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2003_横浜のお嬢様part2.../前2編 第10話~19話


2003_横浜のお嬢様_part2...

登場人物(2004年時点)

幸田麗華 横浜市議、日仏食品ビジネスサポート部長 1976年(28歳)
幸田耕一 セダ 部長               1970年(34歳)
幸田大介 輸入商事 会長             1940年(64歳)
佐藤愛子 大介の妻                1966年(38歳)
江戸直樹 幸田商事 社長             1950年(54歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長   1968年(28歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長          1963年(41歳)
山崎修  幸田商事 カスタマー課長        1960年(44歳)
山口 ゆかり セダ 社員             1978年(26歳)
野島 庄司 イタリアレストランオーナー      1953年(51歳)

第1話から9話までのあらすじ

麗華と耕一は、幸田グループの「育児支援制度」などの社会福祉制度の充実を図る。それは女性の企業内での雇用・業務環境だけに留まらず、企業内の活性化・企業イメージを向上させていく。
麗華はそれを社会福祉事業としても発展させていくとする。
やがて政治家としてそれを社会全般に普及・向上させようと立候補する。
一方耕一はシステムSEで入社した山口ゆかりとも深い関係になっていくが、麗華に気付かれて..

10.軽井沢の火遊び

土曜の早朝、耕一はガレージからジャガーEタイプを出してきた。

今日は、軽井沢で1泊のゴルフと言うことになっている。

勿論それは、麗華や家族向けの理由で、実は軽井沢へ一緒に行くのは、例の美女、山口ゆかりである。

ゆかりの住む、青葉台のマンション前にクルマを着けると、直ぐにゆかりが出てきた。

助手席に乗り込んできた、いつもより化粧は薄いが、若さは十分でその美貌やスタイルを際立たせている。

ロングスカートにカーディガンを羽織っているが、それだけで、十分に魅力的である。

ゆかり「部長、奥さん大丈夫なんですか...」

耕一「ああ、前のハウスメーカーの友人とゴルフと言ってある」

ゆかり「奥さんって、凄い美人なんですって、大阪課長に聞きましたけど...」

耕一「ああ、美人だよ。それも飛び切りね…」

ゆかり「…信じられない、私にそんなこと言うなんて、私はどうなんですか…」と、むっとした表情で言う。

耕一「ああ、勿論、君も美人だし、飛び切り綺麗な美人だよ…」

ゆかり「私、奥さんって、会ったことが無いけど、私と奥さん、どっちが美人…」

耕一「難しいな…でも、ゆかりの方が、鼻の差で一番かな…」

ゆかり「鼻の差って、競馬じゃないんだから…失礼ね..」

耕一「それ位、二人とも美人だってことだよ…」

ゆかり「ふーーん…、あの言っておきますが、こんなことするのは、今回が初めてで最後ですからね..」

耕一は、黙っているが、それもそうだろうと思った。

こんなことが何回も出来る訳は無い、ゆかりの言う通り、最初で最後のアバンチュールであろう。

大体、麗華に一筆納めているのにも、関わらずこんな危ない恋愛をするなんて、自分でも馬鹿げていると思う。

だが、そんな自制心を打ち壊す程、ゆかりは魅力的で魅惑的な美女だった。

先日のホテルでの一夜も、それを確認したが、ある意味悪魔的な魅力がある。
傾城の美女とは、正にゆかりの様な女性を言うのだろうと思った。

だから別に、SEや会社勤めをしないでも、モデルやその美貌を活用すれば、十分自立できるだろう。

耕一「前から聞きたかったんだけど、どうしてうちの会社に入社したの...」

ゆかり「あの育児支援制度ですね。
あれほど手厚いサポートはスウェーデンにでも住まないとありませんからね...あれを整備した幸田商事は凄いと思います。
多分、これからも優秀な人材が大勢集まると思いますよ」

