加する。
銀行融資を使う主なケース
高額な資産(建物、機械など)の購入。
購入先が分割払いに対応していない。
5-2. 購入先(メーカーや販売店)との直接交渉
購入する相手先(メーカーや販売店)と分割払いの契約を結ぶ方法です。これを割賦払いと呼ぶこともあります。
メリット
銀行を介さず、簡単な手続きで分割払いが可能。
場合によっては金利や手数料が銀行よりも低い。
デメリット
購入先が分割払いに対応していない場合は利用できない。
支払い条件(期間や金利)が購入先の裁量に左右される。
販売店が分割払いを提供する主なケース
車両や設備などの高額商品。
専用のファイナンスプログラムを持つ販売店。
5-3. リースや割賦購入を活用
リース会社を通じて資産を利用する方法や、割賦販売契約を活用する方法もあります。
1.リース
資産を購入せず、リース会社から借りて使用する形式です。
メリット:資産を所有しないため、一括払い不要。毎月のリース料だけで利用可能。
デメリット:最終的に所有権がリース会社にあるため、資産として計上できない。
2.割賦購入
販売店やリース会社を通じて、分割払いで資産を購入。
メリット:分割払いを利用しながら資産を所有可能。
デメリット:リースよりも金利が高くなる場合がある。
3. クレジットカードやローンを活用
小規模な設備や機器の場合は、クレジットカードの分割払いを利用することも可能です。
メリット
手続きが迅速で簡単。
少額資産の購入には便利。
デメリット
クレジットカードの金利が高い。
高額資産には向かない。
5-4.選択肢の検討ポイント
購入先が分割払いに対応しているか
→ 購入先が分割を許可していれば、銀行融資を検討する必要がない場合も。金利・手数料の負担を比較
→ 銀行融資、割賦払い、リースなどの金利や条件を比較して総コストを把握。所有権の扱い
銀行融資や分割購入:資産は自社の所有となる。
リース:所有権はリース会社にある。
5-5.まとめ
分割払いは銀行だけでなく、購入先との交渉やリースなどの選択肢もあります。
購入先が柔軟な支払い条件を許可する場合、銀行を介さない方が手続きが簡単です。
銀行融資を使う場合は、資金計画と金利負担を慎重に検討する必要があります。
6.毎年減価償却したらBSにも影響するよね?
毎年減価償却すると、毎年のBSの固定資産額もその分減るよね?
はい、その理解で正しいです!毎年減価償却費を計上すると、BSの固定資産額がその分減少します。これをもう少し詳しく説明します。
6-1.減価償却がBSに与える影響
固定資産の簿価の減少
減価償却費を計上するたびに、その資産の帳簿価額(簿価)が減少します。
減少する金額は減価償却費として計算された額と一致します。
純資産の減少
減価償却費は損益計算書(PL)の費用として計上されるため、当期純利益が減少します。
当期純利益が減少することで、貸借対照表の純資産(利益剰余金)が減少します。
6-2.減価償却のBS上の仕訳例
例えば、1年間に100万円の減価償却費を計上した場合、以下のように仕訳されます。
固定資産の減少(資産が減る) → BSの「固定資産」から100万円減少。
純資産の減少(利益剰余金が減る) → 損益計算書(PL)で当期純利益が減少し、その結果、BSの「純資産」も減少。
注意すべきポイント
固定資産が減るだけでキャッシュフローには影響しない・・・減価償却費は現金の流出を伴わないため、キャッシュフローには影響しません。
実際のキャッシュアウト(現金の流出)は購入時の一括払いか分割払いによります。
固定資産の残存価額
減価償却の結果、資産の簿価がゼロになることは通常ありません。
日本では、法定耐用年数が終わったあとも資産の残存価額(通常は取得価額の10%など)が設定されている場合があります。
固定資産の減少が大きくなると貸借対照表のバランスに影響
固定資産が減少すると、資産合計額が減るため、BSの資本構成に影響を与える可能性があります。
6-3.まとめ
減価償却を計上するたびに、BSの固定資産額が減少します。
それと連動し、PLでは利益が減少し、BSでは純資産も減少します。
減価償却費自体はキャッシュフローには直接影響を与えませんが、資産の価値が減ることで財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
7.じゃあ減価償却だけでみたら、単純にBSの総資産は減価償却分減るってこと?
