見出し画像

2004双子姉妹の恋 合本後編(第14~26話)

あらすじ

双子の姉妹、彩・舞は両親ですら見分けられない程うり二つ。その二人がそれぞれ意中の恋人と結婚し、それぞれの家庭を築いていくが、彼女たちの弟も様々な困難に遭う、姉妹達は彼を助けて行く。姉弟の物語を描きます。

この合本 後編は文字数が約21,000あり、約1時間45分程掛かります。



登場人物

友部 彩(あやか) 双子の姉 理科大 薬学部4年 1982年
友部 舞 双子の妹 ハウスビルダー 設計担当 1982年

友部 友梨 彩・舞の母
友部 幸太 彩・舞の父
友部 聖(あきら)  彩・舞の弟 1985年

山下 敦 ハウスビルダー 設計担当 1976年
山下 翔 舞・敦の長男  2007年
高山 耕一 製薬会社 新薬開発研究 1972年
山下 康隆 耕一の父親
山下 結衣 耕一の母

山辺早奈江 不動産会社 営業課長 1980年
本田 香織 不動産会社 営業担当 1986年
半田 幸恵 つくば市要の地主    1975年
半田 充 幸恵の長男 TX大自然学類学生 1986年
岩井 憲一 つくば市要の地主2 
山辺 光太郎 早奈江の父
山辺 恵   早奈江の母
幸田 三郎 早奈江の前夫 化学製品会社勤務 1980年

14.不動産会社を設立

3月になり、新居のパーティーが開かれた。両親や、施工した野村社長、職場の友人たちが招かれた。

何せ、広いので、一度に40人を呼んだ。

一番困ったのは、玄関ホールに下足が置ききれなくなって、急遽仮設の棚を設置した。

床は無垢板なので、素足でも気持ちが良い。

それも客達から好評だったし、暖炉の周りに居着く客も多く、そこも渋滞した。

中庭や前庭にウッドデッキがあり、そこもバーベキューやテーブルが出され、野外パーティーの雰囲気も好評だった。

4人が挨拶したが、盛り上がった客は、一番初めに挨拶した耕一の話を聞いたら、あとはザワついた。

それでも、彼らの自邸を気に入った客の何人かは、敦や舞に設計してほしいと言ってきた。

それもあり、敦と舞は、ハウスビルダーから独立し、設計事務所を設立することを考え始めた。

そこで問題になったのは、やはり土地、敷地の手当てだった。

既に建設用地を持っている施主は良かったが、そうで無い人も多かったからだ。

舞「敷地が用意できないのが、ネックになって建築できないのも問題よね。そこを解決しないと」

敦「定期借地権。ってあるよね」

舞「ある期間だけ、借地して建築するが、その賃料を地主へ支払う制度でしょ」

敦「それをお義母さんの土地で出来ないかな。まだ耕作する予定の無い土地があると聞いたけど」という話があり、友梨に相談した。

それなら、開発行為として借地可能な分譲地をしたらという話になった。

県条例に「開発行為の技術的基準」があり、それに準拠するがそれ以上のレベルを目指した。道路、公園、緑地公園、交通施設用地等と上下水道、雨水処理等の開発工事が必要だった。

宅地面積は、広めに取りたいので、300坪1,000平米を基本とした。

それに菜園・耕作地・緑地として同じく1000平米の非宅地を確保した。

ある意味普通の宅地の4件分で1棟を建てるという、贅沢な住環境である。

10区画を販売することにした。

この事業者として、設計事務所の他に不動産会社を設立した。

会社名は友部不動産株式会社とし、代表取締役には友梨が就き、取締役に舞、敦が就いた。

営業部に山辺早奈江を採用した。

前職でも不動産会社に勤務しており、社交的で明るい性格で有能との評判だったが、実際勤務しても契約を3件纏めるなど、優秀である。

モデルハウスとして、彩・舞の自邸が活用された。

当初耕一が渋ったが、彩が積極的に関わりたいと言うので、同意した。

舞「お姉ちゃん、来週の日曜日、新規のお客が見学したいので、お願いします」

彩「はい、良いわよ。どうなの契約は...」

早奈江「順調で、既に4件契約してまして、あと3件契約見込みですね」

舞「開発行為も来週許可が下りて、来月には工事が始まる予定」

敦「業者は地元の小亀の予定です」

彩「楽しみね、緑が多い宅地なんて、アメリカならシカゴ郊外の住宅地みたいね。50年後に欅やポプラが大木に成って、素晴らしい街になるね」

早奈江「今までの日本の住宅地の環境が悪すぎなんですよ、田園調布や神戸の芦屋・西宮が高級住宅地で有名ですが、一般住宅地で緑が多いとか、住環境が良い宅地開発が売りになるようにしたいですね」

耕一「そういうディベロッパーに成るわけだね」

早奈江「元々つくば研究学園は、そういう優良な住宅地を目指していたので、そういう需要は一定数あると思います」

舞「そうね、宅地を買うと言うよりも、そういう良好な住環境に生涯住む権利を買うみたいな」

敦「不動産会社も軌道に乗せようね。僕たちの理想に実現に」

それが、2006年3月の出来事だった。

15.なぜ水曜日は休み

前職がディベロッパーの営業職だった山辺早奈江は、前評判通りのやり手だった。
入社直後に3物件を契約し、その後3物件も契約見込みである。

早奈江は、年齢的には敦の4つ下で舞より2歳上である。
婚歴はあるが、今は独身で子供はいない。
何より美人である、彩や舞とは違った、正統派の美人であり、それがやり手と言われる営業上手なので、どうもその業界では知られた存在らしい。