耕一「うむ、そうなることを目論んだけどね。
会長と麗華が並々ならない入れようだったね...多分、奥さんが亡くなった事が大きいんだろうね」

ゆかり「私は、彼らの思想の深さを感じますね、政治や社会が非正規雇用へ舵を切った、真逆へ向かうこと。

それは福祉社会というより福祉重視会社を目指したという。

組織は人という思想、優秀な人材がいなければ、優秀な企業へ成長しません。

だから幸田商事はこれから、急激に成長しますね。

耕一さんが、こうして私と火遊びが出来るのも、今だけかも知れませんね。だから明日までは、存分に羽目を外しましょうね…」

耕一は、幸田親子の思惑の深淵さと隣で和やかに微笑む美女の読みの深さに関心しながら、車線を信越道へ切った。

それが、2004年2月の出来事だった。

11.夫の育児休業

4月になると、育児支援制度の規定通りに、480日の育児休暇を済ませて、麗華が職場へ復帰してきた。

代わりに、「パパ・クオータ制」で耕一が来週から90日間の育児休暇へ入ることになっている。その間の業務は大阪真由美が代行することになっている。

江戸・麗華と耕一が社長室で話している。

麗華「1年3ヶ月も職場から離れると、慣れるまで暫く掛かるわね…」

江戸「麗華さんが不在の間に、入った新人も居るから、一通り社内を回ってください…」

麗華と耕一が二人で、順に社内を回って行く。

あちこちで麗華の復職を歓迎する声が起こる。

やがて6階のDM(デジタルマーケティング)部へ行くと、新人4名が待ち構えていた。

皆初めて見る麗華を興味津々で挨拶した。

ゆかりも麗華と挨拶をしているが、耕一は麗華の後ろで気が気でない。

麗華が次の部署へ行こうとする後ろで、ゆかりが耕一に視線を向け、意味ありげな表情を微かにした。

一通り部署を回り終えて、二人が役員室へ戻ると麗華が聞いた。

麗華「DMの部署にいた山口チーフは、美人ね...」

耕一「...そう、まー綺麗かな...」

麗華「そういう意味じゃなくて、ああいう娘って、こーちゃんの好みよね...」

耕一「採用したのは、役員会議だし、自分じゃないよ...」

麗華「そうりゃ、そうだけど...」

耕一は、内心ヒヤヒヤしていた。

なんで、一目で耕一との関係に感づくのか...自分の妻ながら...恐ろしいと感じた。

来週から、耕一は育児休暇に入るので、大阪真由美と引き継ぎの打ち合わせに入ったが、さっきの麗華の言葉が気になった。

少し囮の仕込みをしておいた方が、無難だろうと..。

耕一「大阪さん、DMの担当者に、新規商品の説明をしてくるから…」と言い、6階へ出向いた。

耕一「山口さん、居る...」とスタッフに声を掛けて、打ち合わせ室へ向かう。すぐにゆかりも部屋へ入る。

ゆかり「どうしたんですか...麗華さん、やっぱり話通りの美人でしたね...」

耕一「うん...彼女は勘が良いので、あの事はくれぐれも...鎌を掛けるのが、得意なんだよ..」それで何度も、窮地に追い込まれたとは、言えなかった…。

ゆかり「分かりました。暫くは会えませんね…」

耕一「ところが、来週から僕は育児休暇に入るので、また連絡するよ…」

ゆかり「携帯やメールは無理ね…」

耕一「プリペイド携帯を買うよ、新しい携番は後で連絡するよ…」

ゆかり「困った人ね...」と、半ばあきれ顔でため息をつく。

翌週の昼休み、ゆかりの携帯に見知らぬ携番から着信があった。それで、耕一からだと気が付き、応答した。

ゆかり「もしもし、誰かしら...」

耕一「これ、新しい携番だから、登録してね…」

ゆかり「育児休業で、恋人に電話していて良いんですか…」

耕一「いいんじゃない、恋人って認めてくれたんだ...嬉しいね」

ゆかり「どこから電話してるんですか…」

耕一「家のそばの公園...」

ゆかり「もしかして、港の見える公園ですか…」

耕一「そうそう...」

ゆかり「お子さん達は...」

耕一「居るよ、麗奈と耕介は向こうで遊んでいるし、耕一はベビーカーで寝ている...」

ゆかり「いいですね、お子さんが沢山いらっしゃって...」

耕一「ホント、大変だよ」

ゆかり「それじゃー」

耕一「あの..」電話はそこで切れた…呆然とする耕一。

色々とこれから大変だと、痛感した。

それが、2004年4月の出来事だった。

12.妻の第六感

麗華は、1年3ヶ月のブランクを埋めるのに苦労していた。

特にゆかりがチーフを務めるDM部門は、これからの一般販売に大きな変化をもたらすことは明らかであり、そこへ全力を注力する必要があった。

だからDM部門とは必然的に連携を取ることになった。

麗華「山口さん、どう今の戦力でやっていける...」

ゆかり「ITの進展はスピードが命なので、是非スタッフの拡充をお願いします...」

麗華「分かりました。役員会議へ提出する計画書の作成を進めてください」

結果的に、この麗華の判断は正しく、会社全体の拡充もこれがあったからだと、後日皆が認めた。

この功績で、ゆかりは課長へ抜擢され、麗華は役員付部長になった。

ある意味。耕一はゆかり自身に眼がくらみ、本質を見逃したと言える。

麗華「山口さん、一度EU支店へ研修に行ってみない。1ヶ月程度ね。スタッフの拡充も済んだ、今なら行けるんじゃないかしら、今後の内の業務をより深く理解するには、良い機会だと思うの。」

