[恋愛小説]1992年のクロスロード.../22.チェンジ
登場人物(年齢は1998年時点)
福山雅弥 : 建築設計事務所 所長、39歳(1959)
福山由佳 : 同上 インテルデザイナー 31歳(1967)
愛田久美子 :設計スタッフ 住宅担当27歳(1971)
久保田結(ゆう):設計スタッフ住宅担当 23歳(1970)
松田瑞季 :設計スタッフ 住宅担当 25歳(1973)
川崎直子 : CADオペレーター 21歳
柴 浩一 :設計スタッフ特建担当 31歳
1998年9月に 吉瀬の事務所が完成した。
今日は引っ越しなので、全員作業着やジャージである。
由佳は、第2子の妊娠が先日分かり、今日は作業に参加していない。
現在、スタッフは、雅弥を入れ7人になっている。
この年、バブル崩壊があり、ターニングと言われる年である。
住宅需要もそれまでに比べて、減少した。多忙だった事務所のオーバーワークも今は落ち着いてきた。
少し、腰を据えて仕事をすべきだと思っている。今までが異常だったのだ。
引っ越しも済んで、引っ越しパーティーをしていた。
久美子が何か話があると、新しい所長室へ来た。
雅弥「如何したの?」
久美子「色々お世話なりました。退所のお願いに来ました。」
雅弥「えっ?」
久美子「来月一杯で、それまでに残務処理と引き継ぎはします。」
雅弥「…後で、La Luceで話聞きますから..。」
久美子「じゃー、後で。」
パーティーが終わり、雅弥が La Luceへ行くと、既に久美子の赤いプレリュードが駐車場にあった。
雅弥「如何したの?急に。」
久美子「そろそろ、潮時かなって。」
雅弥「…。」
久美子「だって、ハネムーン行って、楽しかったでしょ。」
雅弥「それは…。」
久美子「いいんです、これ以上、所長と同じ空気を吸ってたら、私多分、酸欠で死にます。」
雅弥「そんな..。」
身重の由佳は、久美子が退職する件は、事務担当から聞いた。
それを聞いて、ホッとした。同時に体から何か重しのような重圧が無くなり、体が軽くなったように感じた。
この三角関係が何時まで続くのか、深く考えると地獄なので、何時も気丈に振る舞っていたが、事務所へ行く回数は減ったし、行くときは久美子が現場へ行っている時を確認してから、行った。
何故、自分がそこまで気をつけなければいけないか、切れそうなときは何回も有った。でも、それも終わった。
久美子は、雅弥に退職を切り出すのに、一ヶ月掛かった。
ちょうど事務所の完成と引っ越しがあったので、それが辞めるタイミングだと思った。
雅弥達がハネムーンに行って、それで決心が付いた。
どうしたって、自分が雅弥のパートナーに成れるはずもなく、由佳が居なくなるわけでも無いことを、再確認したからだ。
なんで、由佳が先に雅弥に出会い、自分が後に出会ったのか、神様を恨んだ。
だが、それが運命だったんだと、思うと…諦めるしか無い、運命だと悟るのに、今まで掛かった。
以前、東京まで行って、抱いて貰ったが、その時は嬉しかったが、自分のマンションへ帰る時は、惨めだった。
だから、あれ以来、無理に押しかけるのは、止めた。
転職は、タイミング的には最悪だったが、ここに居て、段段自分が壊れるのを待つのも、最悪なので、知人の紹介で水戸の注文住宅会社へ行くことにした。
それしか無かった。
それが、1998年9月の出来事だった。
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