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2003_横浜のお嬢様part2.../前編 第1話~9話
この合本の文字数は、約14,700文字です。所要時間は、約30分です。
これまでのあらすじ(part1から)
幸田麗華は、フランス人の祖父が興したワインやオーガニック食品輸入商社の跡取り娘で、大手住宅会社の建築技術者だった耕一を妊娠していた元彼女から略奪愛の末に結婚した。父の引退後、時代の変化に即しながら、女好きの耕一に手を焼きながら、女性従業員やその家族を第一に考え、育児支援制度等を整備し、周囲の女性社員達と共に業務拡大を進めていく。
やがて政治家としてそれを社会全般に普及・向上させようと立候補する。
一方、耕一は相変わらず周囲の女性達と次々と関係を持っていく。
登場人物(2003年時点)
幸田麗華 日仏食品ビジネスサポート部長 1976年(27歳)
幸田(会澤)耕一 セダ 課長 1970年(33歳)
幸田大介 輸入商事 会長 1940年(63歳)
佐藤愛子 大介の妻 1966年(37歳)
江戸直樹 幸田商事 社長 1950年(53歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長1968年(27歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長1963年(40歳)
山崎修 幸田商事 カスタマー課長1960年(43歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(25歳)
1.ヴェネツィアの暁
幸田商事12階の第1会議室では、そろそろ結論を纏めて終わりにしようと言う空気が出席者の周囲に充満し始めていた。
その空気を読んだ社長の大介が発言した。
大介「じゃ、そろそろ纏めに入ってください」
その発言を受けて司会の直樹が発言した。
直樹「それでは、この(仮)を外して「育児支援制度」を役員会議へ提出することで、よろしいでしょうか...」
一同「異議なし」
直樹「異議無しということで、この「育児支援制度」を役員会議へ提出する事とします。本日の会議はこれで修了します。お疲れ様でした」
それで終会となり、出席者はざわざわと席を立ち始めた。
直樹は隣に居る、会長の愛娘の麗華に声を掛けた。
直樹「これで、我が社の女性社員の育児支援が大きく前進しますね」
麗華「今まで結婚や妊娠で退職したり、復職できなかった女子社員達に取って、大きな支援になるでしょう。私も含めて安心して子供を産み、育てられる環境を整備して、男性と同じように定年まで会社で仕事を続けてキャリアを積んでいけますね。これをリクルートの核にして優秀な女子を採用することが出来ますね」
直樹の向こう隣にいた婿の耕一も頷いた。
耕一「この制度は、多分日本一進んだ育児支援制度だと思いますよ。ある意味スウェーデンの制度よりも進んでいる点も多く、これで優秀な女性に入社して貰い活躍してほしいですね。人手不足から業務や業績が停滞し、低下することのないようにしたいですね」
直樹「ある意味、世の中の非正規雇用の流れに抗って、手厚く従業員の福利厚生を高めて行くことが、業務のレベル向上や収益の拡大に繋がりますね。この制度を提唱した耕一さんと麗華さんは、凄いと思いますよ」
耕一「まー、ほとんど麗華が考えたんですがね...」
先月、大介が社長職を直樹に譲って、会長職へという人事異動が社内で明らかになると、社内で以前から懸案になっていた、人材不足の打開策の一つとして、女子社員の職場環境の改善が議論の一つとして俎上に上がった。
そのたたき台を作成したのが、耕一と麗華だった。
それまで、優秀な女子社員が、結婚や出産・育児で退職してしまうケースが数多くあった。
社長の婿・愛娘という立場もあり、二人の案は、速やかに社内会議で検討され、一部修正されて、先ほど採択された。
来月、行われる役員会議で承認されて、4ヶ月後の7月から施行されることになる。
だが、麗華はこの制度が、社内の制度であり、これを整備する段階で、日本の福祉レベルの抱えている問題点を痛感した。
社会的に整備する必要性を感じたし、それを言う政治家が非常に少ないことに驚いた。
そう考えれば考える程、自らが政治の世界で進めていくことの必要性を感じた。だから、父の大介に相談した。
大介「その通りだし、それを言う政治家も少ない。だから麗華が自分でやればいい。そう言うことなら、全面的に応援する。耕一君にも相談しなさいと..」
麗華は、業務とは別に自分の政治活動を共に歩んでくれる仲間を作り始めた。最初に、耕一は勿論だが、親友の江戸かす美に話した。
麗華がその事を話すと、かす美は熱心に聞いてくれた。
かす美「一緒に歩んでいくわ..貴方が、国会にこの仕組みを提出し実現するまで支えていくわ..反対なんてする馬鹿いないわよ..」
麗華「ありがとう..かす美」
かす美「早速、明日からめぼしいメンバーに声掛けするわ..」
かす美が声掛けしたメンバーは、実に驚くべき人々だった..
