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2003_横浜のお嬢様_part2.../13.女性の為に

登場人物(2004年時点)
幸田麗華 日仏食品ビジネスサポート部長 1976年(28歳)
幸田(会澤)耕一 セダ 部長        1970年(34歳)
幸田大介 輸入商事 会長        1940年(64歳)
佐藤愛子 大介の妻           1966年(38歳)
江戸直樹 幸田商事 社長        1950年(54歳)
江戸(有村)かす美 日仏食品ビジネスサポート課長1968年(28歳)
大阪真由美 幸田商事 輸入課長     1963年(41歳)
山崎修  幸田商事 カスタマー課長   1960年(44歳)
山口 ゆかり  幸田商事 DM部門    1978年(26歳)
野島 庄司 イタリアレストランオーナー 1953年(51歳)


麗華「そうね、これから話すことは、秘密でも何でも無いのだけれど…」と聞かされた内容は驚くべきものだった。

麗華「山口さん、これからうちの会社が、成長・拡大するためには、何が重要だと思う...」

ゆかり「ITですか...」

麗華「そうね、IT...それもあるわ、もう一つは、女性が活躍できる環境よ。今まで女性は、不当に評価され、育児や家事の負担で、出世・収入が男性に比べ、不当に不利だった。だから才能や能力があるにも関わらず、社会的評価や収入が低かった。そんなことでは、会社は成長しないし、社会も低迷するのは目に見えている。なのに、そんな問題に真剣に取り組まないで、人材不足だとか言っている。おかしいと思わない...」

ゆかり「確かにそうですね」

麗華「会長・社長とも相談して、女性社員が安心して仕事に取り組める支援を始めたの。プライベートが安定していない人が、ちゃんとした仕事が出来るかしら...出来ないわよね。スウェーデンが育児支援制度を始めて、出生率は1.7に回復した。日本は1.3位。しかも子供の教育費の出費が大きくて、子供の数も増やせない。そんな社会や会社で安心して家庭や育児が出来る訳が無い。政治が悪いのもそうだし、そういう事に配慮し、出資しない会社も先は見えていると思うの」

ゆかり「はい、その通りだと思います」

麗華「そして、女性社員の比率も今35%だけど、50%以上にしたいの。内の強みは、食料品や医薬関係だからね、女性向きだしね。だから、山口さんには、うちでずーと安心して仕事が出来るようにサポートしていくわ。皆と同じようにね。女性役員も50%を目指すわ、期待しているわよ。」

ゆかり「分かりました」

麗華「ところで営業課長が私の夫なのは、知ってる…」

ゆかり「はい」とうとう来たと思った。これが耕一が言っていた鎌掛けか...。

麗華「あの人は、いい人で良い夫なんだけど、病気があるのよ」

ゆかり「病気...」

麗華「そう、病気。美人を見ると、無意識にナンパするの...病気でしょ...」

ゆかり「あはは...確かに、病気ですね...あはは」

麗華「まー、病気か癖ね。もしかしたら悪い癖かな。病気は治るけど、癖は直らないから、癖かな...」

ゆかり「悪い癖ですか...直らないんですか...」

麗華「色々と試したんだけどね、未だにね。もし、貴方を口説きそうになったら、私に相談してね。お仕置きするから、よろしくね」

部長にそう言われると「はい」としか、言えなかった。

その晩、耕一から着信があったが、シカトした。
あそこまで、麗華に言われると、もう耕一には会えないし、相手も出来なかった。
何より麗華の耕一に対する愛情の深さと強さを感じた。
あれに抗うのは、無謀だし、無益だった。

耕一は、麗華が昼にゆかりと個人面談をしていたと、かす美から聞いていたので、夜電話したが、彼女は出なかった。
多分、麗華がゆかりに釘を刺したのだろう。それも特別大きな釘を。
ゆかりとの恋が終わったのを悟った。

それが、2004年の5月の出来事だった。

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