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2004双子姉妹の恋 1.見分けられるのは弟だけ

登場人物
友部 彩 双子の姉 理科大 薬学部      1982年
友部 舞 双子の妹 ハウスビルダー 設計担当 1982年

友部 友梨 舞・彩の母
友部 幸太 舞・彩の父
友部 紀  彩・舞の弟

山下 敦 ハウスビルダー 設計担当 1976年
高山 耕一 製薬会社 新薬開発研究 1972年

友部彩が本屋を歩いていると、向こうから歩いてくる青年がガン見してくる。
彩もその顔に見覚えがあったので、見返してしまった。
二人の距離が間近になると、二人立ち止まったが、まだ思い出せない。

山下敦「えーと、確か友部さんの舞さん..」

友部彩「いいえ、姉の彩の方です」

敦「ああ、そうですか。彩さん...やっぱり、全然分からないですね」

彩「あの、どちら様...」

敦「ああ、ご自宅を設計した常陸の家の山下です。その節は、お世話になりました。皆さん、お元気ですか…」

山下敦は地元のハウスビルダーで設計担当をしており、半年前に引き渡しをした友部家の設計担当をしており、確か彩にも初回の設計打ち合わせで一度だけ会ったことが、あるが彩は忘れていたようだ。

そして、敦が口にした舞とは彩の双子の妹の名である。

二人とも美人の姉妹で、一卵性双生児なので、ほぼ見分けは付かない。両親でも、間違うことが多く、唯一見分けられるのは、弟の聖(あきら)だけである。
後から生まれた聖は、なぜか二人が同じ服を着ていていも、見分けられる

。だから彼以外に、彩と舞を見分けられる人間はこの世にいない。

だから、街を歩いていると、良く間違って声を掛けられる。

先日も彩がショッピングモールを歩いていると「舞」と声を掛けられた、ああまた、間違えているなと思いつつ、軽く会釈をして、通り過ぎたが、多分相手は怪訝な顔をしていた。

帰宅し、舞にその男の容姿を話すと「ああ、それ専門学校の先生、この近所に住んでいるの、先月先生の家を見に行ったのよ。明日、学校で話しておく」
といった、感じである。

だから、敦に挨拶されたときも、そのまま別れるつもりだったが、何故か足は動かなかった。
なにか、敦からでる磁場に捕まり、去ることが出来なくなった金属のかけらの様に..。

敦「その後、どうですか、ご自宅の住み心地は...」

彩「はい、快適にしております」

敦「お時間、ありますか...そこのスタバでコーヒーでも」と言っている敦も、自分で誘って驚いた。

確かに、この双子の姉妹は美人だ。

施主の女性には、手を出さない主義だが、ふと魔が差した。

もう既に引き渡しも住んでいるので、良いだろうと..。それほど、彩は美人なのだが..。

彩も敦の磁場から逃れられずに、その場に立ちすくんでいたので、ある意味、誘われてホッとした。
何故、体が動かなかったのか、不思議だったが、それは二人で、椅子に座り、話し始めると、やがて分かった。

以前、一度だけ会った敦の印象が強く、心の奥底に溜まっていたのだった。

まるで澱の様に。だから話し始めると、いつの間にか、敦の話に引き込まれた。話の内容は、単なる近況報告だし、たわいも無い内容だったが。

やがて、別れるときに、二人はお互いの携番とラインを交換していた。

それが、2002年10月の出来事だった。

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