ゆかり「そうですか、分かりました...」唐突に麗華から出たEUの研修について、耕一に相談した。

ゆかり「唐突に言われたの、何かあるのかしら...何か、思い当たること、ある...」
耕一「いや、特に無いけど。休暇が終わり来週から、出社するけど、そんな話は初めて聞いたよ、すこし不自然だね、少し情報収集するよ」

耕一は江戸社長や山崎課長に探りを入れたが、特に気になる話は無かった。麗華がゆかりに説明した通りの内容で、処理されていた。

麗華は、2月に耕一が一泊で軽井沢へゴルフに行くと言った時から、耕一の素行に疑問を持ち始めた。

普段の生活も表面上は何も変化は無いように見えたが、どことなく視線が彷徨い、しぐさに落ち着きが無いのだ。

そして、確信したのはクルマのキーだった。

幸田家では8台もクラシックカーを保管しているので、それらのキーは家族室の陰になっている壁に車番順に掛けている。

その最後に耕一が持参したポルシェ911のキーが掛けてあるはずなのに、時々キーが無いのだ、クルマはあるのにだ。

耕一が出勤している時に、911のグローブボックスを開けてみた。

そこには、見知らぬ携帯があった。

ロックが掛かっており、着歴を見ることは出来なかったが、明らかに、耕一が内緒で購入し、誰かとこれで連絡をしていることが、確認できた。

これを突きつけて、白状しなさいと、詰め寄ろうかと思ったが、止めた。

いずれ、耕一は何時もの様に、ボロを出すだろうから、それまで泳がせることにした。

4月になり、育児休業明けに、社内を復帰の挨拶で一巡したときに、新しい部署に言った時、山口ゆかりという新人のチーフがいた。

一目見たとき、この娘だという直感があった。

穏やかな笑顔が魅力的な美人だった。

少し陰があるその雰囲気は以前耕一の恋人だった娘に似ている。

つまり耕一の好みのタイプなのだ。

社内の女子社員の間では、耕一が会長の婿で女癖が悪く、誰も手を出さない、触らないことが暗黙の了解になっている。

そうなると、それを知らない新人しかいない。

だから麗華は、ゆかりと一度個別に会うことにした。

何か手掛かりが得られるかもしれない。

麗華「山口さん、何故呼ばれたのか、心配でしょうから、最初に言うわね」
ゆかりは、どきどきしていた。

耕一との件がバレて呼ばれたのかと思ったからだ、だが麗華の口から出た話は、ゆかりの想像外の無いようだった。

麗華「来て貰ったのは、貴方の面接に私は居なかったので、改めて伝えたい事が有るからなの。入社して半年になるかしら」

ゆかり「はい、半年になります」

麗華「そう、じゃー、少しずつ、会社の事が分かって来た頃かな」

ゆかり「いえ、まだまだ分からないことも多くて...」

麗華「そうね、これから話すことは、秘密でも何でも無いのだけれど…」と聞かされた内容は驚くべきものだった。

それが、2004年5月の出来事だった。

13.女性の為に

麗華「そうね、これから話すことは、秘密でも何でも無いのだけれど…」と聞かされた内容は驚くべきものだった。

麗華「山口さん、これからうちの会社が、成長・拡大するためには、何が重要だと思う...」

ゆかり「ITですか...」

麗華「そうね、IT...それもあるわ、もう一つは、女性が活躍できる環境よ。
今まで女性は、不当に評価され、育児や家事の負担で、出世・収入が男性に比べ、不当に不利だった。
だから才能や能力があるにも関わらず、社会的評価や収入が低かった。
そんなことでは、会社は成長しないし、社会も低迷するのは目に見えている。
なのに、そんな問題に真剣に取り組まないで、人材不足だとか言っている。

おかしいと思わない...」

ゆかり「確かにそうですね」

麗華「会長・社長とも相談して、女性社員が安心して仕事に取り組める支援を始めたの。
プライベートが安定していない人が、ちゃんとした仕事が出来るかしら...出来ないわよね。
スウェーデンが育児支援制度を始めて、出生率は1.7に回復した。
日本は1.3位。
しかも子供の教育費の出費が大きくて、子供の数も増やせない。
そんな社会や会社で安心して家庭や育児が出来る訳が無い。
政治が悪いのもそうだし、そういう事に配慮し、出資しない会社も先は見えていると思うの」

