見出し画像

1996_横浜のお嬢様part1.../4.ポルシェ911タイプ930

登場人物とあらすじ
 
会澤耕一 大手住宅会社 営業所 建築技術者 1970年(26歳)
渡邊雪絵 恋人、大手住宅会社 営業所 事務 1965年(31歳)
白川萌奈 大手住宅会社 東京支店 事務   1974年(21歳)
幸田麗華 輸入商事の跡取り娘 女子大生   1976年(20歳)

岸野友一 大手住宅会社 営業所 営業    1971年(25歳)
久野幸恵 婚約者、地方銀行 行員 窓口   1971年(25歳)
幸田大介 輸入商事 社長          1940年(56歳)
 志田大容  工務店社長             1955年(41歳)

会澤耕一は、大手住宅会社の建築技術者で、出先の営業所付きで現場施工管理を担当している。その営業所の同僚として、事務の渡邊雪江や営業の岸野友一がいる。耕一と雪江は、密かに交際する、その一方見合いの久野幸恵と婚約するが、一方的に破棄される。

しかし打算的な幸恵との唐突な別れから、暫くはそのショックを引きずった。

が、恋人の雪絵はそういう耕一の何かを感じたのだろう、電話を掛けてきた。

雪絵「最近、様子がおかしいけど、どうかしたの?」
耕一「いや、別に」
雪絵「そうなの、ホント?」
耕一「…」
雪絵「明日、何時もの店で会いましょ」
耕一「ああ」
 
翌日、何時ものレストランに行くと、既に雪絵は来ていた。
雪絵「何か食べる?」
耕一「ハンバーグとライス、とコーヒー」
雪絵「じゃー、あたしも同じの」
ウエイトレスを呼んでオーダーする。
雪絵「どうしたの?正直に言いなさい…」
耕一「…、どうせ言わさせるから、言うよ」
雪絵「なんなの?」
耕一「婚約を破棄された」
雪絵「破棄?」
耕一「そう、破棄」
雪絵「どうして?」
耕一「理由は色々と有るみたい」まさか人妻と付き合ったことが理由だとは、口が裂けても言えない。
雪絵「ふーん、そうなんだ。ショックね。」
耕一「..」
雪絵「でも、あたしにとっては..」
食事の後、いつものホテルへ行った。
そして、いつもの様に愛し合った。
 
翌月、いつも懇意にしている工務店の社長から電話があった。
志田大容「会澤さん、突然だけど、911売ろうと思っているんだけど、買う?」
耕一「社長のあのカレラ2?」
志田「そう、あのカレラ2、500で良いよ」
耕一「500か、良いですね。お金調達するから、少し時間貰えます。2週間くらい。良いですか…」
志田「ああ、いいよ。待ってるね。後で連絡頂戴…」
 
本当だったら、500万もするスポーツカーなんて、買わなかっただろうし、その金は結婚資金として貯金や財形で貯めていたものだった。

幸恵からの婚約破棄という、ショックからまだ回復出来ていない耕一は、なにか無性にそのカレラ2を欲しくなったのだ。

早速、財形の解約を支店の事務に連絡した。

白川萌奈「ええ、解約するんですか?」
耕一「うん、解約する」

萌奈は、短大卒で去年建築課の選任事務担当になっている。明るく可愛いので、技術系のアイドルでもある。

萌奈「どうするんですか?土地でも買うんですか?」
耕一「いや、車を買う」
萌奈「えっ、車ですか…」
耕一「うん、車…」
萌奈「会澤さんのお金だから、どう使おうと勝手なんですが、良いんですか…」
耕一「なんで、そんなに言うの…」
萌奈「先輩、今度支店に来ますよね…」
耕一「ああ、来週会議で行くよ…」
萌奈「その時に、呑みに連れて行ってください…」
耕一「ああ…」
 
翌週、支店で会議の後、萌奈の所へ行くと
萌奈「最近良いお店見つけたんで、どうですか?」と廊下へ連れ出されて、言われた。
耕一「ああ、良いよ…」
萌奈「これ」とお店のメモを渡された。
 
新宿3丁目の花園通りのバーに連れて行かれた。
萌奈と地下の店に入ると、大人びた店で、どう見ても若い女の子が来るような店には、見えない。
耕一「へー、よく見つけたね。良い店じゃん…」
萌奈「そうでしょ、パパから教えて貰ったの…」
耕一「パパって、どんなパパ?」
萌奈「せんぱーい、馬鹿なこと言って、本当のパパです。何呑みます?」
耕一「じゃー、スコッチ、オンザロックで…」
萌奈「じゃー、あたしはカクテルにしようかな…」
二人、それぞれ飲み物を頼む。
萌奈「せんぱーい、ちょっと聞いて良いですか?」
耕一「何かな?恐いな…」
萌奈「噂が立ってます。営業所の事務の渡邊さんと付き合っているって…」
耕一「ええ、そうなの。それは無いよ…」とシラを切る。
萌奈「そうなんですか…」
耕一「そうだよ、誰から聞いたの?」
萌奈「それは..。噂なんで…」
耕一「いるんだよ、そういう詰まらない噂を言う奴が…」
萌奈「そうですか、ところで車って何買うんですか?」
耕一「何だと思う?」
萌奈「当てて見ましょうか?当たったら、ドライブ連れて行ってくださいね」
耕一「はは、良いよ..」
萌奈「ヒント下さいね…」
耕一「ああ…」
萌奈「ドイツ車」
耕一「あっ、当たり」
萌奈「やったー、でスポーツカー?」
耕一「えっ、当たり…」
萌奈「じゃー、ポルシェ」
耕一「えええー、なんで分かるの?」
萌奈「ふふ、じゃー、ドライブ連れて行ってもらいますね。そのポルシェで、ふふ、楽しみ…」
耕一「なんで、分かったのかな?」
耕一は知らなかった、萌奈は志田社長から情報を仕入れていたことを。
 
で、その2週後、カレラ2の助手席に萌奈を乗せて、湘南へドライブに行くことになった。
 
それが、1998年3月の出来事だった。

いいなと思ったら応援しよう!