4月のとある夕方、つくば市のプールで泳ぎに行った耕一は偶然、早奈江に出会った。

耕一「あれっ、どうも...」

早奈江「ああ、高山さんもここのメンバーですか...」

耕一「はい、もう2年前から」

早奈江「お茶でも飲みますか...」

耕一「良いですね。近くに紅茶専門店があるので、どうですか...」

早奈江「ああ、分かります。じゃー、そこで」

西大通りに面している紅茶専門店ハナミズキで、二人お茶を飲んでいる。

耕一「そうか、今日は水曜日だから早奈江さんは、お休みなんですね」

早奈江「そうなんです、水曜日は不動産関係は昔から休みなんですよ。どうしてだか、分かります...」

耕一「はて、確かに営業職の休日は火曜・水曜日が休みが多いですね。…わかりませんね...」

早奈江「じゃー、ヒント。漢字ですよ...」

耕一「水曜日。水。みず…。あっ、分かった」

早奈江「分かったみたいですね」

耕一「ええ、水は流れる。案件が流れるのは、イヤだから。水曜日は、仕事をしない、じゃないですか」

早奈江「大正解です。流石ですね」

耕一「あはは、簡単ですよ」

早奈江「じゃー、私の出身地はどこだか分かりますか」

耕一「えっ、山辺さんの出身地ですか...当たったら、何か奢ってくださいね」

早奈江「分かりました。ヒントは無しですよ」

耕一「多分、関東...」

早奈江「正解」

耕一「じゃー、神奈川」

早奈江「おお、正解」

耕一「厚木市」

早奈江「おお、なんで分かるの」

耕一「ふふ、凄いでしょ。何を奢って貰おうかな」

早奈江「この先に窯焼きピザの美味しいイタ飯があるので、そこでどうですか」

耕一「ご馳走様です」

耕一と早奈江は、洞峰公園通り沿いにある、窯焼きピザのアミーチへ行った。

早奈江「ここの窯焼きピザは絶品です」

耕一「美人と一緒に食べたら、なんでも美味しいですよ」

早奈江「あら、そんなお世辞を言っても、何もでませんよ」

耕一「早奈江さんって、モテるでしょ」

早奈江「普通です。でも男運は余り良くないかな...」

耕一「僕なんか、直ぐ結婚したので、女運も何も分かりませんでしたね」

早奈江「耕一さんと彩さんは、仲が良くて良いですね。結婚は1度の方が良いですよ。私も何も分からず結婚して、失敗しましたからね」

耕一「大変でしたね」

早奈江「だから、もう自分で生きていこうかなと」

耕一「微力ながら応援しますよ」

早奈江「あら、嬉しい。じゃー、ワインは耕一さんの奢りね」
耕一「あはは、良いですよ」

この会食が、後で問題になるとは、二人とも思わなかった。

これが、2006年4月の出来事だった。

16.伏線

翌週の水曜日に、再び早奈江と耕一はプールサイドで出会った。

早奈江はまるで高校生の様な紺の水着だったが、そのプロポーションの良さは、隠せなかった。

耕一の視線も思わず、そちらへ行きそうなだが、踏みとどまり早奈江の瞳を見つめた。

早奈江「あら、耕一さんも素敵ね」

耕一、何が素敵なんだか、シカトして「今日も窯焼きに行きますか」

早奈江「今日はお酒飲みたいな。センタービルのラウンジはどう...」

耕一「ああ、良いですよ」

と、今回はカクテルラウンジになった。

早奈江「奥さんとはどうして知り合いに」と、ブルームーンに口を付けた。

耕一「ああ、彼女が学生時代にインターンシップで僕が指導担当に」とジンリッキーを飲み始めた。

早奈江「あら、それに手を出したのね」

耕一「ううん、それが微妙でね。あの姉妹、殆ど見分けが付かないでしょ...」

早奈江「確かに、よく似ていると言うより、瓜二つ、私も未だに見分けられないわね」

耕一「実は、僕も未だに無理ですね。それで、彩のつもりでデートしたら実は舞ちゃんだったとか..そういう事が、ありましたね」

早奈江「キスとかしちゃったの...」

耕一「いや、それは無かったから、良かったけど」

早奈江「ふーん、何だか危ない姉妹ね...」

耕一「そうですね、ある意味、手玉に取られて、気が付いたら、結婚に...」

早奈江「でも、彩さんは幾つの時なの...」と2杯目は、ジンフィズを頼んだ。

耕一「うぅ、21ですね。3年生の時にインターンシップに来ていたから...」

早奈江「でも、男を見る目はあったのね、耕一さんをゲットしたんだから...」

耕一「そう言う、早奈江さんの話を聞きたいですね...」とソルティドッグに口を付けた。

早奈江「えっ、私の話ですか...話が長いですよ...」

耕一「全然、良いですよ。彩は実家だし...」

早奈江「そうなの、それは私が大学1年の合コンで出会った彼の第一印象から、始まるのよ。
所謂、一目惚れかな、その時は、普通に話をしていたし、気が付いたら二人だけで話していてね。
だからお互いに気に入ったんだと思った。
2回目以降のデートも二人だけだった。
たまに、お互いの友人を交えてデートもしたけどね。
何回かダメになりそうな時もあったけど、いつも彼からそれとなく連絡が有って、続いた。
同じ学年だったから、二人で就活し、卒論も一緒に頑張った。
就職も別の会社だったけど、同期の仲間みたいなところがあった。」と、ビールグラスを一杯飲み干す。

耕一「今晩は、送って行きますから、呑んでください」

早奈江「そう、ありがとう。
で、働きだしてから3年目になんとなく結婚したのね。
お互いの実家にも行ったし、挨拶もきちんとしたわ。
同棲はしなかった。
2,3日お互いのアパートやマンションに泊まることはあったかな。
だから、なんとなく、結婚して5年したけど、子供も出来ないし、そのままの関係と生活がズーと続くのかと思っていたら、ある日。
彼が言うの『実は、好きな人が出来たので、分かれて欲しい』と、びっくりしたわ。
だって、私全然気が付かなかったから、あたしが鈍感なのか、仕事に夢中で彼のことに気を払わなかったからか、まー色々と原因はあると思う。
で、私もこんな性格だから、直ぐに分かれたわ。
少し、割り切れない気持ちはあったけどね。
で、現在に至るという話。」

耕一「うん、成る程」とマルガリータを頼んだ。

早奈江「私も、同じの、お願い」と。

耕一「でも、誰でもありそうと、言うと語弊がありますが...もしかしたら、早奈江さんじゃなくて、僕がその話をしていた可能性はありますよね」

早奈江「だからね、子供がもしいたら分かれないで、頑張ったかもしれない。耕一さんも早く、子供作った方が、良いわよ」

耕一「そうですか、彩と相談します」

その晩は、耕一と早奈江は、車を置いてタクシーで帰った。

但し、そのまま帰るには、惜しい気持ちがあったが、それを口にはしなかった。

これが、2006年4月の出来事だった。

17.新居の造園計画

彩・舞夫妻が春日の新居へ越してきて初めてのGWをどう過ごすのかを、4月中旬に4人で話した。

彩「GWは何処かへ行きたい?私達は、ガーデニングしたいんだけど...」

敦「そうですね、僕たちも来月、アオハダを植木屋が植えに来るので、準備したいんです」

舞「じゃー、お出かけしないで、ガーデニングね」

耕一「でも1度くらいは、バーベキューしますよね」

彩「じゃー、BQの仕込みは耕一さんの担当で良いかしら...」

舞「良いわよ、私達でやるから、お姉ちゃん達は、飲み物お願いね」

敦「ビールとスコッチがあれば良いですよ」

耕一「じゃ、それと僕がカクテル作りますよ」

西ウィングのリビングには、ミニカウンターがあり、カクテルも作れる様になっている。

だから外へ飲みに行く必要はないのだが、早奈江と外で飲んだのは、ある意味、家で飲めない事情があったのか、それとも...。

実は、ガーデニングについても、4人で案を練っていた。
それは、和風とか如何にも庭というのではなく、雑木が多い、自然林のような庭にしたいと、彩と耕一が言うので、舞達も同意した。
ただ、いきなりとというのでは、予算的にも大変だし、楽しみながら進めたいということなので、暫定で高麗芝を植えて、少しづつ植栽することにした。

