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1996_横浜のお嬢様part1.../3.奥多摩道の残雪

登場人物とあらすじ
 
会澤耕一 大手住宅会社 営業所 建築技術者 1970年(26歳)
渡邊雪絵 恋人、大手住宅会社 営業所 事務 1965年(31歳)
久野幸恵 婚約者、地方銀行 行員 窓口   1971年(25歳)
幸田麗華 輸入商事の跡取り娘 女子大生   1976年(20歳)

岸野友一 大手住宅会社 営業所 営業    1971年(25歳)
白川萌奈 大手住宅会社 営業所 事務    1974年(21歳)
幸田大介 輸入商事 社長          1940年(56歳)

あらすじ
会澤耕一は、大手住宅会社の建築技術者で、出先の営業所付きで現場施工管理を担当している。その営業所の同僚として、事務の渡邊雪江や営業の岸野友一がいる。耕一と雪江は、密かに交際をし始めたが、故郷の親から見合いを勧められ久野幸恵と会うことになる。

人生は、たった一言で大きく変わることもある。

耕一のそれは、その一言だった。

その時二人は、利根川の岸辺に停めた車の中フロントガラスに広がる夕日を見ていた。
そんなふうに、いつもの様に話をしていたが、いつの間にか、重い空気が二人に纏わり付いていた。

それは、幸恵の話から始まった。

最初、なんでそんな話をし始めたのか。幸恵が唐突に始めたのだろうが…。

幸恵「銀行に片思いの人が居て、でも相手にして貰えなくて..」

耕一「…」そんな話題に、返事も出来ない。

大体、そんなカチンとくるような話題をどうして持ち出すのか。

頭にきた耕一は
耕一「以前、年上の女と付き合ったことがある」と言ってしまった。

その年上の女が雪絵で、今も付き合っているとは言わなかったが..。

そんな話で、その日は、二人とも盛り下がりで別れたが、その日を最後に二人は二度と会うことは無かった。

多分、それがその二人の縁の限界だったのだろう。

それとも、幸恵が別れる理由を探していたのかもしれないが、今となっては、どうでも良いことだと思われた。
その時は、そうは思えなかったが…。
 
その日から、連絡も途切れ、2週後に親から、電話があった。

父親「先方から、婚約を取りやめたいと連絡があった。」
耕一「えっ…。」
父親「耕一、お前何か先方に話をしなかったか?」
耕一「…いや」
父親「なにか人妻と付き合ったことがあるとか」
耕一「…」
父親「なんでそんな話をするんだ」
耕一「…」
父親「一方的な破棄なら、結納金の倍返しだが、お前のそんな話では、それも言えないかな..」
耕一「..」

電話は、それで終わった。

余りに唐突な終わり方に、耕一は呆然としていた。
少なくとも、結婚という二文字まで、話が進んでいたのに、突然のこの仕打ち。

気が付いたら、車を持ち出し、深夜の奥多摩道を走っていた。

小雪が舞い散り、道路路肩に、残雪が残る道を走っていた。

夏タイヤなのに、夜のそんな状況で走るなんて、普段ならまず走らないだろうが…。

半分やけ気味だったのだろう。下向きのヘッドライトが照らすのは、黒く汚れた残雪が積もった路肩だけだった。

良く、スリップも事故も起こさず、帰宅出来たものだ。
 
翌朝、営業所へ出勤すると、いつもの様に雪絵が笑顔で挨拶を返してきた。

もしかして、自分はこの女性と結ばれる運命にあるのだろうかと、その時は思った。
 
それが、1998年2月の出来事だった。
 

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