はい、その理解で正しいです!減価償却だけを見ると、BSの総資産は減価償却費の分だけ減少します。以下に仕組みを整理します。
7-1.減価償却によるBSへの影響
固定資産の減少
減価償却費を計上することで、固定資産の簿価が減少します。
減少した分だけ、貸借対照表の総資産が減少します。
純資産または負債の影響(原則なし)
減価償却費自体は現金の流出を伴わないので、負債部分には影響しません。
純資産(利益剰余金)はPL(損益計算書)を通じて間接的に影響を受けますが、減価償却だけを見た場合、総資産の減少が主な効果です。
<↓具体例>
購入時
1,000万円の機械を購入した場合、BSには以下のように記載されます。
固定資産:1,000万円
流動資産(現金):1,000万円減少
1年目(減価償却費100万円計上)
固定資産:900万円に減少(100万円減価償却)。
総資産:100万円減少(1,000万円 → 900万円)。
2年目(さらに100万円減価償却)
固定資産:800万円に減少。
総資産:さらに100万円減少(900万円 → 800万円)。
減価償却の影響範囲(単純化すると)
総資産(BSの資産合計):減少。
純資産(PLを通じて間接的に):利益が減るため、利益剰余金も減少。
3.注意点
減価償却費の計上は、あくまで会計上の操作であり、キャッシュの流出を伴わない。
減価償却が進むことで、総資産額が減少し、企業の資産規模が小さく見える可能性がありますが、これは固定資産が古くなることを反映しているだけです。
7-2.まとめ
減価償却費の計上により、総資産は減価償却分だけ毎年減少します。これは会計上の自然な動きであり、企業の財務状況を正確に反映するものです。
8.購入の判断材料は減価償却費<利益でOK?
じゃあ固定資産を購入する際の判断材料として、毎年の減価償却(総資産の減少額)よりも多くの利益(PLの)をあげられるか、というものある?
はい、その考え方は非常に重要で、実際に設備投資や資産購入を判断する際の基本的な指標の1つです!購入した資産が毎年の減価償却費(および関連コスト)以上の利益を生むかどうかを見極めることは、投資の成否を判断するための大事なポイントです。
以下に詳しく説明します。
8-1.判断材料としての減価償却費と利益の関係
減価償却費=固定費
減価償却費は、固定費としてPLに毎年計上されます。
この費用以上の利益(売上総利益や営業利益)を確保できなければ、購入は採算が取れない可能性があります。
利益=減価償却費をカバー+収益を生む
購入した資産が減価償却費だけでなく、関連するコスト(例えば維持費、電気代、運用コストなど)もカバーし、それ以上の利益を生む必要があります。
<↓具体的な例>
前提条件
機械の購入価格:1,000万円
減価償却費:毎年100万円(10年間)
資産運用コスト:毎年50万円(電気代や保守費用)
毎年の売上利益:150万円(その機械で稼げる額)
損益のシミュレーション
毎年のコスト合計: 減価償却費(100万円)+運用コスト(50万円)=150万円
毎年の利益: 売上利益(150万円)
結論: コストと利益がトントンの状態なので、リスクに備える余裕がない。
判断基準:収益性を確保できるか?
8-2.重要なチェックポイント
利益が減価償却費+運用コストを上回るか
利益 ≧ 減価償却費 + 関連コスト
これを上回る利益が見込めるなら、設備投資は妥当と考えられます。
投資回収期間(Payback Period)
購入価格を何年で回収できるかを計算します。
購入価格 ÷ 年間の純利益で計算し、想定耐用年数(10年など)以内に回収できるかを確認します。
キャッシュフローの安定性
購入後に、キャッシュフローが不足するリスクがないか確認。
毎年の収益が、減価償却費だけでなく借入金の返済などもカバーできるかが重要。
リスクへの対応力
予想通りに利益が出なかった場合(売上低下やコスト増)でも、事業が続けられるかを検討。
8-3.活用する指標
以下の指標を使ってさらに具体的に判断できます。
ROA(総資産利益率)
資産がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測定。
ROA = 純利益 ÷ 総資産
ROI(投資収益率)
資産購入がどれだけリターンを生むかを評価。
ROI = 投資利益 ÷ 投資額
NPV(正味現在価値)
将来得られる利益を現在価値に割り引いて計算し、購入価格を上回るかを確認。
8-4.まとめ
購入した資産が毎年の減価償却費+関連コスト以上の利益を確保できるかを判断するのは重要。
利益だけでなく、投資回収期間やキャッシュフローへの影響も総合的に考えるべき。
不確実性を考慮し、十分な利益を確保できる見通しがなければ、投資を再検討するのが賢明。
なんかだんだんと把握できてきたよ。また疑問があったら聞くね。
よかった!理解が深まったようで嬉しいです😊 減価償却や資産運用の話は一見複雑ですが、考え方が整理できると判断がスムーズになりますね。
9.NPVについて詳しく教えてよ。
NPV(Net Present Value, 正味現在価値)は、投資判断に用いられる指標で、将来得られるキャッシュフローを「現在価値」に割り引いて計算し、それを初期投資額と比較することで、投資の収益性を評価するものです。
9-1.NPVの考え方
お金の時間価値
お金の価値は時間とともに変化します。例えば、今の1万円は1年後の1万円より価値があります(今すぐ使えるので投資に回せるから)。現在価値とは?