その7月、耕一はイタリア・ヴェネツィアのホテルで目覚めた。
昨日はフィレンツェ近郊のワイナリーで見学と打ち合わせがあった。
その足で、ヴェネツィアへ来たのだが、実は仕事の他にもある事情があった。
耕一の隣には長髪の美女が寝ている。ルシア・マルガリータ・ロペスはぐっすりと寝入っている。
昨晩の何年かぶりの愛の交流は激しく彼女を燃え上がらせた。
耕一がイタリアに来ると知ると、ルシアは逢いに飛んで来た。
そして麗華が2回目の妊娠となり、これも久々のアバンチュールに夢中になった耕一は、あれほど麗華から釘を刺されていたにも関わらず、ルシアを抱いてしまったのだ。
何度も懲りない男である。
それが、2002年7月の出来事だった。
2. スウェーデンの育児休暇制度が目標
スウェーデンの育児支援制度は、その出生率が1990年代に2.1を越えて注目されて、以来少子化、人口減少への対策として注目された。
幸田商事も社長の大介と長女の麗華を中心に、社員の定着、効率を上げる、退職の防止特に女子社員の人材を確保し将来への投資ともいえる施策中心として制度を考えた。
その参考になったのが、スウェーデンの育児休暇制度だった。
主なポイントは6つ。
出産にかかる費用が基本無料
480日の育児休暇(うち390日は給与の約80%支給)
高校卒業まで毎月1万4千円の子ども手当が支給
年間最大120日の看護休暇&その間は給与の約80%が支給
18歳未満の医療費は無料
大学まで学費は無料
そしてスウェーデンの社会自体が、子育て・子供に対して寛容な社会だということである。
対して、日本はどうなのか、それを目指しているのだろうが、中途半端な施策で、女性や子供への配慮や支援が不十分であり、それ以外への予算割り当てが多い。
だから少子化や人口減少は当然の結果だとも言える。つまり目先の利益を重要視して、長期的な視野や配慮に欠けると言える。
それは国だけでなく、企業でも言える。
目先の利益を追求し、リストラばかりし、正社員を削減し、非正規雇用ばかり増やそうとしている。
長期的な視野などは持てないのである。
だから大介や麗華が考えたのは、会社が長期的に維持され、成長するためには、人材を大切にしていくこと、特に女性や子供を育てていく夫婦への支援である。
スウェーデンの6施策の内、会社が支援する組合を作り、該当する社員や家族の為に、休暇や給与の支給、医療費や教育費を支給・無利子で貸与する方策を取った。
これは、新卒の学生や中途採用の結果に、現れた。
優秀な人材が集まり、さらに退職する者が激減した。
当然、会社組織への貢献度や忠誠心も向上した。それは会社の売り上げ・利益率の向上に直結した。
6施策が実施されて2年もすると、売り上げは1.8倍に、利益は2.3倍に増加した。当然、従業員数も1.5倍へと増えた。
そんな状況の中で、麗華が第2子を妊娠した。
江川社長「麗華さん、ご懐妊おめでとうございます。480日の育児休暇は、必ず取ってくださいね。率先垂範して、頂かないとね」
麗華「分かってます。耕一さんにも、育児休暇を取って貰いますから。多分、皆さん注目していると思いますよ。かす美さんと先日入社した大阪真由美さんの二人が、代行出来る様に今から一緒に業務をしていきます」
江川「先日、セダに入った山口ゆかりさんは、耕一さんの下で順調ですか...」
麗華「ゆかりさんは、優秀な方だと聞いています。7月には、二人でイタリアへ出張する予定です」
江川「大丈夫ですか、二人で...」
麗華「ゆかりさんは、コケティッシュな性格なので、耕一さんのタイプじゃないから、多分大丈夫でしょう。とても明るい方です」
江川「そうですか。なら、大丈夫でしょうね。逆にゆかりさんに、耕一さんの周辺管理を頼んだ方が良いかも、あはは」
麗華「そうですね、あはは」
耕一の女癖の悪さは、最近では知らない者はいないくらい有名になっている。
しかも、会長の愛娘の夫であるから、誘われそうになると、皆適当に遇うことが、定例化している幸田商事である。
ある意味、耕一の誘いには、だれも乗らないのが社内慣例化している。
耕一「山崎さん、最近女子の皆さんが何か変なんですが...」
山崎修も6施策が運用されてから入社した中間管理職で、最近耕一と仲が良く、二人で良く、伊勢佐木町のバーに飲みに行く様になっている。
山崎修「ふふふ、耕一さん、知らないんですか。社内で耕一さんからの誘いは、適当に遇うのが、社内ルール化しているようですよ...」
