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2003_横浜のお嬢様_part2.../2. スウェーデンの育児休暇制度が目標

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登場人物(2003年時点)
幸田麗華 日仏食品ビジネスサポート部長 1976年(27歳)
幸田(会澤)耕一 セダ 課長         1970年(33歳)
幸田大介 輸入商事 会長                        1940年(63歳)
佐藤愛子 大介の妻                                      1966年(37歳)
江戸直樹 幸田商事 社長                            1950年(53歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長1968年(27歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長                   1963年(40歳)
山崎修  幸田商事 カスタマー課長            1960年(43歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(25歳)

スウェーデンの育児支援制度は、その出生率が上昇し1990年代に2.1を越えてから、少子化・人口減少への対策として世界中から注目された。

幸田商事も社長の大介と長女の麗華を中心に、女子社員の定着率を上げ、結婚・出産休職・退職からの復帰を容易にすることを重視した制度の設計・実施を進めた。女子社員の人材やキャリアを確保・育成した将来への人材投資は企業の根幹であり、将来への投資ともいえるこの育児支援制度を根幹として社内の福祉制度の充実を進めた。

その参考になったのが、スウェーデンの育児休暇制度だった。

主なポイントは6つ。

1. 出産にかかる費用が基本無料
2. 480日の育児休暇(うち390日は給与の約80%支給)
3. 子の高校卒業まで毎月1万4千円の子ども手当が支給
4. 年間最大120日の看護休暇&その間は給与の約80%が支給
5. 18歳未満の医療費は無料
6. 大学まで学費は無料

そしてスウェーデンの社会自体が、子育て・子供に対して寛容な社会だということである。
対して、日本はどうなのか、それを目指しているのだろうが、中途半端な施策で、女性や子供への配慮や支援が不十分であり、それ以外への予算割り当てが多い。

だから少子化や人口減少は当然の結果だとも言える。つまり目先の利益を重要視して、長期的な視野や配慮に欠けると言える。

それは国だけでなく、企業でも言える。

目先の利益を追求し、リストラばかりし、正社員を削減し、非正規雇用ばかり増やそうとしている。

長期的な視野などは持てないのである。

だから大介や麗華が考えたのは、会社が長期的に維持され、成長するためには、人材を大切にしていくこと、特に女性や子供を育てていく夫婦への支援である。

スウェーデンの6施策の内、会社が支援する組合を作り、該当する社員や家族の為に、休暇や給与の支給、医療費や教育費を支給・無利子で貸与する方策を取った。

これは、新卒の学生や中途採用の結果に、直ぐに現れた。

優秀な人材が集まり、さらに退職する者が激減した。

当然、会社組織への貢献度や忠誠心も向上した。それは会社の売り上げ・利益率の向上に直結した。

6施策が実施されて2年もすると、売り上げは1.8倍に、利益は2.3倍に増加した。当然、従業員数も1.5倍へと増えた。

そんな状況の中で、麗華が第2子を妊娠した。

江川社長「麗華さん、ご懐妊おめでとうございます。480日の育児休暇は、必ず取ってくださいね。率先垂範して、頂かないとね」

麗華「分かってます。耕一さんにも、育児休暇を取って貰いますから。多分、皆さん注目していると思いますよ。かす美さんと先日入社した大阪真由美さんの二人が、代行出来る様に今から一緒に業務をしていきます…」

江川「先日、セダに入った山口ゆかりさんは、耕一さんの下で順調ですか...」

麗華「ゆかりさんは、優秀な方だと聞いています。7月には、二人でイタリアへ出張する予定です」

江川「大丈夫ですか、二人で...」

麗華「ゆかりさんは、コケティッシュな性格なので、耕一さんのタイプじゃないから、多分大丈夫でしょう。とても明るい方ですから…」

江川「そうですか。なら、大丈夫でしょうね。逆にゆかりさんに、耕一さんの周辺管理を頼んだ方が良いかも、あはは…」

麗華「そうですね、あはは…」

耕一の女癖の悪さは、最近では知らない者はいないくらい有名になっている。

しかも、会長の愛娘の夫であるから、誘われそうになると、皆適当に遇うことが、定例化している幸田商事である。

ある意味、耕一の誘いには、だれも乗らないのが社内慣例化している。

耕一「山崎さん、最近女子の皆さんが何か変なんですが...」

山崎修も6施策が運用されてから入社した中間管理職で、最近耕一と仲が良く、二人で良く、伊勢佐木町のバーに飲みに行く様になっている。

山崎修「ふふふ、耕一さん、知らないんですか。社内で耕一さんからの誘いは、適当に遇うのが、社内ルール化しているようですよ...」

耕一「ええ、そうなんだ...。だから、誰も誘っても飲みにも来ないんだ…」

修「あはは、社内でナンパは無理ですよ...あはは」

うなだれる、耕一...。

それが、2002年5月の出来事だった。


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