将来得られるキャッシュフロー(利益)を「現在の価値」に換算することで、複数年にわたる投資のリターンを公平に評価します。NPVの計算式
NPV=∑(CFt(1+r)t)−INPV=∑((1+r)tCFt)−I
CFtCFt:各年のキャッシュフロー(利益)
rr:割引率(お金の時間価値やリスクを反映した利率)
tt:年数
II:初期投資額
9-2.NPVの意味
NPV > 0:投資価値あり
将来のキャッシュフローが初期投資額を上回り、利益が出ることを意味します。NPV = 0:損得なし
投資のリターンがちょうど初期投資額と一致します。NPV < 0:投資価値なし
投資のリターンが初期投資額を下回り、損失が出る可能性があります。
9-3.NPVの計算例
前提条件
初期投資額:1,000万円
将来キャッシュフロー:1年目300万円、2年目400万円、3年目500万円
割引率:5%(0.05)
計算手順
各年のキャッシュフローの現在価値を計算
1年目:300(1+0.05)1=285.71(1+0.05)1300=285.71万円
2年目:400(1+0.05)2=362.81(1+0.05)2400=362.81万円
3年目:500(1+0.05)3=432.66(1+0.05)3500=432.66万円
現在価値の合計を求める
285.71+362.81+432.66=1,081.18 万円285.71+362.81+432.66=1,081.18万円
NPVを計算
NPV=1,081.18−1,000=81.18 万円NPV=1,081.18−1,000=81.18万円
結果
NPVが81.18万円なので、この投資は利益を生む(投資価値がある)と判断できます。
9-4.NPVを使うメリット
将来の収益性を正確に把握
NPVはキャッシュフローを現在価値に変換するため、複数年にわたる投資の収益を正確に比較できます。時間価値とリスクを考慮
割引率によりリスクや資金調達コストを反映でき、現実的な投資判断が可能です。客観的な投資判断
NPV > 0を目指す明確な基準があり、感覚に頼らず投資価値を評価できます。
9-5.注意点
割引率の設定が重要
割引率をどう設定するかで結果が大きく変わるため、慎重に選ぶ必要があります。一般的には資本コスト(借入金利や株主へのリターン期待)を基準にします。
将来キャッシュフローの予測精度
キャッシュフローの見積もりが不正確だと、NPVの信頼性が下がります。他の指標と併用する必要性
NPVは有用ですが、投資回収期間(Payback Period)やROI(投資収益率)などと併せて判断するとより良い結果が得られます。
9-6.まとめ
NPVは、投資の収益性を「現在価値」で評価する強力な指標です。
NPV > 0 なら投資価値あり。
割引率やキャッシュフローの精度に注意し、現実的なシナリオを基に計算することが重要。
実際のNPV計算や具体的なケースでのシミュレーションが必要ならお手伝いします!