ゆかり「はい、その通りだと思います」

麗華「そして、女性社員の比率も今35%だけど、50%以上にしたいの。
内の強みは、食料品や医薬関係だからね、女性向きだしね。
だから、山口さんには、うちでずーと安心して仕事が出来るようにサポートしていくわ。
皆と同じようにね。
女性役員も50%を目指すわ、期待しているわよ。」

ゆかり「分かりました」

麗華「ところで営業課長が私の夫なのは、知ってる…」

ゆかり「はい」とうとう来たと思った。これが耕一が言っていた鎌掛けか...。

麗華「あの人は、いい人で良い夫なんだけど、病気があるのよ」

ゆかり「病気...」

麗華「そう、病気。美人を見ると、無意識にナンパするの...病気でしょ...」

ゆかり「あはは...確かに、病気ですね...あはは」

麗華「まー、病気か癖ね。もしかしたら悪い癖かな。病気は治るけど、癖は直らないから、癖かな...」

ゆかり「悪い癖ですか...直らないんですか...」

麗華「色々と試したんだけどね、未だにね。もし、貴方を口説きそうになったら、私に相談してね。お仕置きするから、よろしくね」

部長にそう言われると「はい」としか、言えなかった。

その晩、耕一から着信があったが、シカトした。

あそこまで、麗華に言われると、もう耕一には会えないし、相手も出来なかった。

何より麗華の耕一に対する愛情の深さと強さを感じた。

あれに抗うのは、無謀だし、無益だった。

耕一は、麗華が昼にゆかりと個人面談をしていたと、かす美から聞いていたので、夜電話したが、彼女は出なかった。

多分、麗華がゆかりに釘を刺したのだろう。それも特別大きな釘を。

ゆかりとの恋が終わったのを悟った。

それが、2004年の5月の出来事だった。

14.出世街道

麗華は、ゆかりとの個別面談後に、耕一とゆかりの関係が切れたのを察知した。
そして、次の段階へ入った。

翌週、社長の江戸にゆかりのEUのユーロ支店への勤務を打診した。

麗華「山口さんを将来の幹部候補として、育てたいので、1年間EU支店の勤務へ行かせたい」と、江戸も女性幹部候補を模索していたので、了承した。

麗華「ゆかりさん、EU支店で1年程実績を積んでくれるかしら。帰国後は、役付にするからね」

ゆかり「分かりました。行きます」ゆかりは麗華に賭けた。

先日の話から、役員登用も見越したコースへ乗るのも魅力的だと思われたし、そんな会社に貢献し貸しをつくるのも悪くないと思われた。

耕一はゆかりのEU支店への転勤を聞いて、麗華の策略だと直ぐに察した。

一度、夫と関係を持った女性社員をそのままにして置くほど、麗華は甘くは無い。

1年間と聞いたが、それも信じがたかった。

向こうで彼女が、心変わりをするのを待っているのかもしれない。

改めて麗華の恐ろしさを感じた。

その夜、寝室で子供達を寝かしつけてきた麗華がベットに入って来た。

耕一「山口ゆかりさんが、EU支店に行くんだって...」

麗華「あら、もう聞いたの、情報早いわね...」

耕一「本当に、1年間なのかい...」

麗華「そうよ、1年したら、戻すわ。でも彼女次第ね、もしかしたらもっと居たいと言うかもしれないしね...」

耕一「そうか...」

麗華「それより、久しぶりに、ねっ...」

麗華のリクエストを察した耕一は、シーツの中に頭を入れて、麗華の花弁を目指した。

麗華を生まれたままの姿にすると、他の女で試した新しいテクニックを使い出した、今までそんなテクを使われたことが、無かったので、驚いたが、どんなものか楽しみながら、湧き上がってくる快感の渦に身を任せていた...。

今回の敵は、思ったよりも簡単に攻略できたので、一安心だ。

毎回毎回、次から次へと遊び相手を作ってくる夫に呆れながらも、彼女達をどう迎撃するのか、楽しみにしている自分もいる。

今回は、社内の彼女だったので、楽だったが...その度に、新しいベットテクニックを身につけてくる耕一にも楽しみを覚える自分も変だなと思いつつ....