耕一「ええ、そうなんだ...。だから、誰も誘っても飲みにも来ないんだ…」
修「あはは、社内でナンパは無理ですよ...あはは」
うなだれる、耕一...。
それが、2002年5月の出来事だった。
3.市議に立候補する
麗華の母、幸田美智子は麗華が4歳の時に、出産時の合併症で胎児と共に亡くなった。
それが、大介と麗華の命や子供への慈悲に大きな影響を与えた。
夫が前の恋人との間で出来た萌奈を養子として引き取ったのも、今回育児支援制度を導入したのも、母親が亡くなった件が大きく影響している。
それは会長の大介も同じである。
だからこの親子の女性社員やその家族への配慮は、深く、それはひとりひとりの社員に届いている。
幸田商事の育児支援制度は、大きな驚きを持って地元の新聞やTV,ラジオで取り上げられた。
新卒の応募も中途採用の応募もうなぎ登りで増加し、優秀な人材確保が進んだ。
そして、この提案者である麗華への注目も大きく、マスコミの取材申し込みは、増えて業務に支障が出るほどだった。
幸田家はクリスチャンだから、墓地には母親の墓石があり、毎月命日には、大介と麗華は、花を供えに行く。
麗華が4歳の時に母が亡くなったので、母の記憶は微かだが、その抱かれた時の温もりや香りは成長してからも、懐かしさと共に未だに残っている。
結婚してからは、耕一や萌奈、耕介も一緒に行くようになった。
この親子の亡き妻・母への思いは、耕一にも十分伝わっている。
だから育児支援制度の策定には、耕一は子会社セダの営業課長だったが、兼任でメインとして携わった。特に、問題となった、資金の調達には、耕一がメインの銀行と交渉した。
それは業務上も、適正な労働環境を整える事が、重要とされ、勤務時間の適正化やパワハラ、セクハラは厳正に対処された。それ以降、この手の問題は無くなった。
当然、耕一の社内での女性社員への言動もジェントルになった。一番喜んだのは麗華かもしれないが。
そして、麗華は、育児支援制度を社内だけで無く、社会的に整備する必要性を痛感していた。
やはり、制度は社会的に整備する必要があり、それを整備するのは、行政の範囲であり、それを実現するために市議に立候補することを考えていた。
当然、自らの生活も家族の生活も大きく変化するために、耕一にまず相談した。
麗華「私、市議に立候補しようと思うの、社内で育児支援制度を整えるだけじゃ、不十分でしょ。それを実現するためにね..応援してくれる..」
耕一「勿論だよ..全面的にサポートするよ..」
それが、2002年4月の出来事だった。
4. クリスマス・イブ
7月のイタリア出張で、耕一は久しぶりにルシアへメールをしたが、深い意味は無かったし、撚りを戻すことは無いと思っていた。
なによりも、ルシアの無邪気な明るい笑顔を見たいと、書いたのだが、それがルシアの琴線に触れたようで、直ぐにスペインからヴェネツィアへ飛んできた。
だが、その行動は、同行した大阪真由美の知るところとなり、耕一は姿を消した、その1日の件で、帰国後麗華に詰め寄られた。
寝室には緊張した空気が漂う。白を切る耕一に、麗華は耕一がルシアへ出したメールのコピーを見せて、詰め寄った。
会社のメールサーバーにログが残っていたのをコピーしたものである。
麗華「こーちゃん、私も余り言いたく無いんだけど、これは何...」
と差し出したのは、メールのコピーである。
耕一はしどろもどろになり、渋々白状した「これはですね。実に怪しいメールですね...ごめんなさい...つい、出来心で...もう、ルシアには、逢いませんし、メールもしません」
麗華「で、ルシアとは寝たのね...」
耕一「彼女が、どうしてもと言うので、断り切れずに...」
麗華「お願いされたら、寝るんだ...」
耕一「...ごめんなさい...、もう二度としません...」
麗華「もう何度聞いたことか、その台詞...、じゃー、私が他の男と寝ても、文句は無いわね...」
耕一「いや、それは、困ります...」
麗華「約束して!もう二度と、浮気しません。他の女と寝ないと!いいわね!」
耕一「...はい...」
麗華「口約束は信用ならないから、一筆書いて...」
耕一「...はい...」
ということで、耕一は麗華に一筆取られた。
そして、12月のクリスマスに、幸田一族と江川夫妻らが集まった。
例年、幸田一家だけだが、今年は江戸・かす美夫妻も招かれて、食事会となった。麗華の表情は明るい。それが、例の一筆だとは、誰も知らない。江戸達は、出馬の為だと思っている。