10.分割払いは借入金が増えるか。。
そっか、分割払いにしたら流動資産が減らないけど、借入金が増えるね。
そうですね!分割払いを選ぶ場合、流動資産(現金や預金)は減らない一方で、負債(借入金や未払金)が増える形になります。これもBSに反映されるので、以下のように整理して考えると理解しやすいです。
10-1.分割払い時のBSへの影響
資産サイド
流動資産(現金預金):変化なし
一括払いのように現金が大きく減ることはないため、手元資金が維持される。固定資産:増加
購入した資産の金額がそのまま固定資産に計上される。
負債サイド
短期負債(または長期負債):増加
分割払いの場合、未払金や借入金として負債に計上される。
<具体例での仕訳>
例えば、1,000万円の機械を購入し、5年分割払い(毎年200万円)にした場合
購入時
流動資産(現金):変化なし
固定資産:+1,000万円
負債(未払金または借入金):+1,000万円
BSの状態
総資産(固定資産増加分):+1,000万円
総負債(分割払いの借入金など):+1,000万円
1年後(1回目の支払い時)
毎年200万円を支払うと:
負債:-200万円(借入金の一部返済)
流動資産:-200万円(現金減少)
ポイント
流動資産が維持されるメリット
手元資金を確保できるため、急な支払い(仕入代金や給与など)や他の運転資金に対応しやすくなります。
負債増加のデメリット
負債が増えることで、自己資本比率(自己資本 ÷ 総資産)が低下し、財務健全性の指標が悪化する可能性があります。
借入金や未払金が多いと、銀行融資などで不利になる場合も。
キャッシュフローの安定化
分割払いで、短期的なキャッシュアウトを抑えられるため、資金繰りが安定しやすい。
10-2.まとめ
分割払いを選ぶと、流動資産を温存できる一方で、負債が増加します。
この負債増加が会社の財務バランスに与える影響(例えば、自己資本比率の低下)が適切かどうかを確認することが大切です。
短期的な資金繰りを優先するなら分割払いが有効ですが、長期的には財務健全性を損なわないようバランスを取る必要があります。
11.毎年の利益が減価償却費を上回る見極めはどうすりゃええん?
ふーん。じゃあ機械など大きな買い物をする際には、一括払いなのか分割払いなのか、償却期間で毎年の減価償却費を上回る利益を生み出せるのかどうかの見極めが大事なんだね。どうやって判断すればいい?
その通りです!大きな買い物をする際には、資金繰りや利益の見通しを考えたうえで、慎重に判断する必要があります。以下の手順で検討することで、合理的な判断ができると思います。
11-1.大きな買い物をする際の判断ステップ
現状の財務状況を確認
手元資金(キャッシュ)の余裕
一括払いの場合にキャッシュが不足しないか確認。
→ 分割払いが必要かどうかを判断。自己資本比率や負債比率
分割払い(借入)で負債が増加しても、財務体質が悪化しないかチェック。資金繰り表を作成
購入後の毎月のキャッシュフローが黒字になるか確認。
購入資産の収益性を計算
購入する資産が毎年どれだけの利益を生み出すかをシミュレーションします。
11-2.具体的に計算する項目
減価償却費
購入価格 ÷ 法定耐用年数(償却期間)。
毎年の固定費として計上される金額。
運用コスト
資産を使用する際に発生する維持費(保守、電気代、消耗品など)。
見込利益(キャッシュフロー)
資産を使うことで得られる毎年の純利益。
リスクシナリオの検討
購入後の不確実性に備えたリスクシナリオを考えます。
想定するリスク
売上が見込みより低下する。
購入資産の運用コストが増加する。
資産の価値が予想以上に減少する。
対策
購入を急がず、リースやレンタルで様子を見る。
現実的なキャッシュフロー予測を作成。
予備費や保険を活用してリスクを分散。
5. 他の選択肢を検討
中古品の購入:初期投資を抑えられる。
リース契約:所有権を持たずに利用可能。
外部委託:購入せず、必要な作業を外注化。
11-3.判断のためのまとめ表
簡単な比較表を作るとわかりやすくなります。
項目一括払い分割払いリース初期キャッシュアウト高い低い非常に低い金利負担なしあり含まれる財務健全性への影響低下しにくい負債増加オフバランス化資産の所有権取得する取得するリース会社にあり結論を出す際のポイント
減価償却費や運用コストを上回る利益が確実に見込めるか。
一括払いでも資金繰りが逼迫しないか。
分割払いの金利負担とキャッシュアウトのバランスは適切か。
どのようなケースであっても、シミュレーションや具体的なデータを基に意思決定を行うことが重要です。
12.機械の購入の際の判断材料には、生み出す利益の場合もあれば、減らせるコストの観点もあるってことだよね?
