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2006_横浜のお嬢様_part3.../ 1.婿の癖...

登場人物(2006年時点)
幸田麗華  幸田商事 社会福祉LPF社長    1976年(30歳)
幸田耕一  KGC建設 社長         1970年(36歳)
江戸かす美 幸田美術館 準備室長             1968年(38歳)
角田 美香 美術キュレーター 準備室長  1972年(34歳)
木名瀬 愛 日仏食品DM 麗華と愛人関係     1980年(25歳)
幸田大介 輸入商事 会長           1940年(63歳)
岸野友一 KGC建設 建設部長       1971年(25歳)
高橋 直美 KGC建設設計部長 耕一と愛人関係 1970年(36歳)
大田 直美 幼稚園 副園長       1970年(33歳)

みなとみらい駅の幼稚園着工は9月の1週目だった。

施工はKGC建設が行い、設計監理は同設計部が行った。

つまり耕一の不倫相手だった高橋直美もその地鎮祭に出席していたが、麗華とは最後まで視線を合わせなかった。

その間に居た、耕一は終始居心地が悪い思いをしていた。

地鎮祭が終わると、麗華達はさっさと帰った。

設計部の高橋直美は岸野や基礎工事担当者と打ち合わせをしていたが、耕一の姿を見ると、彼らから離れて耕一の横に来た。

高橋直美「どうしたの、最近お見限りね...」

耕一「いや、別に。今は不味いよ。麗華に気付かれた...」

高橋直美「えっ、そうなの...」

それを聞くと、神妙な顔をして関係者のところへ戻った。

地鎮祭から戻ると、直美は向こうのガラス壁の社長室に居る耕一にLineを入れた。

直美「バレたの...」

耕一「先週...」

直美「暫く、合わない方が良いね...」

耕一「ああ...」

レスが続かない。
何より、あの麗華にバレたのが痛い。
どうりで先ほどの地鎮祭で自分に視線を合わせないし、話もしなかった。

暫く、耕一や麗華とは距離を置くしか無い。

幸いなことに、現時点で麗華と仕事や打ち合わせをする予定が無いのが、幸いだ。
耕一と逢えないのは、辛いが今は我慢するしか無いと思う。

男より仕事に集中しようと思った。

男は裏切るが、仕事は裏切らない。

ディスプレイには、MM69美術館の基準階のプランがある。まず、これをやらないと…。

直美は、トラックボールを操作し始めた。

一方、耕一はガラス壁の向こうから刺さってくる直美の視線を感じながら、敢えて視線を交わさなかった。今までなら、視線を交わし微笑んだが..。

先日の寝室での麗華は怖かった。まるで全てを知っているかのように、尋問してきた。直美の件は、バレていると思い。直ぐに謝った。

だが、角田美香との関係は、まだバレていないと悟ったので、最後まで第2の浮気性相手の存在を否定した。

それも暫くは、お預けかもしれない。

それにしても、端から見て美人妻と3人の子供達に恵まれている自分だが、どうしても押さえられない欲求がある。

身近に、若い綺麗な子が居ると、どうしても誘いたくなる。
あの誘うときのドキドキ感、逢うとき、ベッドへ誘うとき、あの緊張感はたまらない。

妻には、貴方のそれは病気じゃなくて、癖だから直らないと言われた。

流石に、自分の事を一番理解していると、変な納得をしたが、正に妻の言う通りだろう。

自分にとって、他の女性を誘うことは、浮気とは少し違う気がする。それ自体が、自分の人生や生活の一部であり、それ無くしては、生きる意味も薄れる。それを妻はある意味、理解している。

こうして、妻から直美との関係を責められて、逢えなくなっても、それはそれで楽しい。逢えないことも楽しいのだ。つまり何時かは逢えると心の何処かで思っているのだろう。

その上、こうして妻から責められること自体も嬉しいし、楽しい。

責められるとは、愛されている証拠だからだ。

責められれば責められる程、嬉しい。

反対に、責められず無視されたら、悲しいだろう。それが一番辛いのでは無いかと思う。

だから、先日の自分を責める妻の顔を見ながら、綺麗だと思っていた。

怒る妻の顔を見て、何て綺麗なんだろうと感心している夫なんて、他に居るだろうか…。居るわけは無いが、それが自分なのだ。

ガラス壁の向こうの直美がディスプレイに向かって居る姿をチラ見しながら、そう思っていた。

それが、2006年8月の出来事だった。



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