一方、耕一の表情は冴えない。
江戸「今回は、ご家族の団欒に招いて頂き、ありがとうございます」
大介「いやね、かす美さんも呼びたいと麗華達が言うのでね」
江戸「麗華さんが市議で、活躍しておられますが、会社だけで無く、業界にも声がけして応援しますよ」
大介「ありがとう。どうも色々と考えていることがあるらしくてね..応援はありがたい..頼みます..」
麗華がかす美に微笑むが、何か意味深な表情である。
食事後、暖炉の前でかす美が麗華に話しかける。
かす美「最近、耕一さんが大人しいと、もっぱらの評判よ。何かあったの...」
麗華「会社じゃ言えないから、黙っていたけどね...」と、例の一筆の件をかす美に話す。
かす美、大笑いし「傑作ね、それじゃ、大人しくなるわね。もう耕一さんも、年貢の納め時ね。今までが緩すぎたのよ」
耕一が横で聞いていて「なんだか、二人で僕の事、笑いものにしてない...」
麗華「それから、耕一さんは、私の僕(しもべ)なのよ...ほほほ、ねっ、耕一さん...」と耕一に微笑む。
かす美「しもべか…いいね、何でも言うこと聞くのね、じゃー、あっちも...」
麗華「ふふ、そう、あっちもね...良いわよ...」
かす美「羨ましい、あたしも、しもべが欲しいな、あはは」
耕一「...」
かす美「ところで、市議はどう..」
麗華「少しずつね、急には出来ないのよ。理念だけでは実現できないのよ、現実を少しずつ変えていくしかね。後援会長、これからもよろしくね..」
耕一「市議じゃなくて、県議か国会議員に立候補したら、どうかと言ったんだけど..」
かす美「それは、そうだけど、いきなりはね..」
麗華「そう、いきなりじゃなくて、まずは地元、それからね..」
耕一「最終目標は、総理大臣..」
麗華「私の目標は、政策なの..育児支援制度もそうだけど、女性にも住みやすい世の中にしたいのよ..」
かす美「そうね、後援会長としてこれからも応援するわ..どこまでもね..」
それが、2002年12月の出来事だった。
5. 息子はライバル
2003年の正月は、慌ただしく麗華の出産で始まった。
まだ初七日も終わらない内に、無事第二子が誕生した。
元気な男子で、翔と命名された。
耕一「翔は元気だね。体調はどうだい...。」
麗華「うん、疲れた。少し寝るわ...」
耕一「ああ、おやすみ...」
麗華の病室のドアを閉めると、自分の車へ戻った。
iPhoneには着信のサインが....
ルシアからのメールが来ていた。あれから会社のメールは避けて、ルシアとメールを交わしていた。
だからルシアに麗華に一筆取られた件は、話していなかった。
来月2月にEUに出張なので、その件だろう。
だが、また前回と同じく大阪真由美が同行するので、またチクられても困るので、一計を案じていた。
今回、イタリアのオーガニックファームへ見学と契約を予定していたので、それを真由美に担当させて、その間にルシアと逢い引きしようと企んでいる。
2月になり、大阪真由美とイタリア、スペイン、ポルトガルへの出張に行く前日、麗華から再度釘を刺された。
麗華「こーちゃん、今度の出張は真面目に仕事オンリーでね。確認だけど、ルシアとか連絡していないわよね...」
耕一「まだ、疑っているの...残念だな。大阪さんが一緒だからな、何も出来ないよ...」
麗華「何...大阪さんが、いなかったら、また浮気するつもりなの...」
耕一「いや、それは、言葉の綾だよ...しませんよ、一筆書いたし...冗談じゃない...」
麗華「うん、それなら、良いわ、来て...」
耕一「あっあ...」
耕一は、麗華の隣へ移り、久しぶりに麗奈の熟した肢体に舌を這わせて行く、二つの丘陵を過ぎて、濡れ始めた花弁へ行く手前で、そこを迂回し、太股へ舌を這わせると、麗華は悶え始めて、耕一の頭を手で、自分の花弁へ誘導し始めた...
と、その時隣のベビーベッドに寝ていた翔が突然泣き始めた。
それを聞くなり、麗華は飛び起き、翔の元へ駆けつける。
一人、取り残された耕一は、麗華が翔に母乳を与えているのを、恨めしそうに見ている。
既に、麗華の豊満な乳房は、耕一のものでは無く、息子達の取られてしまっている現実を改めて認識した。
翔が母乳を満足するまで飲み、ゲップをするのを確認して寝かしつけると、麗華は自分のベッドへ戻るが、耕一は既に寝入っていた....
