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2003_横浜のお嬢様part2.../1.ヴェネツィアの暁

登場人物(2003年時点)
幸田麗華 日仏食品ビジネスサポート部長 1976年(27歳)
幸田(会澤)耕一 セダ 課長         1970年(33歳)
幸田大介 輸入商事 会長                        1940年(63歳)
佐藤愛子 大介の妻                                     1966年(37歳)
江戸直樹 幸田商事 社長                           1950年(53歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長1968年(27歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長                   1963年(40歳)
山崎修  幸田商事 カスタマー課長             1960年(43歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(25歳)

幸田商事12階の第1会議室では、そろそろ結論を纏めて終わりにしようと言う空気が出席者の周囲に充満し始めていた。

その空気を読んだ社長の大介が発言した。

大介「じゃ、そろそろ纏めに入ってください…」

その発言を受けて司会の直樹が発言した。

直樹「それでは、この(仮)を外して「育児支援制度」を役員会議へ提出することで、よろしいでしょうか...」

一同「異議なし」

直樹「異議無しということで、この「育児支援制度」を役員会議へ提出する事とします。本日の会議はこれで修了します。お疲れ様でした」

それで終会となり、出席者はざわざわと席を立ち始めた。

直樹は隣に居る、会長の愛娘の麗華に声を掛けた。

直樹「これで、我が社の女性社員の育児支援が大きく前進しますね」

麗華「今まで結婚や妊娠で退職したり、復職できなかった女子社員達に取って、大きな支援になるでしょう。私も含めて安心して子供を産み、育てられる環境を整備して、男性と同じように定年まで会社で仕事を続けてキャリアを積んでいけますね。これをリクルートの核にして優秀な女子を採用することが出来ますね」

直樹の向こう隣にいた婿の耕一も頷いた。

耕一「この制度は、多分日本一進んだ育児支援制度だと思いますよ。ある意味スウェーデンの制度よりも進んでいる点も多く、これで優秀な女性に入社して貰い活躍してほしいですね。人手不足から業務や業績が停滞し、低下することのないようにしたいですね」

直樹「ある意味、世の中の非正規雇用の流れに抗って、手厚く従業員の福利厚生を高めて行くことが、業務のレベル向上や収益の拡大に繋がりますね。この制度を提唱した耕一さんと麗華さんは、凄いと思いますよ」

耕一「まー、ほとんど麗華が考えたんですがね...」

先月、大介が社長職を直樹に譲って、会長職へという人事異動が社内で明らかになると、社内で以前から懸案になっていた、人材不足の打開策の一つとして、女子社員の職場環境の改善が議論の一つとして俎上に上がった。

そのたたき台を作成したのが、耕一と麗華だった。

それまで、優秀な女子社員が、結婚や出産・育児で退職してしまうケースが数多くあった。

社長の婿・愛娘という立場もあり、二人の案は、速やかに社内会議で検討され、一部修正されて、先ほど採択された。

来月、行われる役員会議で承認されて、4ヶ月後の7月から施行されることになる。

だが、麗華はこの制度が、社内の制度であり、これを整備する段階で、日本の福祉レベルの抱えている問題点を痛感した。
社会的に整備する必要性を感じたし、それを言う政治家が非常に少ないことに驚いた。
そう考えれば考える程、自らが政治の世界で進めていくことの必要性を感じた。だから、父の大介に相談した。

大介「その通りだし、それを言う政治家も少ない。だから麗華が自分でやればいい。そう言うことなら、全面的に応援する。耕一君にも相談しなさいと..」

麗華は、業務とは別に自分の政治活動を共に歩んでくれる仲間を作り始めた。最初に、耕一は勿論だが、親友の江戸かす美に話した。

麗華がその事を話すと、かす美は熱心に聞いてくれた。

かす美「一緒に歩んでいくわ..貴方が、国会にこの仕組みを提出し実現するまで支えていくわ..反対なんてする馬鹿いないわよ..」

麗華「ありがとう..かす美」

かす美「早速、明日からめぼしいメンバーに声掛けするわ..」

かす美が声掛けしたメンバーは、実に驚くべき人々だった..

その7月、耕一はイタリア・ヴェネツィアのホテルで目覚めた。

昨日はフィレンツェ近郊のワイナリーで見学と打ち合わせがあった。

その足で、ヴェネツィアへ来たのだが、実は仕事の他にもある事情があった。

耕一の隣には長髪の美女が寝ている。ルシア・マルガリータ・ロペスはぐっすりと寝入っている。

昨晩の何年かぶりの愛の交流は激しく彼女を燃え上がらせた。

耕一がイタリアに来ると知ると、ルシアは逢いに飛んで来た。

そして麗華が2回目の妊娠となり、これも久々のアバンチュールに夢中になった耕一は、あれほど麗華から釘を刺されていたにも関わらず、ルシアを抱いてしまったのだ。

何度も懲りない男である。

それが、2002年7月の出来事だった。



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