そのGWの第1日目、BQの準備を始めている舞と彩。

舞「お姉ちゃん、先に言うけど、、実はね、どうも赤ちゃんが出来たみたいなの」

彩「産婦人科へ行ったの...」

舞「うん、3ヶ月目だって」

彩「おめでとう」

その後のBQはその話で持ちきりだった。
だからお酒は3人で、4人分は飲んだし、午後の作業は午睡の後、夫達が芝を植える下地を作った。

その夜の会話。

敦「妊娠初期は安静にしないとね」

舞「ありがとう。昼も夜も運動も暫くは、お預けね」

敦「我慢するよ。元気な母体と赤ちゃんの為にね」

舞「堪るとろくな事にならないので、それは任せてね」と敦の息子を咥え始めた…。

その東側の住棟では、

耕一「舞ちゃん、お目出たで嬉しそうだったね」

彩「そうね、結婚して1年半だからね。出来て良かったわ。甥か姪が出来るのよ」

耕一「僕たちも頑張らないとね」

彩「そうよ、頑張って」と耕一の息子を出して、刺激始めたら、彼は彩の太股を舌で舐め始めた…。

翌日は、4人とも前日の疲れもあり、遅く起きたので、ブランチになった。

耕一・彩のキッチンで朝食の用意を始めた。

このGWは4月29日から5月7日まで9連休なので、ロングバケーションである。午後から友梨達が遊びに来るので、その用意もしている。

午後、友梨達が遊びに来た。

舞「いらっしゃい、あれ、このワンちゃんどうしたの...」

幸太「お母さんが、欲しいというので、先週ブリーダーさんから譲って貰ったの」

毛足の長い、子犬が玄関から走ってきた。白・茶・黒の三色の毛並みでまだ小さくて可愛い。

彩「あら、可愛い」

友梨「この子は、シェルティーという犬種で、血統書付きの由緒正しき子よ。雌よ」

耕一「なんか癒やされますね。ワンちゃんも良いですね。名前は...」

友梨「エマよ。なんか耕一さんが気に入ったのかな」エマは耕一に纏わり付いて、彼のスリッパを咥えて、脱がせようとしている。

舞「耕一さんのフェロモンが気に入ったのね」

幸太「犬も人間と同じで、相性はあるので、好きな人と普通の人、嫌いな人はあるみたいだね」

彩「なんか、可愛いね。耕一さん、ウチも欲しいね」

耕一「お母さん、この子のブリーダーさんを紹介してください。今度、見学に行きたいですね」

友梨「そう、じゃー、連絡しておくわ」

それが2006年4月下旬の出来だった。

18.拡大する営業エリア

友部不動産会社の社長室に敦と早奈江が二人で打ち合わせをしている。

早奈江「平塚線と西大通りに挟まれたエリア、丁度国土地理院の東側ですが、半田さんという地主が持っている土地が、どうも宅地開発に転用されるというので、昨日半田さんに会ってきましたが、友梨さんのことも知っていて、当社の開発も知ってました」

敦「そう、見込み有りそう」

早奈江「ええ、先方は乗り気です。相続税対策もしたいと、農業より宅地へ転用したいらしいので」

敦「分かった、お義母さんと今度一緒に行くよ。ところで、スタッフの増強も必要だね。今、3名応募しているが、週末に面接したいけど、大丈夫...」

早奈江「はい、これが履歴書です…」

敦「目を通して置いてください…」

で、週末に面接した結果。2名採用することになった。

翌週の木曜日朝、採用された2名の紹介があった。

敦「今回、一緒に仕事をすることになったお二人を紹介します」

本田かすみ「本田かすみです。86年生まれです。水戸出身です。よろしくお願いします」

木村隼人「木村隼人です。80年生まれです。埼玉出身です。よろしくお願いします」

敦「ここは、不動産部門で、隣に設計事務所があります。山辺課長の下で、頑張ってください」と挨拶して、業務へ入った。

かすみが3日間、レクチャーするようだ。

敦の設計事務所には、4名のスタッフがおり、友部不動産会社はこれで5名体制になった。

その夕方、敦と早奈江が話している。

敦「どうですか、二人は...」

早奈江「今日はレクチャーしましたが、二人とも飲み込みは早いので、大丈夫だと思います」

敦「かすみさんは、前職で何かあったようですね…」

早奈江「慣れたら、少し聞いて、みますね…」

敦「当面は、半田さんの開発に集中してください…」

早奈江「そうですね。3町歩ありますからね。予算書はほぼ出来ています。
開発の構想図はいつ頃できますか...」

敦「今週末には持参できる様にします、今晩も残業かな..」

早奈江「そうですか、何か作りますか...」

敦「いや、後で舞に何か持って来させますから...」

早奈江「あら、奥さん大丈夫ですか...」

敦「そろそろ、安定期なので、動きたいと...」

要の案件は、不動産部門のターニングポイントになりそうなので、敦も早奈江も力を入れている。

単なる開発工事ではなくて、定期借地権を活用した、例の開発なので、優良不動産開発を売りにする会社の命運が掛かっているのだ、力の入れようも違う。

地主の半田氏は、土地を売却することなく、幸田不動産とその借地権契約をし、その賃料を取得する。

幸田不動産は宅地開発をし、建築条件付きで宅地と建築を終身賃貸契約する。

従い建築主は、建築費用と土地の賃料だけで終身戸建て住宅を手に入れることが出来る。

しかも、通常の敷地の約2倍の面積で、緑地や菜園も含まれるので、魅力的である。

3ヶ月後の9月に、地主の半田氏と契約することになった。

敦「今回は、ご契約ありがとうございます」

半田幸恵「友梨さんのお婿さんだから、安心しているわ。ご自宅も見せて頂いて、これまでの宅地開発と違うので凄く感激したわ、よろしくお願いします」

早奈江「半田さんのところも、素敵な住宅地になります。30年後に値上がりするような住宅地になりますよ」

敦「これまでの短冊形宅地じゃなくて、クルトザック型と歩行者専用道で歩車分離しますし、緑地や菜園スペースもあります。民間でこれだけの高品質な住環境は、他に有りませんよ」