その穏やかな寝顔を見て、麗華は複雑な気持ちになった。
この人は、向こうでまたぞろ浮気をするのではないだろうか、このまま溜まったままで、出張に行かせるのは、危険では無いか...。
猜疑心に襲われた麗華は、耕一を揺すって、起こすと、耕一の息子を刺激始めた。
初めは、夢うつつだった、息子は徐々に硬直しはじめた。
それを咥えると、上下に動かし、舌を絡めた...流石に、耕一は目覚めて、麗華の豊満な乳房を揉みしだいた…。
子供が生まれる度に、麗華の豊満な乳房の所有権争いが、耕一と息子達の間で、起こるが、大体母親は息子を優先し、旦那は次点へ回される…
母性のなせる技で、如何ともいがたい…それが、浮気へのトリガーになることもあるようだ...。
それにしても、この年の統一地方選挙は4月3日の予定である。
そちらに、注力しないと、いけない。お願いだから、浮気なんてしていないで、バックアップしてい欲しいと思う麗華だった。
それが、2003年2月の出来事だった。
6. 麗華の初陣-初選挙戦
2003年2月、麗華の選挙事務所が幸田商事の近くのテナントビルの1階に開所した。
お祝いの花が届き、大勢の人達が出入りしている。
麗華の政策や心情、プロフィールが記載されたビラも山積みに、またポスターも昨日スタッフが壁に貼られている。
応援のポスターもこれから増えていくだろう。
式では、後援会長の江戸かす美が最初に挨拶にたった。
かす美「幸田麗華さんが、今回市議選に立候補することになりました。後援会長を務める江戸かす美です。麗華さんは、女性の地位向上や社会福祉政策、教育の無償化を政策に掲げております。そして、女性政治家がこれからこの国に、大勢出てこられる法整備も大きなテーマにしています。..」と話し始めると、集まった支持者は皆聞き入った。
支持者は女性6割、男性4割と、やはり女性が多い。
掲げる政策も女性の地位向上から教育としているから、尚更だが。
父大介や夫の耕一も横に立っている。流石に幸田家の跡取り娘の立候補なので、幸田グループ会社の社員のスタッフも多い。
いよいよ麗華の挨拶である。
「今回、市議選に立候補しました、幸田麗華です。私は政治の世界では、素人ですが、その志は高く持ち、皆様の為、地元の為に、政治の世界へ飛び込んで、女性の地位向上から教育改革まで取り組んで行きたいと思います。..」
その挨拶に、支持者は聞き入り、最後には万雷の拍手があった。日頃、女性達が思うことを、代弁する候補者として見ていることがよく分かる。
選挙戦は2週間続き、街頭演説を多くし、地区を回ることも多く、まずは顔と名前をという、方針で進めた。
耕一やかす美も選挙カーにのり、マイクを握ったが、元々、女性候補を前面にだしているので、聴衆の受けは、女性の方が良かった。
特に麗華が街頭に立ち、演説をすると、立ち止まり聞く女性達が多く、関心は段段と高くなった。
そして耕一がマイクを握ると、彼の女性達へのアピールは高く、麗華の時よりも、熱心に聞き入る聴衆も多く、時に彼女の時よりも反応が濃いときもあり、スタッフは驚いた。
やはりここでも、耕一は女性達へアピールすることを麗華は痛感した。
いよいよ投票当日、麗華を初め幸田家の者が投票に行くと、会場前でマスコミからのインタビューを受けた。
耕一もインタービューに答えた
「この国の女性の不利益な立場が男性と同じレベルになるまで、家内には頑張って貰いたいと思います」と答えた。
欠点も少なく、目立ったこともあり、何より政策も明確なので、女性票が多く、5位で初当選した。
開票が開始された3時間で当確が出て、選挙事務所はお祝いムードになった。
当選の花束は、耕一が麗華へ渡した。
すると事務所は大方墳に達した。御礼の挨拶で麗華は言った
「ありがとうございます。ひとえに皆様の支援とご理解の賜と感謝いたします。公約した政策の実現に向けて、頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします」
これが、麗華の政治活動のスタートになった。
これが、2003年4月の出来事だった。
7. 初議会と 傷心の女(ひと)
登場人物(2003年時点)
幸田麗華 横浜市議、日仏食品ビジネス部長 1976年(27歳)
幸田(会澤)耕一 セダ 課長 1970年(33歳)
幸田大介 輸入商事 会長 1940年(63歳)
佐藤愛子 大介の妻 1966年(37歳)
江戸直樹 幸田商事 社長 1950年(53歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長1968年(27歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長1963年(40歳)
