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[恋愛小説]1992年のクロスロード.../11. つくばセンタービル

登場人物

福山雅弥 : 設計事務所 つくば分室長、33歳
高峰由佳 : システムキッチン会社 コーディネート25歳
松山健一 :ゼネコン勤務 由佳の婚約者26歳
幸田幸子 : 家具デザイナー 雅弥の婚約者32歳
川崎直子 : CADオペレーター 雅弥のスタッフ21歳
柴 浩一  :設計補助 雅弥のスタッフ25歳
藤木昌 :雅弥の事務所の東京本店の所長 
福山惣平:雅弥の父
福山千鶴:雅弥の母
福山一郎:不動産会社 経営、雅弥の兄
高峰好哉 :由佳の父
高峰妙子 :由佳の母
清田徹 :TX大学 第一学群 雅弥の友人
宮本靖  :雅弥の高校の友人
幸田竜也 :幸子の父親、家具会社の社長
坂本亜希子 :システムキッチン会社 係長 由佳の上司

11.つくばセンタービル

つくば市の中央に、つくばセンタービルという複合施設がある。

コンサートホール、展示室、ショッピングモール、シティホテル、プールやトレーニングジムまである。

1970年代後期に、コンペティションがあり、建築家の磯崎新氏が当選し、実施設計されたものだった。

デザインはポストモダンを標榜し、L字型に配置されたホールなどの中央にイタリアのカンピドール広場の暗喩である卵形の広場があった。

そのユニークさは、よく仮面ライダー系のアクションドラマのロケが行われることでも分かる。

ただ、センターへのアクセスは自動車だけだが、駐車場が少ないこともあり、ショッピングモールも10年もすると撤退する店舗が多く、営業的には苦戦した。

雅弥と由佳は、ここで結婚式をすることに決めた。

希望の10月の日程も確保でき、6月両家の親族が集いここで結納式をした。

ただ、二人とも前の婚約者を振った話はタブーだった。

それさえ持ち出さなければ。だからその点はピリピリしていた。

ただの気苦労だったのかもしれないが...。

二人がお互いの薬指にエンゲージリングを填めて、滞りなく済んだ。

由佳は、少し涙ぐむんでたように、見えた。雅弥も緊張していたので、確かでは無いが。

そして、10月の挙式の日程は確定した。

その晩、雅弥のタウンハウスで二人が夕食を食べていた。

もうこのころは、半同棲の状態で、GW過ぎには、由佳はここから出勤することも多くなった。

だから、7月初めには、本格的に同棲する予定だった。

由佳は、柏から通勤するよりも、断然近くなるので、それは当然かつ自然だった。片道2時間が20分になるのなら、当然だろう。

会社にはまだ言ってないが、婚約や結婚式の予定は、上司の坂本には伝えた。

また、ショールームの同僚数名を招待客として招くことや所長に来賓祝辞も頼む予定だ。

一方、雅弥の独立は先送りになった。

仕事は山のようにあり、捌くだけでも、大変だったからだ、だが景気の良い今がチャンスかもしれないので、私生活が落ち着いたら、チャンスを狙っていた。

それにしても、あの藤本所長の結婚式の挨拶だけは、心配だ。あれこれ言っても、聞かないし。

それが、1993年の5月から8月までの出来事だった。

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