幸恵「期待しているわ」

その晩は、関係者が集まり、懇親会となった。会場はつくば三井ビルの最上階の中華料理店である。

かすみが幸恵と話している。

かすみ「半田さん、これから長いお付き合いになりますが、よろしくお願いします」

幸恵「こちらこそ。本田さんは、独身...」

かすみ「はい、バツイチですが」

幸恵「内にも、息子がいるのよ、どう...」

かすみ「えっ、はい...」

幸恵「充、ちょっと、来て...」

幸田充「今回はよろしくお願いします...、充です」

かすみ「本田かすみです。担当させて頂きます」

その後、かすみと充はこれをきっかけによく会うことになった。

敦も早奈江も、大型物件の契約が終わり、ほっとして飲んでいる。

敦「ここがお開きになったら、センタービルのラウンジで待ってます、奢らせてください、お礼です」

早奈江「あっ、はい」

宴会後敦と早奈江は二人で、ラウンジで飲んでいる。

敦「今日はご苦労様でした。暫くは、要地区の掘り起こしですね」

早奈江「はい、半田さんの周辺から見込み有りそうな地主に当たっていきます」

敦「新人の二人はどうですか」

早奈江「二人とも、いけそうですね。特に本田さんは、積極的ですね」

敦「良かった。少し心配してましたが、安心しました」

早奈江「奥さんの調子はどうですか」

敦「順調ですね。かなり大きくなってきましたね」

早奈江「どっちなんですか...」

敦「女の子みたいです」

早奈江「楽しみですね」

敦「もう、どきどきですよ」

早奈江「もう名前は...」

敦「うん、女の子なら、愛美か彩心」

早奈江「良いじゃないですか、名前は難しいですよね」

敦「山辺さん、彼氏は...」

早奈江「あはは、仕事が彼氏ですね」

敦「そうですか、聖君とは会ったことありますか...」

早奈江「奥さんの弟さん...ですか...」

敦「そう、今度内に遊びに来て下さい、紹介しますよ。まだ大学3年生ですが...」

早奈江「私の方が年上だし、医学部の学生さんでしょ、どうしてですか…」

敦「いや、彼が山辺さんを何処かで見て、一目惚れしたって言うのでね、彼に紹介してくれと頼まれてね」

早奈江「奥さんもこの話を知っているんですか...」

敦「勿論、知ってます。本人の希望だからね」

早奈江「大体、私バツイチですよ」

敦「だから...何か、問題でも...」

早奈江、黙って首を振る。

それが、2006年9月の出来事だった。

19.弟の年上の恋人

今日10月下旬の水曜日は、彩・舞の弟の聖と彼の恋人で不動産営業課長の山辺 早奈江が舞と敦の自宅へ遊びに来ている。

4人で、食事をしようということになっているが、実は聖と早奈江の初めてのデートである。

聖が耕一・舞邸のパーティーで早奈江を見そめて、付き合い始めた。

一目惚れらしい。

なので、舞と敦は、聖の意向に沿って、この場を設定した。

敦「早奈江さん、聖君です…」

聖「よろしくお願いします。今日はわざわざありがとうございます…」

早奈江「こちらこそ、一度ここのパーティーでお会いしましたよね、簡単なご挨拶だけでしたけれど…」

いつもより、念入りに化粧してきた早奈江を見て、敦は驚いた。

元々少しクールな美人だと思っていたが、女優と言っても通用しそうな美貌で有る。

聖が夢中になるのも、頷ける。

少し悔しい気分もあるが、妻の前だし、フェアにしている。

最初はぎこちなかった二人の会話を、舞と敦でサポートして、食事会も終わりそうである。

この後、二人で、何処かへ行くようである。

敦と舞は、ニコニコしながら見送っている。早奈江のMINIで、出かける二人を見送る。

舞「あなた、残念そうな顔しているわよ...」

敦「...そんなことないよ、あの二人意外にお似合いかもね…」

舞「大変なのは、これからね...」

敦「えっ、なんで...」

舞「うん、そのうちにわかるわ...」

敦は舞が何を言っているのか、分からなかった。

早奈江と聖は、常磐道で北上し、ひたち海浜公園へ来ている、10月下旬のこの頃は、真っ赤に紅葉したコキアが素晴らしい。

それを目当てに観光客も多いが、平日の今日はそれほどでもないが。

早奈江「私、ここに前から来たかったんです。綺麗…」

聖「本当ですね。早奈江さんと一緒に来るとこが出来て、嬉しいです…」

早奈江「ねぇ、聞いていい...どうして、あたしなの?年上だし、バツイチだし...」

聖「初めて、早奈江さんを姉さんちで見たときに、ああ、この人だと…つまり、一目惚れという奴ですね…」

早奈江「でも、聖さんは良いけど、ご両親とか、どう思っているのかしら...」

聖「自分で決めるので、親は関係ないです...」と語気を強める。

そんな聖を見て、早奈江は少し不安になった。

その早奈江の不安の通り、事件は起きた。

その1ヶ月後、聖が早奈江と交際していると知った母の友梨が舞に電話をしてきた。

友梨「舞、なんで聖にあんな女を紹介したのよ…」

友梨の怒った声は、受話器を通り越して、隣にいる敦まで聞こえる。

舞「お母さん、落ち着いてよ。事情を説明にそっちへ行くから…」と慌てて、敦と実家へ急いだ。

友梨「聖に聞いたら、年上で、しかもバツイチだっていうじゃない。なんで寄りにも寄って、そんな女紹介したのよ…」

舞「お母さん、確かにそうだけど、素敵な人よ。年上っていったて、5歳だし、一度会ってみたら…」

敦「そうですよ、内の営業課長だし、有能で素敵な人です。聖君が惹かれるのも、分かります…」

舞「あなた、なにそれ、あなたも早奈江さんが良いの...」

敦「いや、そんなつもりじゃないけど。ともかく、お義母さん、一度会ってくださいよ…」

翌週、友梨・幸太と早奈江・聖、舞と敦の6人が、舞の家で会うことになった。

敦「こちらが、山辺早奈江さんです。こちら友部幸太さんと友梨さんです…」

早奈江「山辺早奈江です。よろしくお願いします…」

友梨「山辺さんは、婚歴があるのね…」

早奈江「はい、5年ほど結婚していました、その後分かれました…」

友梨「どうして分かれたの...」

舞「お母さん、それはプライベートなことじゃない...」

早奈江「いえ、良いんです。相方が好きな人が出来たので、分かれてくれと...」

友梨「あなたは、それで納得したの...」

早奈江「相手にそう言われて、引き留めますか...。私は、身を引きました」
聖「お母さん、それ位で、良いでしょ。元々、僕が早奈江さんに会いたいと舞お姉ちゃんやお義兄さんに頼んだんだから…」

友梨「聖、私達は反対ですからね...」

聖「なら、しょうがない、僕は家を出て、早奈江さんと暮らします…」

友梨「えっ、そんな...」

友梨の強硬な態度は、逆に聖に決心をさせたようだ。

聖「早奈江さん、今晩から早奈江さんの所へ行ってもいいですか...」

早奈江「聖さん、それは困るわ。お母さんが納得しないわよ…」

舞「じゃー、ウチのリビングに寝なさい。良いわね、お母さん...」

ということで、聖は舞の家のリビングに寝泊まりすることになった。

舞「お母さんも頑固なんだから。聖、暫くここにいて、アパートでも探したら。まだ学生だしね。ママのマンションじゃ、嫌でしょ...」

聖「うん、ママのマンションはね。自分で探すというより、早奈江さんに良い物件を探して貰うよ」

敦「早奈江さんというと、またお義母さんの心証が悪くなるから、僕が探すよ…」

聖「よろしくお願いします…」

10日ほどして、聖は敦が探した賃貸マンションへ移った。

それが、2006年11月の出来事だった。

20.反対された弟の結婚

親に反対された早奈江との交際は、それ故に一層燃え上がり、聖と早奈江は深い関係になっていった。

そんなに経験の無い聖が、熟女的な魔力を持つ早奈江の秘術の虜になるのに、そんなに時間は掛からなかった。

二人は熱い逢瀬を重ねた。

早奈江も久方ぶりに味わう若い男の精力を吸い取るように、悶えた。

だから、友梨が反対したことで、より一層二人の絆は強く深く結びついたと言っても良い。

古今東西、愛はそれ自体が困難になれば成る程、強く硬い絆となるものである。

だから彩・舞姉妹とその周囲の関係者も、固唾を呑んで見守ったが、聖と早奈江の仲がより一層深くなると、二人の関係を追認するしかなかったし、母の友梨を説得することにした。