山崎修 幸田商事 カスタマー課長1960年(43歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(25歳)
フランコ・フェルミ オーガニック農園主 1960年(43歳)
初当選から約1ヶ月後、麗華は市議会場に初めて入った、初当選者は一番前である。しかも無所属だから脇の方であるが、他の初当選の議員達と挨拶や話もできた。
自分の会社だと、オーナー家だから周りが気を使ってくれるが、ここではそんなことも無く、ある意味新鮮だ。
麗華の政策は明確だが、それを実現する道程は長い。いきなり国会議員は、無理だから市議から始めたが、地域の事から理解していかないと、支持者の輪は広がらない。
心掛けているのは、「女性」政治家を強調しないこと、政策で勝負することだ。
だからブレーングループに耕一・かす美・大阪真由美以外に数名の社内メンバーを集めた。
地元の区長をしている杉山祥子、市立大学教授の神田昌樹をメインに7人になっている。
その政策は、教育や福祉を重視して市民が主役のまちつくりだが、子育てしやすい、安心して子供を産み育てることが出来る支援を構築していくこと、だから出産前後の経済的支援だけでなく、その後の育児まで手厚い支援を行政が主体で行う、だから保育園や幼稚園の分厚い設置も含んでいたし、その後の教育支援もあった。
後に幸田グループで教育支援として、幸田奨学生制度創設奨学金を創設するが、その前段として、麗華が市議としてそれを検討し始めた。
一方、社会福祉や社会教育施設の充実も施策に入れていた。
盛夏の太陽は、ヴェネト州のオーガニックファームの大地を熱しているが、斜面のブドウ畑の果実の成熟には必要な熱量なのだが…
その斜面を登っていく、フィアット・チンクエチェント500は、喘ぎながら苦しそうなエンジン音を周囲へまき散らして斜面の上の豪農の建屋へと入って行った。
車から降りた、女は白のタイトなワンピースに、白のつばが大きい帽子を被っていた。建屋の玄関で、呼び鈴を鳴らすが、誰も出てこない。諦めたのか、南のベランダへ回って行った。
真由美「フランコ、居ないの。真由美だけど...」
暫くすると、奥の寝室から、ブロンドの長い髪の美女が、下着のまま出てきた。
ブロンド女「あんた誰よ...中国人...」
真由美「...日本人よ...そういう、あんたは、誰よ」
ブロンド女「ふん、フランコは寝ているわ、疲れ切ってね」
二人の話を聞きつけて、奥からフランコが出てくる。真由美を見て、驚く「真由美、突然どうしたんだ。連絡もしないで、来るなんて...」
真由美「あなたに会いに来るのに、一々連絡しないと、こう言う事になるのね...」
フランコ「これはだね...色々と事情があってだね...」
真由美「私、変えるわ。ヴェネツィアのホテルに居るから、後で来て」と言うと、チンクエチェントに乗り、来た道を引き返した。
ハンドルを握りながら、真由美は後悔していた。やはり、こう言う事だったのだと、そんな予感はしていた。そもそも、日本とイタリアの遠距離恋愛なんて、無理なんだと。夏期休暇を纏めて、イタリアへ来たのは、フランコが真由美を待ってくれていると信じてだったが、現実は残酷だった。フランコはあのブロンド女と付き合っていたのだ、それもあの寝室で。安易にイタリア男を信じた自分を呪った。
休暇はまだ6日あるが、帰国の便を取り直して、予定より早く帰ろうと思った。
翌日、フランコがホテルに真由美を訪ねて来た。多分、此処で気まずい別れをすると、後々のビジネスに差し障りがあると踏んだのだろう。そんな計算高いフランコの下心が見える。彼の謝罪の言葉も、真由美の耳には通り過ぎる念仏にしか聞こえなかった。
確かに、4月に来たとき、一晩農園で過ごしてホテルへ帰ると、耕一から、忠告されたのだった。
耕一「僕が、男女の仲の忠告をするのも、説得力が無いが、イタリア男には、真剣に成らない方が良いよ。彼らと日本人の我々では、恋愛の重みが違うから...」
真由美「それは、幸田課長の経験からのアドバイスですか…」と嫌味とも取れる、返事をしたが、今となっては事実だと認めざる得ない。
3日後、予定を変更してフランクフルト経由で帰国の便に搭乗した。1時間でも早くフランコの居る土地から離れたかった。真由美は今年40歳になる。若くないのに、こんなに燃え上がるなんて、そして失恋...なんて、バカなんだろう...もう二度と恋なんてしない...窓の外で時々揺れる主翼を見ていると、涙で翼が滲んできた。