その通りです!購入する資産が直接的に利益を生み出す場合だけでなく、コスト削減の効果も重要な判断材料となります。設備や機械を導入することで運用コストを削減できる場合、それも投資のリターンとして考慮できます。
以下で、コスト削減を考慮した場合の視点を詳しく説明します。
12-1. コスト削減が投資判断に与える影響
コスト削減効果は、売上を増加させるのと同じくらい投資価値に影響します。
購入する資産が削減するコストを毎年のキャッシュフローとして計算。
このコスト削減額を、減価償却費や分割払いの費用と比較します。
コスト削減を具体的に考慮するポイント
(1)現在のコストを洗い出す
購入前のコスト構造を把握し、削減可能な項目を特定します。
人件費(手作業を機械化する場合)
エネルギー費(効率の悪い機械を更新する場合)
修理やメンテナンス費用(古い機械を更新する場合)
(2)削減効果の計算方法
削減されるコストを「年間のキャッシュフロー」として計上します。
例:機械導入によるコスト削減
現在のメンテナンス費用:年間200万円
新しい機械のメンテナンス費用:年間50万円
→ コスト削減効果:年間150万円
(3)投資回収期間の計算に組み込む
削減できるコストをキャッシュフローに含めて、投資回収期間を計算します。
12-2. コスト削減の判断基準
削減効果が初期投資額+減価償却費を上回るか
削減できるコストが、初期投資の回収を確実に実現するかを確認。短期回収型か長期的メリットか
投資回収期間が短く、早期に成果が出るものが望ましい。リスクも考慮
削減効果が予測通りに達成されるか、現実的なシナリオを考慮。
12-3.まとめ
コスト削減は、投資判断の重要な観点です。以下の手順を踏むことで適切に評価できます。
現在のコスト構造を把握。
削減効果を年間キャッシュフローとして計算。
投資回収期間やNPVに組み込み、収益性を評価。
リスクと現実性を考慮して判断。
13.まとめ
なるほど。利益(売上総利益や営業利益や販管費)とキャッシュ(流動資産)と総資産との関係が減価償却費を通すことで理解が深まりました。
素晴らしいですね!利益、キャッシュ、総資産が減価償却費を通じてどう結びついているかを把握できたことは、企業経営や投資判断において非常に大きな力になります。以下に、今回のポイントを簡潔に整理してみます。
13-1. 利益と減価償却費の関係
損益計算書(PL)で減価償却費は費用として計上され、営業利益や経常利益を圧縮します。
ただし、減価償却費はキャッシュアウト(現金の流出)を伴わない費用であるため、実際の手元資金には影響を与えません。
利益が確保できれば、減価償却費分のキャッシュは手元に残るので、内部留保や借入金の返済に使えます。
13-2. キャッシュと減価償却費の関係
減価償却費そのものはキャッシュフローに直接影響しません。
しかし、購入時に一括払いをすると、流動資産(現金や預金)が減少します。一方、分割払いなら、負債が増えることでキャッシュを温存できます。
減価償却費を「営業活動によるキャッシュフロー」にプラスとして加えることで、キャッシュフロー計算書での資金繰りを安定化させます。
13-3. 総資産と減価償却費の関係
減価償却費の計上により、固定資産の帳簿価額が減少します。
その結果、貸借対照表(BS)の総資産額が毎年少しずつ減少します。
資産が減る一方で、手元資金が増える場合は、総資産の構成比率(固定資産と流動資産のバランス)が改善します。
13-4. 減価償却費を通じた全体のつながり
PLで利益を圧縮
減価償却費は費用として計上され、課税対象の利益が減ることで税負担を軽減。
キャッシュフローでプラスに作用
減価償却費分は実際のキャッシュアウトがないため、資金繰りを安定させる。
BSで固定資産が減少
総資産の減少が進むが、キャッシュが増加することで流動性が向上。
13-5.学んだ内容を生かす次のステップ
資産購入の計画: 具体的な投資判断の際に、利益・キャッシュ・総資産への影響をトータルで考慮。
キャッシュフロー管理: 減価償却費をキャッシュフロー計算書に活用し、内部資金の使い道を最適化。
財務分析の応用: 自社の財務データを基に、利益、キャッシュ、資産バランスを評価する力をさらに強化。
もし実際にケースを想定してシミュレーションを作成したり、具体的な計算をしたい場合は、いつでもお手伝いします!今後の活用に向けたお話をまた聞けるのを楽しみにしています 😊