年が明けた翌年1月中旬に彩と舞が実家の両親の元を訪れた。

彩「お母さん、今日は二人で話しに来たわ…」

友梨「なんで貴女たちが来るのよ…」

舞「何時までも聖達と仲違いしていても、しょうがないでしょ…」

友梨「なに、私に妥協しろというの...」

彩「そうは、言わないけど、あの二人の仲を裂くのは無理よ…」

舞「そのうち、親子の縁を切るとか、言い始める前に来たのよ…」

幸太「どうなんだ、二人の様子は...」

彩「お母さん達が反対するから、益々二人の絆は強くなっているわ。四六時中一緒に居るわよ…」

友梨「じゃー、私にあの女を認めろと言うの...」

彩「そうじゃなくて、暫く様子を見る期間を与えて、それでも一緒になるのなら、認めるというのは、どうかしら...」

舞「元々、聖が夢中になったのだから、1年とか2年間のお試し期間を設けてみたらどうかしら...」

幸太「そうか、それもあるな。どうだい、そうしてみたら...」と父は譲歩してきた。
そう言われると、もう味方もいない友梨は、渋々同意した。

結論として、2年間の同棲生活で様子を見ることにした。

それは、聖と早奈江の試練の期間でもあったが...。

双子の姉妹は弟と早奈江を呼んで、その条件を話した。

彩「2年間の同棲生活で様子を見ると、それで良ければ結婚しても良いと、良いかなそれで...」

聖が早奈江の顔を見て、言う「それで、良いよね。2年なんて楽勝だよ。つまり、僕が卒業するまでだね…」

早奈江「それは、二人で暮らしても良いと言うことですよね…」

舞「そういうことね。でもママのマンションは無理よ…」

早奈江「それなら、今建設している、要の宅地の1区画に二人の住宅を建てます。ねっ、それで良いでしょ。あーくん…」

彩「あーくん!?って、聖のこと...」

聖「ああ、そう。僕は早奈江さんのこと、さーなって言ってる…」

彩と舞は顔を見合わせて、半分呆れる。

その話を聞いて、敦と耕一は驚いた。

敦「同棲生活で、自宅を新築するなんて聞いたことが無いね…」

耕一「もう、それは2年後も別れないね。別れませんという、意思表示だね。お母さんの完敗だよ…」

一同、頷く。

翌月、舞は無事第1子を出産した。

男の子で、翔一と命名された。

それが、2007年2月の出来事だった。

21.公認された同棲生活

聖と早奈江の住宅は、敦と舞の設計で、3月に着工した。

早奈江が会社に居るので、打ち合わせは早く、基本設計から着工まで3ヶ月だった。
しかしながら、設計自体は、シンプルなワンルームだった。

新婚家庭らしく間仕切りは、浴室等のサニタリーだけなので、工事費も工期も最小・最短だった。

その点、早奈江に抜かりはなかった。

このペアは、やはり姉さん女房で、主導権は早奈江だったが、それは聖が早奈江に夢中だったからしょうが無いし、本人たちは何とも思っていなかった。
そんなことを気にしているのは、廻りの人間だけだった。

舞「早奈江さん、現場は順調よ、GWには上棟出来る様ね…」

早奈江「すいません、急がせて。内装決めは、私がやりますので…」

舞「ええ、後は現場にお任せよ。でもたまに聖と見に来てね…」

早奈江「はい、あーくんに言っておきます…」

舞「あと、GWにうちで恒例のバーベキューをやるから来てね…」

早奈江「はい、ありがとうございます…」

GWに、彩・舞邸で恒例のBQがあり、聖と早奈江も今年は参加した。

彩「聖、今日は良く来てくれたわ、ウチのBQは男達がメインで調理するの、だからあなたも頑張りなさい…」

聖「やっぱり、どうせそんなことだろうと思っていたよ…」

舞「流石、我が弟、察しが良いわね…」

敦「さっ、聖君、向こうで火起こしするよ…」

やはり、ここでも女性軍が強い。

舞のキッチンでは、彩と早奈江が加わり、下ごしらえをしている。
舞と彩はいつもやっているので、手慣れているが、早奈江も手慣れた様子で、串焼きを次々とこしらえていく。横目でそれを見ていた舞。

