2004 双子姉妹の恋.../4. 妹の振りをしてデートする姉
登場人物
友部 彩 双子の姉 理科大 薬学部4年 1982年
友部 舞 双子の妹 ハウスビルダー 設計担当 1982年
友部 友梨 舞・彩の母
友部 幸太 舞・彩の父
友部 紀 彩・舞の弟
山下 敦 ハウスビルダー 設計担当 1976年
高山 耕一 製薬会社 新薬開発研究 1972年
その年のGWも終わった、ある日、会社のアフター部門から舞に呼び出しが、あった。
友部家の引き渡し後の2年アフター訪問の時期が来月なので、その話だという。
流石に舞に一人で行けというのではないが、誰かと同伴して欲しいという、誰が良いかというので、躊躇無く、敦を挙げた。
その理由を聞かれてこう答えた「設計長は、内の家の設計担当で、良く熟知しているので、適任者だと思います」
翌週日曜日、会社のクルマで友部家へ向かう二人。
敦「最近は何かある...」
舞「ええと、お姉ちゃんが元気無いくらいですね」
敦「...,、いや建物の話だけど...」
舞「あっ、そっちですか、特に無いですが、ママが夏に東の窓からの日差しが強いので、カーテンかブラインドをリビングの東側の窓に付けたいけど、どちらがいいかと...」
敦「そうなんだ、じゃお母さんと相談しよう…」
友部邸に着くと、早速。
友梨「お久しぶりです。色々と内の娘達が、お世話になります...」と多少、嫌みともとれる挨拶をする。
敦「いえ、こちらこそ舞さんには、色々と助けて貰っています」と彩のことは、触れないで返す。
友梨は、娘達と次々と交際している敦に余り良い印象は持っていないらしい。
幸太「舞がお世話になっています。よろしくお願いします」と無難な挨拶をする。
彩は不在らしい、流石に振った元恋人と会うのを避けたのだろう。
帰路、車の中で。
敦「彩さんは、元気ですか...」
舞「ええ、元気に大学へ行ってますよ。今度インターンシップでつくばの研究所へ行くとか言ってました…」
敦「そうですか...、聞いていますか...僕、彩さんに振られたんですよ...」
舞「ええ、聞いてます、すいません…」
敦「いえ、舞さんとは、関係ない話だから、謝らないでください…」
と敦は言うが、実は彩が舞の気持ちを深読みして、別れたということは、敦には言えない。それは彩と舞の秘密である。
その翌月、敦がイオンショッピングモールを買い物で歩いていると、向こうから舞が歩いてくる。多分舞だと思ったが、自信は無い。
正直未だにどちらなのか、見分けが付かない。向こうも気が付き、2mまで近づき二人顔を見ながら立ち止まる。
敦「あのー、舞さん...」
彩「ええ、敦さん」とっさに、彩は間違った敦を正すより、このまま、舞の振りをしようと思った。単にちょっとした悪戯心だったが...。
敦「そこのスタバでお茶しますか…」
彩「はい…」
敦「今日は何か買い物...」
彩「カルディでコーヒー豆を...」
敦「そうですか、これからの予定は...」
彩「特に、ありませんが...」
敦「上で映画でも観ましょうか...」
彩「下妻物語、やっているですけど、観ませんか...」
敦「ああ、いいですね、おもしろそうだし…」
で、二人4階のシネマサンシャインで、下妻物語を観ることに、敦は以前、彩と映画を観たことはあったが、舞とは初めてだったが、双子の姉妹なので、どうもそんな気はしない。
だから観ている途中で、手を握っていても、初めてという感じがしない。
ふと、この後、食事とか誘おうかと考えてしまった。
でも、何時もの舞とはどこか違うような気もするし、今更本当に舞さん?とか言えないし....。
映画は面白かったが、それよりも隣にいる女性は、舞なのか彩なのか、そちらの方が気になり、今一映画に没頭出来なかった。
映画が終わり、食事へ行こうと敦が言う。近所のイタリア料理の店へ行くことになり、敦の車に二人乗り込んだ。
敦「あのー、こんなこと聞くのも本当に失礼ですが、舞さんですよね」
彩「舞です。見て分からないの...。分からないでしょうね、親も間違うくらいだから...。」
敦「ああ、良かった。なら、良いんです」
彩は、一度は自分が振った相手だが、こうして一緒に居ると、敦の雰囲気や接し方に何か感じるものがあり、少し後悔した。
だからこの日は、最後まで舞の振りをしたが…。
それが、2004年6月の出来事だった。