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漂えど沈まず「闇三部作」開高健/電子全集 

暑い夏に読むのに、これ程ふさわしい書はない。

1960年代のベトナム戦争の従軍記である。

今読んでいるのは、最初の章、輝ける闇 でまだ戦闘前の緩いベトナム戦線の話であり、弛緩し淀んだ熱気の中の諸事が綴られている。

米軍の将校の奇行やアメリカを嫌悪しながらも、表面的に従っているベトナム人たち、
今となっては、過去のその時の姿であろうが、そこにはリアルな人間や灼熱の気候・風土が、言葉の間から、沸き立つように、表現されている。

以前、著者の「オーパ」を読んだことがあるが、いつか読もうと思い、中々手に取る機会が無く、漸く電子版で読み始めた。

そのボリュームからして、まず図書館の貸し出し期間に読破できる自信は無く、かといい、最近怠惰な姿勢で読むことが多いので、分厚く思い書籍や全集はまず、読み進められないと..そうなると、iPadで読める電子版は、重宝する。

今年の夏の読書は、これだけで十分であろう、なにせ10201ページもあるのだから。
その前に、フィリップ・K・ディックの文庫本を8冊もヤフオクで落札したので、これもまた、出番待ちである。

最近、自分でも[恋愛小説]などを、書いているので、どうしても小説の表現を気にして読むところがある。特にラブシーンは、噛みしめながら読んでいる。いや舐めるようにか?

顔を寄せると爽やかな息の匂いがし、歯がふれあってかすかに鳴った。女のゆたかなくちびるのかなで舌が敏捷にうごいた。やがて私はゆっくりと山から平野へおりていき、臍でちょっとたちどまってから、ひとつまみの淡い茂みのある小さな丘をさまよった。鳥の巣のなかに暗い口がひらきかけていた。硬くて鋭い、触れるものをいきいきと目覚めさせる彼女の爪が私の下腹をさまよってから、ためらいつつ私をさぐりあて、まさぐりはじめた。(略)彼女は素朴でおさなく、いつまでもためらっていた。いつもそうなのだ。はじしらずが私をそそのかす。とつぜん私は彼女の濡れた暗い口に鼻とくちびるを埋め、あらがう彼女に私を握らせ、しゃにむに吸わせた。彼女はおずおず従った。腿が弓のようにしなってひらいた。シーツが炉さながらに白熱した。私は起き直って姿勢を正してから一挙に浸透した。

開高健  電子全集1 漂えど沈まず「闇三部作」P.1037-38

やはり、プロは違います。アマチュアとは歴然とした差があり。それはエベレスト山とマリアナ海溝の底ぐらいの差でしょうか、それ位隔たりがあります。これは如何ともしがたい、才能の差であろうと、諦めていますが、書く内には、少しでも上手くなろうと日々努力ですね。

書くという行為もやはり、修練や学習が大切でしょうね。暫く、修練・学習しながら読んでいきたいと思う今日この頃です。

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