舞「あら、早奈江さん、上手いわね。なんでも上手ね…」

早奈江「そうですか...今度皆さんでうちへ来て下さい。お持てなししますから…」

彩「そうね、連休最終日でもいいかしら。4人で行っていいの…」

早奈江「広くはないのですが、それでも良ければ…」

舞「良いわね…」

用意も出来て、炭も盛んに赤くなってきた。

男3人で、既に飲み始めている。

敦はアルコールに弱いので、既に真っ赤な顔をしている。

耕一と聖は結構いけそうで、聖が耕一にビールを注いでいる。

舞「来週は、皆で聖の家へ行くわよ…」

聖「そうなんだ、姉さん達が来るんじゃ、片付けないと…」

耕一「まるで、母親が来るみたいだね…」

彩「そうね、愛の巣のチェックしなきゃね…」

早奈江「お手柔らかにお願いしますね、ほほほ…」

BQも食材は食べ尽くし、聖は早奈江の運転で帰宅した。

敦「来週のお宅訪問は、興味津々だね…」

舞「あの二人がどんな生活をしているのか、なんか想像できない…」

彩「早奈江さんのことだから、きちんとしていると思うけど…」

翌週、4人は聖と早奈江の愛の巣へ、興味津々で訪れた。

玄関ホールも綺麗に、タペストリーや小物が飾られている。

通されたリビングもダイニングも小綺麗になっている。

まるでモデルハウスの様な、早奈江が不動産営業をしている所為か、そういうインテリアデザインのセンスはあるようで、明らかに早奈江のテイストだ。

これを友梨に伝えたら、渋い顔をするだろう。

4人はダイニングテーブルに座り、聖が飲み物を用意している。

今日は舞も彩も手伝わず、座っている。早奈江のお手並み拝見なんだろう。

早奈江が手料理や刺身の盛り付け皿を持って来る。

早奈江「順番に出しますから、先にこれで食べていてください…」

舞「早奈江も食べようよ。座りなよ…」

聖「座って、乾杯しようよ…」

早奈江も座り、皆で乾杯した。

やはり姉弟なので、そこは仲が良い。

そういう意味で、姉夫婦4人は、聖と早奈江を気持ちよく受け入れている。だから母親が強硬に反対しているが、それはいずれ和解するだろうと、思っている。

追加で出された料理や飲み物もたらふく飲み食いして、皆落ち着くと、酔っ払った舞が核心に迫り始めた。

舞「そろそろ、愛の巣のチェックに入ろうか…」

聖と早奈江が「えっ…」という顔をしている。

彩「そうね、それ見ないと、今日は帰れないね…」

どこまでも、弟を弄るのが好きな姉妹である。

そんな姉達に慣れている聖は、平気だ。

聖「ああ、良いよ、向こうのドア…」と隣の部屋に通じるドアへ案内する。

早奈江は、微笑んでいる。

舞と彩がドアを開けて、中を覗く。

ダブルベッドに黒と白のベッドカバーが掛かっている。

全体にシックなインテリアデザインのセンスは、舞達よりもシックで大人びている。
そのセンスに舞は驚いた。
しばし見とれている。

舞「早奈江さん、今度インテリアの仕事を手伝ってくれる。プロ並みだわ…」

彩「ホント、素敵ね。舞とは違ったテイストがなにか新鮮ね…」

彩が言う通り、舞はナチュラル系のテイストだが、早奈江の大人びたモダン系の雰囲気も、好ましい。

二人感心しているところへ、敦と耕一も顔を出して、やはり驚いた。

ある意味早奈江らしい、センスだと思った。

一言で言うとシックである。

帰路、それに感心した4人は、異口同音に早奈江のセンスを褒めていた。
しかも隙が無いのである。

友梨が喜びそうな、ネタが無いのである。

重箱の隅をつつく様な点が微塵もない、それも凄いことである。

舞も彩も、それから見たら隙だらけである。

しかも中古のマンションであれだけなら、今建築している新築なら、どれほどだろう。

舞は、聖と早奈江の新築のインテリアデザインは、全て早奈江に任せることにした。

それが、2007年5月の出来事だった。

22.年上の妻(R-15)

姉達が遊びに来たが、その報告は母親へ行くことは間違いが無いので、聖と早奈江はその準備は十分怠らなかった。

少なくともそれを理由にあれこれ言われるのは避けたかったし、それが自分たちの仲を裂く理由の一つになることも回避したかった。

早奈江は仕事柄、建築やインテリアの知識や技法にも長けていた。

だから舞とは異なるテイストで、自分たちの住まいを造っていた。

流石に、ベッドカバーや小物は新調した。

その甲斐あって、姉達には、好評だった。これで友梨への報告は大丈夫だろう。

それでも早奈江の聖に対する愛情は、強く、深かった。

まだ医学類の学生は、卒業時に医師国家試験を受験し、合格して4月から研修医として2年間働く。

だから勉学に集中出来る様に、私生活は全面的にサポートした。

食事や日常生活に無駄な気を遣わせないように気を付けていた。

結婚は、親があの状態なので、少なくとも研修医になってから、再度仕切り直しを考えていた。

早奈江と聖は、姉達が帰った後、二人で今日の事を話していた。

聖「今日の事は、お母さんに伝わるだろうから、準備しておいて良かったね」

早奈江「間違いなく、伝わるね。良く話してくれると良いけど」

聖「それは大丈夫だよ。二人とも悪く言うことは無いよ」

早奈江「そうね。私達の味方だと思っているけど」

聖「さーな、一緒にお風呂に入ろう」

早奈江「うん、ここ終わらして行くわ。先に行ってて」

二人は、相変わらず、ホットな生活をしている。

聖22歳、早奈江27歳。

一晩中、何度でも愛し合える生活で、GW中は、姉達の訪問があり、その準備もあり、ようやく時間を掛けて愛し合える晩になった。

聖が実家を出て半年になる。

彼に取り、早奈江が実質的に初めての女性であり、それほど女性経験が無い状態で、彼女と同棲生活になったので、ある意味彼女から、毎晩愛の指南を受けている。

先に風呂へ入っていると、出ようとしていたら、早奈江が入ってきた。

早奈江「もう出るの。あら、もう大きいじゃない」と聖の息子が膨張しているのを見つける。

早奈江「ここ2,3日、忙しくて出してないからね」と聖の前にひざまずき、息子を手で撫で始めると、更に大きくなる。

おもむろに、早奈江は口に含み、舌で刺激始めると、聖は堪らず腰を引く。

それを逃がさず、前後に動いて激しくしごくと、やがて絶頂を迎えて早奈江の口内に放つ。

そのまま、聖をバスマストに座らせて、その上に跨ぐ早奈江。

少し刺激すると、直ぐに大きくなり、それを自分の花弁に徐々に入れて行くと、聖がまた膨張する。

早奈江が腰を上下にそして回して行くと、二人はそれに夢中になる…。

若い二人の夜は長い。

それが、2007年5月の出来事だった。

23.田園都市を創る人々

本田香織は、友部不動産会社に入社して営業担当になったが、専門学校を卒業して入社したから、まだ21歳で上司の早奈江や役員の敦について見習い中である。

美人と言うより、かわい子ちゃん系に属するので、周回から「かおり」と呼び捨てにされて、可愛がられるキャラである。

友部不動産のメイン事業の要地区田園都市開発の担当でもある。
だから半田家にも出入りしている。

本田香織「こんにちは…」

半田充「はーい…」

香織「友部不動産です、お世話になります。最新の宅地図をお持ちしました…」

充「母は留守なので、預かります。あれっ、確か本田香織さん…」

香織「はい、名前覚えて貰えました、嬉しい…」

充「そりゃ、覚えますよ。本田さんは、営業なの...」

香織「そうです…」

充「へー、若いのに凄いね…」

と若い二人は、直ぐに距離が近くなる。

事務所に帰ると、早奈江に呼び止められる。

早奈江「かおりちゃん、図面渡してくれた...」

香織「留守だったので、息子さんに渡しておきました…」

早奈江「ありがとう。彼、素敵でしょ…」

香織「そうですね…」

早奈江「ダメよ、商品に手を出しちゃ...」

香織「商品...」

敦「プロとして施主や地主と恋愛関係になることを、戒めているんだよ…」
暫くして、香織が敦のところへ来る。

香織「あの、すいません。私、半田充さんとTDLへ行く約束しちゃったんですけど...」

敦「....。それって、課長には言った...」

香織「課長に言ったら、怒られると思って...」

敦「そうね、怒られるね。どうしたものか...」

敦、暫く考えて「じゃー、課長には内緒にしよう。但し、今回だけね…」

香織「わかりました。ありがとうございます…」

敦としても、一度くらいならと、軽く考えていたのだが...」

その1ヶ月後、話が有ると早奈江に地主の幸恵から連絡が有り、行くと。

幸恵「山辺さん、お宅の本田さんとうちの充が付き合っているって、知ってる...」

早奈江「えっ...」

幸恵「知らないのね。充が本田さんと付き合っていて、結婚も考えていると言うのよ。どうしようかと...」

早奈江「申し訳ありません。管理不行き届きで…」

幸恵「うん、そうなんだけど。私としては、事を荒でたく無いのよ。こういう話って、反対するとするだけ、当人同士は燃え上がるでしょ。自分たちは悲劇のヒロインのつもりで...」