麗華は、当選してから、その団体が請け負い関係にある場合、議員の兼業は禁止されている。確認したら、幸田グループはその関係に無いので、兼任できることになった。
市役所総務部長「幸田さんの会社は、市と請け負い関係にないので、役員等の兼業は可能です。但し、請け負い関係になったら、止めてください」と言われた。
それが、2003年8月の出来事だった。
8.傷を舐め合う二人
9月になり、耕一と真由美は、九州・博多の輸入食品販売店のイベントに応援で来ている。
朝一番の飛行機で、博多の営業所へ顔を出して、市内の輸入食品販売店へ出向き、イベントの手伝いと新商品のPRをしていた。その夜、ホテルのバーで飲んでいると、真由美が急に真顔になり、耕一に話し出した。
真由美「課長、聞いてくれます...」
耕一「ああ、どうしたの、急に...」
真由美「イタリア人って、なんで、ああなんでしょうね...」
耕一「何が、ああなの...」
真由美「ホント、適当で、いい加減で、信じられない奴らですよね…」と、今まで見たことのない表情で話し始めた。
耕一「一体、何があったの...」
真由美「実は、4月に課長がヴェネツィアに先に戻ったときに...」
耕一「ああ、そういうこと...」
真由美「また、何時か話せるようになったら、愚痴って良いですか…」
耕一「ああ、良いよ。それまで、待つよ..」
真由美「課長、優しいですね...麗華さんが羨ましい...」
耕一「そうか...怖いけど...」
真由美「今日は、聞いてくれて、ありがとうございました。今晩はもう、寝ますね..」
耕一「ああ、おやすみ...」
真由美「それじゃー、おやすみなさい...」
耕一カウンターの上のiPhoneを見る。麗華からの着信がある。
耕一「もしもし、何...」
電話の麗華「どう、PRは上手くいった...」
耕一「やっぱり、顔を見て話すと違うね…」
麗華「真由美ちゃんは、どう…最近元気がないけど...」
耕一「いま、部屋に帰ったよ。大丈夫そうだよ...」
麗華「そう、なら良いけど…」
耕一「翔は、元気か…」
麗華「さっき寝たとこ。麗奈がお話したいって..パパよ」
麗奈「パパ、お土産買ってきてね...」
耕一「何が良いの…」
麗奈「白いくまちゃん...」
耕一「そう、分かった。大きいのが良いの…」
麗奈「ふつうの...」
耕一「ママに変わって…」
麗華「じゃーね、気を付けてね」
耕一「ああ、それじゃー」
最近、麗奈も大人の話が少しづつ分かるようになってきた。子供の成長は早い。子供の前で、下手な話も出来ない。
3泊4日の九州出張も無事何事も無く、耕一と真由美は横浜の本社へ帰社した。
江戸「ご苦労様でした。どうでしたPR活動は...」
耕一「やはり、電話じゃ無くて、サンプルを持参するのは、効果ありますね。大体8割は購入してくれますよ」
真由美「それと、やはり当社もデジタルマーケティングをしても良いかなと思いました。そういう要望も店頭で何件か頂きました」
江戸「そうですか、次回の会議の議題に挙げますから、試案を作ってください、お二人でね...」
輸入部に戻り、相談する二人。
耕一「webだとシステムやサイトの運営もあるから、求人した方が良いよね...」
真由美「早速、手当てします。例の育児支援制度があるので、直ぐに優秀な人材が集まりますよ」
と、真由美が予測した通り、HPに求人したら、1週間で、20件ものエントリーがあった。翌週の会議で試案を図り、その後システム担当の面接をした。役員面接までし、4名の採用を決定し、1ヶ月後入社してきた。
その中に、山口ゆかりが居た。彼女はカナダで語学留学の後、システム担当として、現地の会社で4年勤務しており、今回の部署のリーダーに最適と目されていた。
耕一「山口ゆかりさん、よろしくお願いします。僕たちは、システムには弱いので、お任せになりそうですが、必要なものは、リストにして提出してください」
山口ゆかり「そうですね、取り敢えず、北側の倉庫を整理して、サーバー室にしたいので、マシンも含め、リストと見積もりを関係部署や施設課と相談します」
真由美「今回入社した4名の中で、山口さんをチーフにしたいのですが、良いですか...」
ゆかり「わかりました、4人で相談しながら、進めます。また相談しますので、お願いします」
ゆかりが部署へ戻り、二人で話をした。
耕一「彼女たちも、初めての会社で、立ち上げ作業だから、苦労すると思うので、全面的にバックアップしていきましょ」
真由美「わかりました。毎日、ほうれん草しますね」
耕一「よろしくお願いします」
1ヶ月後、サーバー室で準備しているゆかり達のところへ耕一と真由美が様子を見に来た。