麗華「あっ、あっ、そこ、そこ、あああ...」麗華の快楽の夜は長い…

それが、2004年6月の出来事だった。

15.ユーロ支店

ゆかりはパリへ向かう機上の人だった。

ユーロ支店勤務を麗華から内示されて、2ヶ月後の7月に転勤することにした。

羽田空港の搭乗口には、麗華と耕一が見送りに来ていた。

まるでゆかりが出国するのを確認するかのように、と感じたのはゆかりの思い過ごしか。

単に麗華は、将来のビジネスパートナーの旅立ちを見届けたかっただけなのだが...。

パリへ到着して、出口に支店のジュリアン・セベールが出迎えに来ていた。

既に市内にアパルトマンを手配してあり、そこへ案内してくれた。

ジュリアンとは英語と日本語で会話した。

彼は以前日本支社で2年間勤務していたので、日本語は流暢に使えた。

翌週、スペインからルシアがゆかりを訪ねてきた。どうも耕一がルシアに連絡したようだ。

ルシア「ゆかり、パリは慣れた...」

ゆかり「そんなに、直ぐには慣れないけど、パリジェンヌに成れそうよ…」

ルシア「明日は週末だから、パリ観光しましょ、案内するわ...」

ゆかり「嬉しい、ありがとう」

週末、ルシアの案内でパリの名所を幾つも回ったゆかり。

夕方、レストランで飲み始めた。

ルシア「耕一は元気にしている...」

ゆかり「ええ、元気過ぎて、大変よ。子供も3人目が生まれてね」

ルシア「えっ、三人もいたの...知らなかった...」

ゆかり「麗華さんの尻に敷かれているわよ...彼も大変よ...」

ルシア「ああ、彼女ね...可愛い顔して、怖い女よね...」

ゆかり「知ってるの...」

ルシア「耕一が独身の頃から、知ってるわ。彼女に耕一を取られたの...」

ゆかり「ええ、そうなの。私もよ...手を引けと…」

ルシア「あはは、じゃー私達、戦友かな...しかも、オーナー家の婿だからね、敵わないよね...」

ゆかり「さっ、今晩は飲むわよ...このワイン、美味しいね、あれっ、うちで扱っている奴じゃない...」

二人で、痛飲した。なにせ耕一と麗華の悪口を肴に飲むのだから、一晩中でも飲める。

ゆかりのアパルトマンに二人で帰って来たのは、深夜だった。

二人とも泥酔していた。だから二人とも一糸纏わずベットに倒れ込むと、お互いの体を求め合った。

ルシアもゆかりも執拗な愛撫をお互いに加えたから、酔いもあり、何遍も行くことになった。

夜が白み始める頃、ようやく眠りについた。

7月下旬からパリ支店は順次夏期バケーションに入り、ゆかりはルシアに誘われて、ギリシャのサントリニ島(ティラ)で2週間のバケーションを楽しんだ。

マンションの一部屋を二人で借りたので、格安だったし、プールサイドでゆっくりしたり、飽きると歩いてビーチまで行った。

夜はギリシャ料理とワインを楽しみ、語りそして深夜まで、愛し合った。

ゆかり「ねー、どうして耕一が好きになったの…」

ルシア「初めてロンドンで会った時から、特別な人だと...でも色々とあり、諦めた時もあったけど、たまに会うだけでも良いかと...私、変よね...」

ゆかり「何かあるよね、あの人、女を惑わせる魔力みたいな...不思議な男よね...分かるわ...私も別れるとき、とても辛かった...」と涙ぐんできた。

ルシアが抱きしめて、涙に濡れた唇を合わせて、ディープなキスをし始めると、後はもう止まらなくなった。

それが、2004年7月の出来事だった。

16.お嬢様の視察

秋になり、麗華が真由美とパリ支店へ現地協力会社との打ち合わせと視察を名目にパリへ来た。

空港には、ゆかりとジュリアンが迎えに来ていた。

3人を乗せたシトロエンC5は滑らかに高速を降り、オデオン座近くの支店へ着いた。

支店のスタッフは160名程おり、支店長や幹部との会議は、翌日行われ、今後の販売戦略の意見交換が行われた。

主力をオーガニック食品とワインへ置くこと、ITでのデジタルマーケティングの推進が確認された。

翌日からは、ワイン産地とオーガニックファームの現地視察になった。

ゆかりとジュリアンが同行した。

今回は南部のコート・デュ・ローヌ地方、プロヴァンス地方、ラングドック・ルーション地方の3地方に絞られた。

特にラングドック・ルーション地方は地中海気候のためブドウ生産に恵まれ、リーズナブルで高品質なワイン産地である。

その中でもジェラール・ベルトランは有名で、バイオダイナミック農法を用いたハイクオリティ、ハイコストパフォーマンスで、今回の視察のメインである。

実はルシアが現在此処に、研修で来ているので、彼女に案内してもらう事になっている。

但し、彼女が耕一の元恋人だったことは、麗華は百も承知している。

にも関わらず、会うとはどういうことなのか、周囲は理解出来なかった。

翌日、麗華達がファームへ着くと、ジュラール達が出迎えた。

ジュラール「ようこそ、幸田さん、お会いできて嬉しいです」

麗華「今日は、有意義なお話が出来ると期待しています」

と挨拶していると、後ろにルシアがいるのに気が付く麗華。

麗華「ルシア、久しぶり、元気だった」と気さくに声を掛ける。

ルシア「ええ、麗華さんもお元気そうで、3人目のお子さんの誕生おめでとう」

麗華「もう1歳と10ヶ月よ、耕一も貴方に会いたがっていたわよ」と早速鎌を掛ける。