早奈江「...確かに、仰る通りです…」

幸恵「だから、暫くそのままにして、知らない振りするから、よろしくお願いします…」

早奈江「申し訳ありません…」

事務所に帰り、香織を呼ぶ。

早奈江「半田さんから呼ばれたの、あなたと息子さんの件で、付き合っているって、そうなの...」

香織「はい…」

早奈江「いつから...」

香織「先月、宅図を届けた時に、TDLに誘われて、それから...」

早奈江「だから、言ったでしょ。商品に手を出したらダメと...」

香織「私、どうしたら良いんですか...」

と、そこへ敦が早奈江の怒る声を聞いて来た。

敦は、事情を聞いて「そうなんだ。半田さんの言うとおり、こちらは何もしない方が良いね。当人達に任せましょ。でも私は幸恵さんに、謝罪に行ってきますね…」

香織「すいません、部長…」

早奈江「私には...」

香織「すいません。課長…」

早奈江「うん、もう...」

それが、2007年7月の出来事だった。

24.夏の日々

本田香織と半田充の交際が明らかになった翌月のお盆休みに香織と充は、周囲に秘密でハワイへ遊びに行った。

お盆休み明けに、焼けて出社したが、誰も気が付かなかった。

あれほど騒いだ早奈江も敦も気が付かなかった。

流石にあれだけ注意したのだからという油断は有ったと思われるが...。

香織はフォローしている地主があった。

半田家の敷地に隣接する岩井家である。

やはり、遺産相続や、農作業を続けることが困難な状況になるだろうと見越して、いつも来る香織に任せることにした。

勿論、敦や早奈江も何度か見学会等で会っているので、香織の後ろのサポート体制への安心感はあった。

香織が早奈江を連れて、契約前の打合せに行ってきた。

早奈江「かおり、お手柄よ。初めての契約ね。契約書の準備して、来週の大安に契約よ」

香織「はい、準備します」

敦「かおりちゃん、おめでとう。初契約か、意外に早かったね。優秀だよ」

と、周囲から褒められると、流石に嬉しい。

その晩、香織のマンションに充が来ていた。

充「おめでとう。やったね」

香織「ふふ、ありがとう」と充に抱きつく。

充は香織の背中に手を伸ばし、ジッパーを下げる。

香織がそれに気づいて「待って、シャワー浴びてからね」と軽くあしらうと、充はシャワールームへ行く。

先月、二人でハワイへ行っているので、こういう場面を仕切るのは香織の役目になっている。

二人は同い年だが、社会人で女性の香織が、リードしている。

1時間後、1ラウンドが終わり、ベットで充がタバコを吸っている。

香織「契約したので、来月から歩合給が付くのよ、充の1区画私に譲ってくれないかな...」

充「会社から社員価格で買えるんじゃない」

香織「そうね、そうするわ」

充「どうするの?家でも建てるの...」

香織「そう、貯金するより、手堅いし、多分値上がりするからね」

充「見かけによらず、しっかり者だね」

香織「そうよ、こう見えても、私堅実だからね、無駄使いはダメよ」

充「へー、こっちはそうでもなさそうだね」と香織の花弁を愛撫し始める。

香織は堪らず、身をくねらす。

翌週、香織は早奈江に相談して、半田家の分譲地の一番奥の未契約値を社員価格で契約した。

通常の賃貸契約金額の15%引きである。

その件で、敦に住宅の設計依頼もし、間取りや仕様の希望を伝えた。

早奈江も敦も香織が定期借地権の契約と住宅の設計依頼をしたことに、驚いたが、社員が買うことに異論も無く、直ぐに手続きに入った。

確かに若干21歳で住宅を建てることについて、後で聞くと、彼女は母子家庭で育ち、今まで育ててくれた母親と一緒に住むのだという。

そういうしっかりと今後の事を考えているので、驚いた。

やはり人は見かけや年齢によらず、その行動で判断されるとは、よく言ったものである。

確かにプランで個室が2室あったが、そういう訳なのかと敦は納得した。

最初は充の部屋かと思っていたが…。

翌月の11月に聖と早奈江の新居が完成し、彼らに引き渡しをされた。

敦「はい、これが鍵と引き渡し関係の書類一式です。早奈江さんが詳しいから、後で聞いてね」

早奈江「はい、あーくんには後で教えます」

敦「何時引っ越しするの、皆で手伝いに来るよ」

聖「ありがとう、ございます。早奈江さんのタンスや机もあるから、よろしくお願いします」

舞「お母さんには、一応話しておくのよ。心配するから」

聖「わかった。電話しておく」と相変わらず、母親とは疎遠な様子で有る。

隣で早奈江は下を見ている。

翌週、彩・舞夫婦と会社の同僚達が、引っ越しの手伝いに来た。

早奈江の家具が有るくらいで、午前中に終わり、昼は近くの中華料理店へ皆で行った。

舞「やっぱり、ワンルームは広々していて、気持ちが良いね。ある意味潔いし」

早奈江「お陰さまで、素晴らしい新居が完成し、ありがとうございます」

舞「うぅん、インテリアは早奈江さんがやったし、ある意味早奈江テーストだね」

聖「でもね、あの家、一人になれないんだよ」

彩「あら、一人になりたいの...」

聖「たまには」

舞「何言ってんの、貴方達ラブラブじゃない...」

早奈江「あーちゃん、そんな時は、言って、どうにかするから」

彩・舞は不思議そうな顔をする。

それが、2007年11月の出来事だった。

25.二人の新年(R-15)

今日は大晦日、聖と早奈江は新居で年末年始の準備をしている。

スキー場や温泉地へ行って、上げ下げ無用の正月をという話も有ったが、折角新居が先月完成したので、この真新しい我が家で新年を迎えるのも、今年しか無いということになり、二人新年の準備をしている。

とは言え、今までそんな事をしたことは、無かった聖は、多少経験がある早奈江に一々聞いて、正月飾りや鏡餅に苦戦している。

大体、神棚も無い家で、しめ縄を何処に吊るすんだということになり、紛糾した。と、そこに、舞と敦が顔を出した。

舞「あら、正月の飾り付け…」

聖「丁度良い、姉さん、この輪しめは何処に飾るの...」

敦「聖君、それは松の小枝を挟み、要所に置くか壁に吊るすんだよ。後、車とか自転車にもね」

早奈江「初めてなので、教えてください」

舞「そうよね、最初はそんなものよ。うちなんかも最初の年は喧嘩だったわ。大体家風が違う二人が一緒になるんだから、一々バトルよ、ねっ、敦さん...」

敦「まー、そうだね。うちは僕の実家の流儀で決めたけどね」

早奈江「なら、ウチはあーちゃんの実家の流儀で良いわ」

舞「それなら、神棚をまず祭らないと...、でもそんな場所あるの...」

敦「一応、南か東向きの壁なので、そこに想定はしていたけど。神棚は一ノ矢八坂信者の神主様に詔をお願いしてからだね、色々とあるから、今すぐには、無理なので、来年今年はパスだね...」

聖達の様子を見ると、舞達は帰った。

聖「さーな、少し休もう…、姉貴達も帰ったし...」

早奈江「そうね、隅々までチェックしていったね、小姑ね」と日頃の不満が顔を出してきた....

