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1996_横浜のお嬢様part1.../29.回避された9.11
登場人物
幸田耕一 日仏食品 ビジネスサポート部 1970年(29歳)
幸田麗華 耕一の妻 幸田グループ会社セダ 1976年(23歳)
幸田大介 幸田商事 社長 1940年(59歳)
佐藤愛子 幸田商事 社長秘書 大介の愛人 1966年 (32歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(18歳)
有村かす美 国際線CA 1968年 (27歳)
江川直樹 日仏食品ビジネスサポート部 部長 1950年 (46歳)
白川萌奈 大手住宅会社 東京支店建築部門事務 1975年(24歳)
2001年9月11日は平和な一日だった。
そして何事も起こらず翌12日になった。
先日のイスラム過激派逮捕の続報が流れていた。
彼らは9月11日に4機の航空機をハイジャックし、WTC、ペンタゴン、国会議事堂へ突っ込む計画だったことが、明らかになった。
アメリカは首謀者の身柄引き渡しをアフガニスタンと隣国パキスタンへ要求したが、無視されたので、海兵隊の特殊部隊が、奇襲し首謀者を殺害したと、報道機関が伝えた。
耕一「テロが未然に防げて良かったですね…」
大介「もし、実行されていたら、世界経済へ大きな影響があっただろう。これからは、セキュリティにも十分注意しながら、貿易することになったな..」
この世界では、911は未遂に終わった。
そして、耕一達の関係は更なる局面に入った。
麗華「耕一さん、かす美さんだけど、私の会社に来て貰えないかな…」
耕一「えっ、セダに...」
麗華「そう、うちのヨーロッパ担当の窓口が今、忙しくてね。彼女、語学も英語、スペイン語も堪能で、今イタリア語も勉強しているって...」
耕一「知らなかった...そうなんだ...」
麗華「連絡してくれない...」
翌週、かす美がセダに来た。
三人で会うことになっていた。
麗華「忙しいところ、ありがとう。実は、お願いがあってね。単刀直入に言うけど...」
かす美は一瞬、耕一との関係を責められるのかと思ったが、次の麗華の台詞は意外なものだった。
麗華「かす美さん、ウチに来てくれないかな。年収は今の1.7倍出します。仕事は、ヨーロッパからの輸入窓口担当です。如何ですか…」
かす美、意外なリクルートで暫く考えていたが「私で良いんでしょうか。確かに語学では自信がありますが、貿易や商取引については素人ですよ...」
麗華「はい、暫く江戸部長の下で、勉強してください。その儀、セダへ配属したいと思います…」
江戸の下と言うことは、耕一の同僚になると言うことだ。
耕一は麗華の意外な発言に驚いた。
即答を避けたかす美だったが、3日後、入社すると連絡してきた。
麗華「部長、かす美さんですが、異業種からの転職なので、指導よろしくお願いします。多分、タフだと思いますが...」
江戸「分かりました。来月、イタリアへ出張する予定なので、同行させますが、良いですか...」
麗華「よろしくお願いします」
江戸直樹は幸田商事 輸入部長で社長の大介の10歳下で、バツイチである。性格は温厚だが、最近仕事一筋で太り始めてきた。
直樹「来月、出張があるので、その準備をお願いします。これ訪問先のリストです。スケジュールの作成、航空機やホテル、レンタカーの段取り、先方への連絡等、お願いします…」
かす美「分かりました」と早速、江戸のサポート係になった。
出張はイタリアだけで無く、スペインも回ることになり、11月初旬から3週間に及んだ。
訪問先の新規取引先は、有機食品製造、同ワイナリーが多く、これからのメインになりそうな会社が多かった。かす美にとっても、この出張は、勉強になったし、顔を売る良い機会だった。
それが、2001年9月の出来事だった。