ルシア「えっ、そうですか、宜しくお伝えください」とこちらも狸である。

ゆかりとジュリアンは、二人が旧知なのは、理解したが、過去の経緯は知らないので、二人は友人だと思っていた。

実際は、恋敵なのだが...。

麗華はこの3つのワイン産地を見て回り、彼らとの連携を強める必要を感じた、競合他社が入り込んでいるからだ。

早速、ゆかりとジュリアンに年間契約だけでなく、将来的な戦略も立てるように指示した。

帰国する前日の晩、4人で食事をした。話は、仕事からフランス人の性格まで多岐に渡った。

麗華「彼らも、バイオダイナミック農法を取り入れたり、コスパ戦略も十分対応しているし、十分他国と渡り合えるわね」

ジュリアン「競合他社も食い込んできているので、早急に契約していきますね」

ゆかり「店頭販売と同じレベルでデジタルマーケティングを提供する必要がありますね」

麗華「大手飲料メーカーが入り込む前に、体制を整備するわ。後数年もすると、彼らが来るわ、その前にね」

ゆかり、ジュリアン「分かりました」

麗華「仕事の話はその位で、ルシアは、日本に来ないの」

ルシア「行きたいですが、忙しくて...」とゆかりの顔を見る。

麗華「残念ね、耕一も寂しがるわ...」と心にも無いことを言うが、ルシアとゆかりの微妙な関係に、勘づく。

2004年10月の出来事だった。

17.ワイン専門店の展開

ユーロ視察から帰国後、麗華は、江戸社長にワイン産地とその販売店の展開を企画提案した。

それは役員会議で慎重に検討され、ワイン専門店企画として耕一が専任し、指揮することになった。

建設業出身なのも考慮された。

そしてKOTECHとして店舗展開を早急に進めることになった。

生産者からのネットワークは広く構築していたので、販売チャンネルと新規サービスの提供を目指した。

江戸「耕一さん、ワイン専門店の展開の専任として、よろしくお願いします」

耕一「ご期待に添えるように、全力で頑張ります」

耕一は、張り切った、今まで麗華の後ろで仕事をしていると、周囲から見られていたので、今回は専任として自分で切り盛りできる。

麗華「今回は耕一さんの独壇場ね。皆期待してます」

耕一「ああ、婿というより、一責任者として頑張るよ。Dハウスの飯島取締役にお願いしている。古巣から何人か迎えたい。転職組と委託か派遣組になるけど、良いかな」

江戸「スタッフの件は、耕一さんの一存で結構ですが、公募は始めてます」

麗華「それなら安心ね、お願いね」

耕一が前職のハウスメーカーで親しくしていた常務に頼み、数名の技術者と営業担当の派遣して貰うことになった。転職を希望する者がいれば、そうさせた。

だがその転職リストを見て、麗華は驚いた。

岸野友一と白川萌奈の名があったからだ。岸野はともかく、養子の麗奈の生母の白川萌奈がいたからだ。

麗華「あの、こんなこと言いたく無いけど、萌奈さんも入れる必要があるの...」

耕一「相談しようと、思っていたんだけど、彼女は優秀だし、戦力になるよ。しかも麗奈の親だし、内で働いて貰いたいと思うんだけど。問題あるかな...」

麗華「一度、話をしたいの、二人きりで...」

麗華が心配するのも当然だ。耕一の元恋人で、長女 麗奈の母だから、焼け木杭に火がつくの諺もあるし..。

翌週、麗華は会社の面接の前に、萌奈と面談をした。

麗華「お久しぶりです。今日来ていただいたのは、確認したいことがあるので…」

萌奈「今回は色々とありがとうございます。麗奈は元気ですか」

麗華「最近、お見えにならないので、寂しがっているわ。それで確認したい点はひとつ。撚りを戻すなんてことは、無いでしょうね」

萌奈「それは無いわ。実は岸野さんと婚約していて、来春結婚するの」

麗華「あら、おめでとう。それを聞いて安心したわ。今度遊びに来てね。麗奈も元気にしているし」

耕一は新設された、建設部の部長として、岸野・萌奈をチームリーダーとして、企画・設計・管理運営を統括した。

店舗は全国展開を目標として、関東・関西の展開から開始した。

都内で20店舗、神奈川7店舗、千葉・埼玉に5店舗、各県に1店舗、関西では大阪に5店舗、京都・兵庫に2店舗を最初の目標にした。

これらも展開は、営業部門も交えて、慎重に検討された。特に都心は、トップクラスの富裕層向けに、場所の選定をした。

店舗名称も「ワインショップ・コウテク」とネーミングされた。

約10年間で、全国に50店舗を目標にした。

萌奈達を採用して、翌週萌奈と岸野が山の手通りの家に遊びに来た。

勿論、萌奈は麗奈に会うことが目的なのだが。

麗華「いらっしゃい、岸野さんも」

萌奈「お言葉に甘えてお邪魔しました」

麗華「麗奈は向こうの部屋にいます、呼びますね」

麗奈がやって来るが、萌奈を見て駆け寄ってくる。

麗奈「おばちゃん、久しぶりね」

麗奈は萌奈が産みの母だとは、知らない。萌奈と麗奈は別の部屋へ行った。

麗華と耕一、岸野が残る。

耕一「婚約したんだって、おめでとう」

岸野「ああ、ありがとう。なんとなくこうなったが…」

耕一「岸野がぐずぐずしたんじゃないの」

岸野「そうだね、いろいろあったから、これからはよろしくお願いします」

耕一「何を水くさい。同期じゃ無いか。これからが、正念場なので頼むよ」

2004年12月の出来事だった。

18.ライバル店との確執...