耕一「どうですか、進み具合は…」
ゆかり「今、暫定でシステム構築していますが、サーバー類の見積もりも数社から上がりましたので、稟議書を出します。実際の運用は、準備期間も含めて、3^4ヶ月見てください...」
真由美「そう、順調ね...」
ゆかり「いや、まだ勝手が分からず、総務と色々とありました…部長、あとで少し良いですか…」
耕一「じゃー、後で」
夕方、ゆかりが耕一のところへ来たが、表情は硬い。
耕一「困りごとかな...」
ゆかり「そうなんです、2つありまして、サーバーの見積もりの件と…」
耕一「そう、もう一つは、ここでは言いにくいののね…」
ゆかり「はい、出来れば、別の場所で..」
耕一「じゃ、食事でもしながら、1ブロック先のポセイドンというイタリアンがあるので、6時にどうですか...」
ゆかり「はい、6時ですね」
それが、2003年11月の出来事だった。
9.新人の悩み
耕一がポセイドンに行くと、既にゆかりは奥のテーブルに居た。
この店は、会社から近いこともあり、またオーナーシェフの野島大輔が本場イタリアで修行してきたので、料理のレベルは本場並みである。
野島庄司「いらっしゃいませ、耕一さん,,,今日は、ヒラメが美味しいです」
耕一「じゃー、それで。野島さん、新しい911買ったんだって,,,」
庄司「そうなんですよ。こんど、箱根でも行きますか...」
耕一「ああ、来週土曜の朝、何時もの場所で」と言うと、庄司はにやりと頷き、奥へ行った。
ゆかり「お友達なんですか。911って、ポルシェの...」
耕一「よく知ってますねよ。二人ともクルマ好きなんで、それでよく二人で遊びに行くんですよ」
ゆかり「へー、良いですね。私も、アルファ持ってますよ」
耕一「そうなんだ、何...」
ゆかり「ジュリアですが...」
耕一「良いじゃ無いですか、ゆかりさんも一緒に行きますか...」
ゆかり「今は忙しいので、今度お願いします」
耕一「そうでした、話というのは..」
ゆかりが話し出したのは、サーバー納入業者選定で総務部と揉めた件と他の3人のチームワークが上手くいっていない件だった。
一通り、話を聞いて、耕一は、それぞれについてアドバイスをした。
総務は今までの納入業者を優先させた、金額が高いにも関わらず。
それについては、耕一が総務部長と話をすることにした。
チームワークについても、暫く様子を見て、必要なら後日各メンバーと面談をすることにした。それをゆかりに言うと、彼女の表情が緩やかになってきた。
ゆかり「部長さんに、相談して良かった」
耕一「なら、良いけど。ため込まないでね、それが一番良くないので…」
メイン料理がテーブルに乗り、食べ始めたが、耕一は話題を変えた。
耕一「カナダに留学していたの…」
ゆかり「はい、語学留学で、その後SEの勉強も..」
耕一「頑張り屋だね、僕なんで語学留学だけで大変だった..」
ゆかり「どちらへ...」
耕一「オックスフォードへ...」と、留学の話で暫く、盛り上がったが、ルシアの話は省いた。
多分、それはゆかりも同様で、向こうで浮いた話の1つや2つはあっただろう、なぜなら彼女は、街ですれ違ったら、多分10人中8人は振り返る位の美人だった。
それ位だから、麗華のマークも当然入るのだが、この時期麗華は産休で出社して折らず、ゆかりはノーマークだったし、ゆかりに耕一の悪癖を告げる女子社員も居なかった。
この晩も、ポセイドンでヴェネト産の白ワインを二人で結構飲んだあと、老舗ホテルのバーでハシゴした。
耕一「ここのホテルは、有名なんだけど知ってる...」
ゆかり「さて、知りませんが、古そうですよね.」
耕一「ここには、チャップリンや有名人が宿泊しているんだよ…」
と、説明するが、ゆかりは半分眠そうで、うつらうつらしている。
ゆかりは、心配事を話して安心していたのかも、知れないし、耕一は何時もの悪い癖が、またぞろ出てきたのだろう…結局、二人は、そこで泊まって、朝を迎えた。
翌日は、土曜日だったので、昼頃山の手通りの家に帰ると、当然麗華が怒っている。
麗華「夕べはどうしたの…連絡もしないで…誰と居たの」
耕一「ごめんごめん、ポセイドンのオーナー達と麻雀していてね。メールはしたよ…」と、ホントのような嘘を言うが、麗華がiPhoneを確認すると確かに、メッセージがあった。
麗華「本当に、麻雀だったの…野島さんに、聞いても良い…」
耕一「心外だな、聞けば、良いよ...」と怒った振りをする。因みに野島には、口裏を合わせる様に頼んでおいた。
つまり野島は悪友なのである。だから、この手はバレるまで暫く使った。
それが、2003年12月の出来事だった。