聖「心配なんだよ、初めての新年だからね。さーなは田舎に帰らなくて良いの...」

早奈江「うん、新年の挨拶に一緒に行ってくれる...」

聖「ああ、行くよ。今年は雪は有るの」

早奈江の実家は、福島・会津若松市内の造り酒屋なので、つくばから高速で3時間半で行くが、昨年の同棲を始めた時に一度挨拶に行ったきりで有る。

早奈江は、一男三女の次女なので、跡継ぎについては10代の頃から自分には関係ないと思っていたし、免除されているので、今の職業に就いた。

だから今回の帰省も気楽な帰省になる。

大晦日と元旦は、自宅で過ごしたが、二日目は会津へ帰省することにした。

友部家と交流があれば、行くのだが、現状では無理なのでしょうがない。

早奈江の愛車はゴルフの5代目GTIである。昨年新車で購入したが、今の所気に入っている。
聖を助手席に乗せて、常磐道を北上中である。

今年は雪も多くなく、スタッドレスタイヤに交換している。

早奈江「お父さんたちには、新築祝いを貰っているので、御礼しておいてね」

聖「わかった」

山辺家の裏側には、内玄関があり、そちらからは入る。

元禄頃の建築なので、小屋組も高く、この時期は冷え込んでいる。

早奈江「ただいま、帰りました」と奥へ声を掛けると母の恵が出てきた。

恵「お帰り、さっ、聖さんも、上がってください」と如才なく案内する。

母は商家の出で、そういう点は社交的で有る。

座敷に通されて、義父の光太郎に挨拶する

聖「明けましておめでとうございます。昨年はお祝いを頂きありがとうございました」

光太郎「いや、こちらこそ、早奈江がお世話になっております」と自家の大吟醸を注いできた。

おせち料理も出て、聖は結構飲まされたが、アルコールに強いので、いつの間にか光太郎がうとうとしていた。

台所で母親と早奈江が話している。

恵「どうなの、あちらさんは...」

早奈江「大きな変化は無しね、新築祝いも持って来たけど、彩さんが持って来たしね」

恵「私達も行った方が良いの...」

早奈江「それはダメね。あーちゃんが国家試験に合格して研修医になる時まで、待っているわ」

恵「じゃー、あと2年...」

早奈江「そう、あと2年」

その晩、二人は離れの奥座敷で寝ることになった。この部屋も、明治に建てられた古い座敷である。

早奈江「そっちへ行って良い...」

聖「良いけど、まだ酒臭いと思うよ...」

早奈江が隣の聖の布団へ潜り込む。

早奈江「ホントだ、まだ酒臭い…、ここでHしても良いわよ」

聖「そうなの、緊張するな...」

早奈江、聖の息子を確認すると、既に臨戦態勢になっている。

頭を潜らせ、息子を咥えて、刺激をし始めると、更に膨張してきた。

早奈江「これなら、大丈夫ね」と息子を自分の花弁に押し当てて、徐々に咥えていくと、二人は夢中になり始めて行く。

奥座敷とは言え、自宅のように大きな声は出せない。

早奈江は喘ぎ声を押し殺して、腰を回し始めた...。

それが、2008年1月の出来事だった。

26(最終話).和解

舞が長男 翔を産んで丸1年になる。

翔は順調に成長し、体重も10kgを超し、大きな病気もしなかった。舞はこの1年間育児休業していた。

聖と早奈江邸は、ほぼ早奈江が自分でデザインしたし、香織の家も早奈江に任せた。

あと1年、育児休業する予定だ。

出産直後は、敦もパパ育休を取って、育児をした。

結構楽しんでいるようだった。こんな楽しいことを、女性だけに任せるなんてとかも、言っていたが、それからも、寄り道しないで帰宅して、協力的だった。

敦のそんな変わりようには、驚いたが、そんな敦を選んだ自分も褒めてやりたい。

育児へのサポートについては、フィンランドでは二人の親が会わせて14ヶ月の育児休業や17歳まで毎月支給される児童手当など、を手本にして行政も取り組んで欲しい、現状日本は遅れている。

更に産休後の女性の賃金の低下や出世の機会が不平等であるとか、問題が多い。

政治家は出世率が低いと言う前に、そういう問題を解決して欲しい。

これは政治・行政の問題で有る。女性の問題では無い。

2月に、翔の誕生を祝い、舞と敦邸に親戚知人達が集まった。

既にパパ・ママと話し始めており、今日の主役はアイドル状態で有る。

聖と早奈江も翔の相手をすると、子供が欲しくなるようだ。勿論彩・耕一夫妻もだ。

彩「耕一さんの努力が足りないんじゃない」と耕一を責め始めているが、耕一は困った顔をしている。

舞「さーな、余り責めないの。病院へ行っているんでしょ」

彩「うん、治療しているの。後はタイミングだっていうのよ」

舞「二人目はさーなの後にするわね」

彩「そう、ありがとう」

相変わらず、仲が良い姉妹で有る。

彼らの後ろで見ていた早奈江も、勿論欲しいが、聖の学業と研修医の時期を考えると、後4,5年は我慢と思っている。

そうなると33だが、まだ十分間に合うので、毎月産婦人科へ通院するなど、慎重に対応していた。

翌3月に彩の妊娠が確認された、12月出産予定と言われた。

舞「おめでとう。良かったね、耕一さんも喜んでいるでしょ」

彩「そうね、涙ぐんでた。中々出来なかったからね」という彩も涙が零れていた。

そうなると、舞と敦は、増築を進めた。

取り敢えず自分たちの寝室の先に子供部屋を2室増築する計画をした。

元々、その増築プランは予定通りなので、簡単に進んだ。

彩と耕一の増築は出産後ということになった。

彩・舞姉妹はベビーブームである。

聖の件があり、つくばに足が遠かった、友梨と幸太も姉妹を訪ねてきた。

友梨「二人ともおめでとう。舞、来るのが遅れてご免ね」

舞「良いわよ、でもそろそろ和解したら」

彩「私もそう思う、あの二人を裂くのは無理よ」

友梨「...」

幸太「母さん、そうしよう」

友梨涙ぐむが、幸太の言葉に頷く。

翌週、舞と敦の家に、家族が集まった。
聖と早奈江も来ている。

敦「今日は、お父さんたちも来ていますが、今までのことは水に流してと、お二人も言っているので、聖君と早奈江さんもそれで良いね…」

聖と早奈江は頷く。

1年5ヶ月間、拗れた母親達と息子夫婦の関係は修復された。

多分、彩・舞姉妹が居なければ、こんなに早く修復されなかったろう。

やはり、この姉弟の絆は強い。

多分一番喜んでいたのは、早奈江だと思われる。

舞「早奈江さん、良かったね」

早奈江が涙ぐみながら、舞に抱きついた。
それを見て彩も二人を抱きしめた。
まるで3姉妹の様に。

それが、2008年4月の出来事だった。



いいなと思ったら応援しよう!