ワイン専門店の展開を本格的に始めた幸田食品は、ワインショップを専門に担当する子会社を設立した。

その社長職に麗華が就き、耕一は幸田商事の施設課から店舗の展開を企画し始めた。

そのスタッフも徐々に拡充していた、その矢先に問題が勃発した。

表参道ヒルズに第1店舗をテナント店として改装工事に入った時だった。

同じビルにライバルワイン専門店のアイテカが開店したのだ。

偵察がてら麗華と耕一が挨拶に行った。

麗華「最強のライバル登場ね。どんなもんかしら...」
耕一「侮れない相手だね...」

客で賑わうアイテカは、店構えは地味だが、品揃えは洗練されている。

軽食、試飲が出来るカウンター、レンタルワインセラーもある。

麗華「開店おめでとうございます。初めまして、コウテクの幸田です」
神田満「こちらこそよろしくお願いします。神田です」

吉田香織「課長の吉田です。よろしくお願いします」

耕一「幸田商事の幸田耕一です、よろしくお願いします」

暫く、当たり障りの無い会話をして、麗華達は辞した。

神田「早速、偵察か。あの娘、幸田商事のお嬢様だな…」

香織「あの有名な…ワインショップの全国展開するという…男性は、旦那ですか...」

神田「ライバル店だから、眼を離さないように...」

香織「分かりました」

香織は、神田が言うような、ライバル店の二人と言うより、何処にでもいる夫婦の様にしか見えなかった。

あの二人の穏やかな関係が何か好ましいように思えた。

それに引き換え日頃の神田の周りへの姿勢は、威圧的でかつ暴言が多く、それが原因で辞めていった社員も多く、香織の前任者もそんな犠牲者だった。

表参道ヒルズでは、アイテカに先を越されたが、六本木ヒルズや丸の内ビルは、先んじてオープンにした。

幸田商事のお膝元には、以前から大日本大通りと伊勢佐木町にあったが、みなとみらいにもオープンした。

その当日、店舗に麗華と耕一がいると、神田と吉田香織の二人が来店した。
当然、偵察を兼ねて来たのだろう。

麗華「あら、神田さん、吉田さん、いらっしゃいませ」

神田「こんにちは。最近は後塵を拝するケースが多くて...」

耕一「まー、早ければ良いと言うわけでもないので...」

香織は、どこか精彩が無い。麗華、声を掛けた。

麗華「吉田さん、どう調子は、元気...」

香織「ええ、まー...」

神田「関西も開店しだしましたね...」

耕一「ええ、関西は向こうに任せてますけど...」

神田「幸田さんが、担当していないんだ...」

神田と吉田香織が顔を見合わせる。

香織「実は名古屋栄のデパートで少しトラブルが...」

麗華と耕一が話を聞くと、栄のデパートで出店について、幸田商事とアイテカで揉めたらしい。
最終的には幸田商事がそこは譲ったらしいが…。

香織「毎回揉めるのも大変なので、一度相談させてください。一度、打ち合わせをしたいんですが...」
耕一「ああ、良いですよ、来週如何ですか...」

これが、2005年4月の出来事だった。

19.ライバル店との協定

関西圏のワイン専門店の開店でライバル店アイテカとトラブルがあり、無用な諍いを避ける為に、幸田商事とアイテカで協定を結ぶことになり、今日はその3回目の打ち合わせになる。

吉田香織「こんにちは。今日は私だけですが、よろしくお願いします…」

耕一「こちらも、私だけです。書面の確認だけなので、いいんじゃないですか…」

二人で、最終の詰めと確認をした。

耕一「これで、良さそうですね。関西の担当者にも随時伝えてありますので、これでいいでしょ。どうですか、ランチでも…」

香織「はい...」

二人で、そばのポセイドンでランチをした。

野島レストランオーナー「いらっしゃい、今日のランチのメインは、魚は帆立貝柱のオーブン焼き、肉は牛フィレのポワレですが…」

耕一「ここは、魚が美味しいの…」

香織「じゃ、それで…」

耕一「帆立貝2つ….最近走りに行けなくて、すいませんね…」

野島「来月、走行会が鈴鹿であるんですが、どうですか...」

耕一「来月か、日程を調整しますので、後で連絡しますね…」

それを聞いて、野島は頷いて、キッチンへ戻っていった。

香織「お友達なんですか...」

耕一「ええ、悪友ですね...何時も助けられてます….あはは」

香織「成る程、アリバイ作りとか...」

耕一「ご名答...あはは」

香織「幸田さんの会社って、明るいというか、皆さん活き活きしてますよね...」

耕一「そうですか、普通ですけど...」

香織「なんか、羨ましい...」

耕一「そうなんだ...色んな人がいますからね...」

香織「コウテクの社長さんって、耕一さんの奥さんなんですか...」

耕一「ええ、そうですよ。怖いですよ…」

香織「怖い...職場で...私生活で...」

耕一「勿論、私生活ですよ...職場で怒ったことなんて見たことないな...まー、大体僕が悪いことして、怒られるんですけどね...」

香織「あはは、浮気して...」

耕一「はは、それは企業秘密ですね…」

香織「あんなに美人なのに、浮気するなんて、信じられない...」

耕一「美人は、関係ないな...女性で一番大切なものって、何だと思います...」

香織「何でしょ...私、独身だから、分かりません...」

耕一「あ、メインが来たので、食べましょうか...」

二人、料理を食べ始める。

香織「さっきの答えは、相手への思いですか...」

耕一「そうですよ。相手への気持ちですね」

香織「だから、浮気するんですか...」

耕一「まー、それは置いといて。内の会社には、育児支援制度がありましてね。好評なんですよ。これは、何処へ出ても自慢できます…」

香織「ええ、聞いたこと有ります。良いですよね。羨ましいです…」

耕一「あれも、ベースは相手への思いやりなんですよ。仕事や会社って、得てして男社会で、女性や子供への配慮は希薄ですよね。そこから変えようと言うのが、内のポリシーなんですよ..」

香織「それじゃ、パワハラやセクハラなんて、無いんですね…」

耕一「ありませんね。有ったら、直ぐに調査対象で、改善されますね。ペナルティーもありますが...」

香織「羨ましい...」

耕一「内の会社は良いですよね。そんな心配なく、仕事や私生活が充実してますよ。誰に聞いて貰っても良い...」

香織「ここだけの話ですが、内ではそこに問題が...」

耕一「そうだと思ってました...」

香織「週末、デートして貰いません…」

耕一「...デート...じゃー、山の手通りで良いですか...」

香織「山の手通り?...何があるんですか...」

耕一「自宅です...」

香織「...自宅ってじゃー、奥さんも...」

耕一「そうなんです、最近厳しくて...デートは、だから自宅ということに、なっているんです...」

香織「あはは、別に良いですけど...むしろ、その方が話しが早いかも...」

それが、2004年5月の出来事だった。


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